独占インタビュー | シャーリー・ビンダー(シニアマネージャー、サムライインキュベート テルアビブ ヘッド)


ISRAERU
(画像=ISRAERU)
シャーリー・ビンダー氏
(画像=シャーリー・ビンダー氏)

東京、テルアビブ、アフリカにおける創業期のスタートアップ企業から対象に投資・成長支援を行う、日本のVC「サムライインキュベート」。日本とイスラエルの企業間のビジネス関係を加速させる原動力となっている同社のテルアビブ支店を支部長として推進しているのは、シャーリー・ビンダー氏です。大規模な投資取引の知識に長けている彼女は、自らの感覚を信じて現在の地位まで昇りつめました。

今回のインタビューでは日本との仕事、市場動向、そして女性リーダーとしての経験について、シャーリー氏に伺いました。

―――弁護士としてキャリアをスタートさせた後、サムライインキュベートに入社したと伺っています。これまでの経歴、また日本との仕事をどのようにして始めたのか、教えてください。

私は社会人になって間もない頃、大きな法律事務所で働き始めました。そしてすぐに、自分が丸一日法律関係の仕事をしていたいわけではないと気づいたのです。ビジネスの分野を勉強し、さらに経験を積みたいと思うようになりました。その時期にちょうど、専門的な会議やイベントをプロデュースするStierGroupに参加することにしたのです。

Stierでの2年間の仕事を通して、経営や予算を管理する方法を学びました。そして、ビジネスと法律を繋げることに自分が情熱を感じると気づいたのです。偶然にも、サムライインキュベート投資先のCEOが、ビジネスおよび法務マネージャーを探していたサムライインキュベートと私を繋げてくれました。それはまさに私にとって絶好の機会でしたね。日本について何も知らなかったにも関わらず、私は日本に飛び立つ準備を始めました。

―――サムライインキュベートおよびイスラエル支部長としてのシャーリーさんの役割について詳しく教えてください。

ファンドのLP(リミテッド パートナー)と最適なマッチを実現するために、年間を通じて多くのスタートアップ企業と会っています。関連する業種のリストは、LPの関心分野から導き出され、たとえば、建設、ロジスティクス、デジタル医療などが含まれます。私たちの目的は、スタートアップを日本市場に独占的に提供することです。最終的に、日本の投資家にとって最も関連性の高いスタートアップを見つけようとしています。

また、日本の企業にコンサルティングサービスを提供することで、イスラエルの関連技術の発見から導入まで支援しています。また逆に、イスラエルの成長期にあるスタートアップ企業が日本の投資家を見つけるのも支援します。

私はイスラエル支部における、すべての活動のマネージャーという役割を担っています。これには、基本的な管理業務と予算管理、イスラエルのエコシステムの維持、および顧問弁護士との調整業務が含まれます。もちろん業務はこれらに限定されるわけではありません。

2019年「Big in Japan」でのパネルディスカッション。
(画像=2019年「Big in Japan」でのパネルディスカッション。左から:Yossi Viniski氏(Bank Hapoalim)、Hirofumi Mori氏(Toshiba of Europe)、シャーリー・ビンダー氏、Meytal Shavit(Sompo Digital Lab)、水野敦之氏(Magenta Venture Partners))

―――イスラエルは、スタートアップ文化が根付いていることで知られています。一方日本では、スタートアップ文化はそれほど目立たないかもしれませんが、存在しないわけではありません。 両国のスタートアップ文化の違いは何ですか?

私の知る限り、両国の明らかな違いは何よりもまず量です。イスラエルには現在8,000を超えるアクティブなスタートアップ企業がありますが、日本にはその4分の1以下しかありません。イスラエルを見ると、その供給ははるかに大きいです。

もう少し深く掘り下げると、日本のスタートアップはより市場志向です。彼らは地元の市場に関連する技術や製品を開発しています。一方イスラエルは市場が非常に小さく、スタートアップは地元の市場に留まるよう想定されていません。彼らのマインドは常に技術を輸出することにあり、最初からすべての実務は英語で行われ、常に海外への意識を持っています。

―――シャーリーさんは日本のあらゆる規模の企業と協力関係にありますが、たとえば、大企業ではなく、中小企業とスタートアップ企業を繋ぐにあたって課題はありますか?

それは会社自体に大きく依存します。大企業と協力する際の主な課題は、意思決定までのプロセスの長さです。会社が大きくなればなるほど、会社の意思決定はより長く、より分岐します。より多くの人が承認に関わり、関係者全員に連絡するには時間がかかります。これが主な欠点です。そうは言っても、サムライインキュベートで長年働いてきた中で、意思決定プロセスにも改善が見られます。

中小企業における実際の課題は、パイロットムーブの場合でもリソースを割り当てる必要があるということを理解することです。すべての企業がそのような活動に投資して支援するためのリソースを見つけることができるわけではありません。つまり中小企業における課題は、プロジェクトを機能させるには、そのプロジェクトに資金とリソースを投資する必要があると会社を納得させることです。

―――サムライインキュベートは、地理的に離れた場所にある企業をつなぐことで、市場の未来を形作る上で重要な役割を果たしています。長年の市場での経験の中で、気づいた傾向はありますか?

サムライインキュベートで働いてきた5年間で、互いの関心の高まりを目の当たりにしました。以前はイスラエルのスタートアップ企業に、日本について考えるように「説得」しなければなりませんでした。しかし今日では、多くの人が私たちが日本企業であることを知っており、その可能性を認識しているため、私たちに頼ってくれるようになりました。

2019年イスラエル大使公邸のイベントでのシャーリー氏。
(画像=2019年イスラエル大使公邸のイベントでのシャーリー氏。左から:Yinnon Dolev(Sompo Digital Lab)、Shirley、Tomohiro Yoden(JETRO)、Guy Lachmann(Pearl Cohen))

大きなビジネスの可能性についての理解は、両国で広がっています。かつては本当に大丈夫だろうかという疑いがありました。今日はすでにそれが確実なことであり、両者がビジネスを試みてビジネスを生み出す意欲と方法があります。

昨年、日本の企業からスマートシティソリューションへの大きな関心が寄せられました。この大きな流れは、サービスをデジタルに移行できるいくつかのテクノロジー(医療サービス、通信チャネル、従業員管理ソリューションなど)に対する需要を強化しただけです。どちらかといえば、COVID-19のパンデミックが、日本でのデジタル化の急増を生み出しました。

また、デジタル化にはサイバー脅威や企業への攻撃が伴うため、ソリューションが必要です。つまりすべてをデジタルで実装する必要があるのです。

―――COVID-19についてお話をされましたが、その結果、一部の企業が大きな打撃を受け、世界に衝撃を与えました。現在の状況は投資の決定に影響を与えると思いますか?

投資に関しては、パンデミック発生のずっと前に6つ目となる資金を調達できていたため、通常どおりに業務を継続することができました。普段はさまざまな機会を探して投資を続けています。日本では、私たちが知る限り、そして私たちが一緒に働いている同僚の経験から、彼らは普段通りに活動しようとしています。

重大な変化(むしろ改善とも言えるかもしれません)は、日本でバーチャル会議を開くことが可能だと理解されていることです。実際に対面することを尊重する国にとって、それは大きな変化です。まだいくつかの物理的なセッションは存在していますが、考え方が変わりました。物理的な交流がなくても事業を営むことが可能であるという理解が得られたことは、私にとって重要なことです。

―――日本のビジネスシーンは、特にポジションの管理に関しては、男性に支配されているという周りからの評判があります。リーダー的立場にある女性としての経験はどのようなものですか?

確かにサムライインキュベートで働き始めたとき、日本のビジネス界は男性社会であると聞きました。

少なくとも初めて日本に来たときは、どうあるべきかとても不安でした。自分を変えるべきなのか、それとも私らしくあるべきなのか。そして働く中で、専門的な価値を持つ専門家として接するとき、自分自身が誰であるかを変える必要がないことに気づきました。すぐに彼らは、私のパーマヘアや私が意欲的でカラフルな女性であるという事実を受け入れてくれることに気づいたのです。

これは日本だけでなく一般的に役立つ知識です。受け入れられるために変化する必要はないことを理解してください。あなたが何か与えることを持ち、その道のプロであるならば、そのままのあなたで受け入れられるでしょう。

公式ウェブサイト
https://www.samurai-incubate-israel.asia/