電子政府、韓国は「2位」で日本にボロ勝ち!?日本がDXできない理由
(画像=Eigens/stock.adobe.com)

近年、世界の競争力で日本の凋落ぶりが目立つ。世界の電子政府化を評価した「電子政府ランキング」でも14位と、2位の韓国に大きく差をつけられている。

しかし、その電子政府にもメリットとデメリットの両方がある点が指摘されており、「電子政府化が万能」とは一概にはいえないようだ。韓国が電子政府の分野で世界トップに躍り出た背景とともに、電子政府の問題点と日本が低迷している要因を探ってみよう。

韓国は1ランクアップ、日本は4ランクダウンで圏外へ 

「e-Gov(Electric Government)」とも呼ばれる電子政府は、既存の行政業務をデジタル化したものだ。情報通信技術(IT)を活用して行政業務の効率化を図ることで、国民や企業、政府の事務的負担を軽減し、利便性と透明性を向上することが目的である。

わざわざ役所に出向かなくても、インターネットで行政情報の閲覧や、住民登録や住所変更、パスポートの申請、各種証明書の発行などさまざまな手続きができるという点で、極めて利便性が高い。日本のマイナンバーも行政のデジタル化の一環だ。

前述のランキングは、国連経済社会局(UNDESA)が2020年7月に発表した、「2020年版国連電子政府調査(United Nations E-Government Survey)」に掲載されたもので、1位デンマーク、2位韓国、3位エストニアとなった。アジア圏からは韓国のほか、シンガポール(11位)と日本がトップ14入りした。前回(2018年)の調査から順位を1つ上げた韓国とは対照的に、日本は4つ下げて圏外に落ちた。

60年代からデジタル化に取り組んでいた韓国

同じアジア諸国でありながら、両国の差は何に起因するものなのか。

「IT大国」「オンラインサービスの提供(OSI)大国」の異名をとる韓国は、日本のマイナンバー制度にあたる住民登録番号制度を、世界に先駆けて1968年に導入した。現在はこの番号一つで約3,200種類の証明書の申請・発行などを、24時間スマホやパソコン、あるいは駅やコンビニに設置された機械で行える。

国内のネットバンキングを利用すれば、ほぼリアルタイムで入金が確認できるなど銀行サービスも発展している。コロナ禍で日本が大きく出遅れたオンラインによる遠隔授業も、韓国は感染拡大初期に難なく開始した。

一方、日本は20年も前からデジタル構想を打ち出してきたにも関わらず、低迷したままだ。開始から5年が経過した現在も課題が山積みのマイナンバー、他の主要国と比較すると大幅に遅れたコロナ給付金、遠隔授業実施率は51%(レノボ・ジャパン2021年4月調査)と、デジタル大国としての世界的評価は低い。

「高齢者のネット利用率が9割超え」の日本の現状

韓国が早々と電子化に着手した背景には、それなりの理由がある。住民登録番号制度の本来の目的は、北朝鮮からのスパイなどによる不法侵入を防ぐことだったという。つまり、スタート地点が地政学リスクという点からして、日本と事情が大きく異なる。

もう一つ、国民の受け入れ体制の違いだ。日本に限らず電子化が遅れている国では、「高齢者が電子化の波についていけない」という声を頻繁に聞く。

韓国では2014年の時点で60~69歳の56%、70歳以上の14.1%がインターネットを利用しており、2020年にはそれぞれ91.5%と40.3%に増加した。合理的・利便性を重視する韓国の国民性を考慮すると、インターネットやスマホが幅広い層から支持を得ているのも不思議ではない。

一方、日本でもコロナ禍で60~69歳の利用率が90.5%に達したとされている。しかし、蓋を開けてみると、「インターネットを使えない」という理由から、ワクチン接種のオンライン予約をできない高齢者による電話がコールセンターに殺到した。

この矛盾は、インターネットでニュースをみたり調べ物をしたりといった比較的簡単な作業はできるが、各種手続きなど複雑に思える作業はできない、あるいは苦手意識からやらないという高齢者が多いからだと予想される。せっかく便利なサービスを導入しても、幅広い層に受け入れられなければ宝の持ち腐れだ。

メリットだけではない?電子政府先進国で指摘されるデメリット

メリットが多いとはいうものの、ひたすら電子政府大国を目指せば良いというものではないようだ。注目されている電子政府だが、導入が進んでいる国ではデメリットを指摘する声も少なくない。

第一に「ネット環境へのアクセスがない人は利用できない」という、致命的な難点がある。前述の通り、たとえネットへのアクセス環境があっても、サービスを使いこなせない人は取り残される。他にも「システム障害などが生じるとあらゆる機能が停止する」「ハッキングなどの被害で個人情報が漏洩するリスクがある」といった問題もある。

筆者自身も電子政府ランキング7位の英国、10位のオランダでの生活を通し、メリットとデメリットの両方を経験した。24時間好きな場所から行政手続きを行える点は利便性が高いが、「システムエラーでアクセスできない」などスムーズに行かない場面に出くわすことも稀ではない。

問題が解決しない場合は担当部署に電話をするが、つながるのに長時間かかることもある。そのような時、「昔のやり方の方がストレスは溜まりにくかった」などと考えてしまう。

電子政府化に向けた日本の課題は?

日本で電子化が延滞している根本的な理由の一つとして、「デジタル化の目的や目標が不透明」である点も指摘されている。マイナンバー導入に加え、印鑑廃止やデジタル庁発足など電子化に取り組んでいるものの、「電子化」という構想だけが独り歩きして全体像が漠然としているというのだ。プライバシー保護や安全性を含め、国民へのアピール度も低い。

行政側の課題としては、「財源の確保」や「適切なデジタル人材の確保」がハードルとなっていることが、総務省が7月に実施した調査で明らかになっている。

電子政府も十人十色

一言に電子政府といっても政策やシステム、導入法など、国によりさまざまな対応が求められる。日本は電子政府化の発展に向けた課題と向き合うとともに、電子化のメリットとデメリットを踏まえつつ、自国の需要に見合う電子政府を発展させる必要があるだろう。

文・アレン琴子(英国在住のフリーライター)

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