三井物産や三菱商事などの総合商社は、特に入社難易度が高い企業として知られている。しかし、さらに入社するのが難しい企業も存在する。外資系のコンサルティング企業だ。「大学通信」が発表している「入社難易度ランキング」の最新版の結果を紹介しよう。
大学通信の「企業入社難易度」2021年版
「大学通信」は、大学関連の情報や教育情報に特化したニュースサイトだ。その大学通信がこのほど試算によりまとめた「企業入社難易度」の2021年版で、ランキングは以下の通りとなっている(表に添えてある入社難易度の算出方法は後述する)。
1位は外資系コンサルの「マッキンゼー・アンド・カンパニー」で入社難易度は69.4、2位も同じく外資系コンサルの「ボストン・コンサルティング・グループ」で、入社難易度は65.8だ。
日本企業のトップは3位の「INPEX」(国際石油開発帝石)である。総合商社がそれに続き、三井物産が4位、三菱商事が5位、住友商事が7位という結果となっている。
ランキングはどのように作成されている?
先にランキングの結果を紹介したが、このランキングがどのように作成されているのかについても、紹介しておこう。
大学通信の情報調査・編集部部長が朝日新聞に寄稿した記事によれば、調査対象となった企業は424社である。選んだ基準は、日経平均株価に採用されているかどうか、知名度が高いかどうか、就職人気度が高いかどうか、会社の規模が大きいかどうか、などだという。
難易度の計算方法について詳細な説明は省くが、ざっくり言えば、入試難易度が高い大学から就職した人の割合が大きいほど、企業入社難易度が高くなる計算式となっている。各大学からの就職人数は、各大学へのアンケート調査で取得しているという。
ちなみに、朝日新聞に寄稿された記事によれば、東京大(入試難易度70.0)から3人、早稲田大(入試難易度64.8)から6人、青山学院大(入試難易度58.4)から3人を採用した企業の場合は、企業入社難易度は以下の計算式により64.5となるという。
(70.0×3+64.8×6+58.4×3)÷12=64.5
※計算式における「12」は合計採用者数
なぜ外資系コンサルは人気なのか?
なぜ、外資系コンサルの順位がこれほど高いのか。その理由にまでは言及されていないが、外資系コンサルティング会社の特徴の1つに、実力があれば入社数年で年収1,000万円を超えることも可能な点にある。
外資系、特にアメリカ系の企業では、勤めた年数よりも成果の方が重視される。日本企業ではまだまだ年功序列のシステムが残っており、平均年収が一気に上がるということは稀だが、マッキンゼー・アンド・カンパニーなどの外資系企業は全く別の評価軸となっているのだ。
加えて言うと、この調査における入社難易度の高さは「合計採用者数」とは直接相関しないが、現実問題、採用人数が少ないと入社するのは難しいことも指摘しておきたい。
大学通信の調査結果によれば、三井物産の採用人数は119人、三菱商事の採用人数は107人だったが、マッキンゼー・アンド・カンパニーは33人、ボストン・コンサルティング・グループは23人となっている。
時代とともに変わりゆく入社難易度ランキング
大学通信では「10年間で入社が難しくなった企業」ランキングも紹介しているので、最後に触れておこう。
1位は「住友不動産」で、この10年で入社難易度は6.4ポイント上昇した。2位は「帝国ホテル」で3.9ポイントの上昇、3位は「P&Gジャパン」で3.6ポイントの上昇となっている。4位は「AIG損害保険」、5位は「日本水産」、6位は「森永製菓」、7位は「コナミデジタルエンタテインメント」だ。
時代によって学生に人気の業種が変わってくるし、それぞれの企業の業績が上がるか下がるかも、当然、人気度や入社難易度に影響してくる。そのため、入社難易度ランキングの結果が今後10年度がらりと変わる可能性もある。
今後も大学通信が毎年発表する入社難易度ランキングに注目しておきたいところだ。
文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)