退職金平均額、20年で1,000万減少 退職金が減り続ける理由とは?
(画像=beeboys/stock.adobe.com)

退職金がどんどん減っている。管理・事務・技術職に就く大卒以上の定年退職者の場合、この約20年で1,000万円以上も平均給付額が落ち込んでいる。なぜ、退職金の給付額はここまで減少したのか。厚生労働省の調査結果を紐解きつつ、考えてみよう。

退職金の現在の平均額は?

厚生労働省は毎年「就労条件総合調査」(2009年以前は「賃金労働時間制度等総合調査」)を実施・公表しており、この調査において約5年ごとに退職金の支給実態について調べている。

厚生労働省のウェブサイトから、1997年、2003年、2008年、2013年、2018年の調査結果が確認できるので、早速その推移を紹介していこう。紹介する金額は、「大卒以上」「管理・事務・技術職」「定年退職」「勤続20年以上」「45歳以上」の条件を満たす退職者に対する退職金の平均支給額だ。

<1997年~2018年にかけての退職金の金額の推移>

退職金平均額、20年で1,000万減少 退職金が減り続ける理由とは?
出典:厚生労働省の「就労条件総合調査」並びに「賃金労働時間制度等総合調査」

先ほどの条件に当てはまる人の退職金の平均金額を見ると、1997年は2,871万円だったが、2018年には1,788万円まで減っている。その差は1,083万円だ。「このままいけばいずれ1,000万円も切ってしまうのでは…」と思ってしまうほど、減り幅が大きい。

なぜこのようなことになっているのか。

なぜ退職金の金額が減っているのか?

退職金の金額が減っているのは、日本企業の退職金に対する「文化」が変わったからである。

大雑把に説明すると、以前は長く勤めてさえいれば、ある程度大きな金額の退職金を受け取ることができたが、最近は長く勤めたかどうかよりも、どれだけ成果を挙げたかによって退職金の金額を決める仕組みを導入する企業が増えてきた、ということだ。

そしてこの成果主義的な計算方法が、企業側にとっては退職金の金額を削る「大義名分」にもなっているという点に注目したい。「勤めた年数」は変えようがないが、「成果」に関するものさしは企業側で自由に設定することができる。このような仕組みを「ポイント制」などと呼ぶ。

企業によっては、このポイント制に退職金の金額の「調整弁」的な役割を持たせている。業績の落ち込みが予想されており、退職金の給付が将来的に重い負担になりそうな場合は、評価を下げる、昇格を遅らせる、といった対応をとるケースもあるようだ。

退職金について把握していない会社員も多い

数字上、退職金の金額は確実に減っているが、日本の会社員の場合、そのことを知らないか、もしくはあまり関心がない人も少なくないようだ。

特定非営利活動法人「日本ファイナンシャル・プランナーズ協会」(日本FP協会)が過去に公表した「世代別比較 くらしとお金に関する調査2018」によれば、自分が将来受け取る退職金についての認識は、以下のような結果となっている。

<退職金に対する認識>

退職金平均額、20年で1,000万減少 退職金が減り続ける理由とは?
出典:日本FP協会「世代別比較 くらしとお金に関する調査2018」

「金額はあまり把握していない」と「金額は全く把握していない」を合わせた割合は52.3%と半数を超えている。このままでは、仮に退職金の平均支給額が1,000万円を割ったとしても、日本の会社員の間ではあまり危機感が募らないかもしれない。

高卒者の場合や自己都合退職の場合は?

最後に退職金の現状に対する理解をより深めるため、大卒以上の定年退職者以外の平均支給額も紹介しておこう。2018年における調査の結果だ。

<2018年における退職金の平均支給額の実態>

退職金平均額、20年で1,000万減少 退職金が減り続ける理由とは?
出典:厚生労働省の「就労条件総合調査」

学歴によって退職金の支給額には歴然とした差がある。定年退職の場合は、大学卒以上が前述の通り1,788万円で、管理・事務・技術職に就く高校卒の場合は1,396万円、生産や販売などの業務に従事する現業職に就く高校卒の場合は1,155万円となっている。

老後の資金計画を立てる上でも把握は必須

最近では退職金制度を導入していない企業も増えてきているが、いずれにしても、退職金がそもそももらえるのかどうかや、もらえるとしたらいくらぐらいなのかを把握することは、老後のために蓄えておかなければならない金額を計算する上でも必須である。

もし、今あなたが退職金について把握していないとすれば、なるべく早めに会社に確認するのが賢明だ。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)

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