最近よく耳にする「SDGs(エス・ディー・ジーズ)」。ビジネスの場面だけではなくエネルギー・資源、経済、環境などありとあらゆる場面で使われている。しかし漠然と意味はわかっていても、「なぜいたるところで取り上げられるようになったのか」詳しく知らない人も多いのではないだろうか。話題のSDGsについて見ていこう。

目次

  1. SDGsとは何か
  2. SDGsをわかりやすく言うと
    1. 持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)とは
    2. 17のゴールの詳細
    3. SDGsの特徴
  3. 日本での取り組み
    1. 「SDGsアクションプラン2022」(2022年の重点事項)
    2. 「SDGs未来都市」と「ジャパンSDGsアワード」
  4. 世界におけるSDGsの取り組み
    1. フィンランドの取り組み
    2. スウェーデンの取り組み
    3. デンマークの取り組み
  5. SDGsの達成状況
  6. 企業にとって知らないでは済まされないSDGs
    1. SDGsが話題になる理由
    2. SDGsに取り組まないことは企業イメージのダウン
  7. SDGsは企業価値を高めるために重要
  8. SDGsに関するQ&A
    1. Q.SDGsはなぜできた?
    2. Q.SDGsの読み方は?
    3. Q.SDGsでは何をするの?
SDGsについてわかりやすく解説 企業にとって知らないでは済まされない!
(画像=TKM/stock.adobe.com)

SDGsとは何か

「SDGs」という言葉がいたるところで使われるようになったのは、SDGsの目標が多岐に及ぶからであろう。最初にSDGsの意味や目標など基本的なことから確認していこう。

SDGsをわかりやすく言うと

SDGsとは、Sustainable Development Goalsの略で日本語にすると「持続可能な開発目標」となる。SDGsをわかりやすく言うと「世界中にある貧困や病気、差別、環境などの問題をみんなで解決していこう」ということになる。しかし単にこれらの問題をみんなで解決していこうと宣言しているだけでは、漠然としすぎて効果が出ない恐れがあるため、SDGsでは期限を区切って目標を立てている。

SDGsでは、貧困や病気、差別、環境などの問題を2030年までに解決することを目標としている。また具体的に17の目標と169のターゲットを設けている。そもそもSDGsは、2015年の国連サミットにおいて宣言され日本を含めたすべての加盟国が合意。日本でも2016年にSDGs推進本部を設置し中長期戦略であるSDGs実施指針を策定した。2022年現在もSDGs実施指針に則りさまざまな施策を実行している最中だ。

国や企業だけでなく私たち一人ひとりもSDGsに向けて努力していく必要があるだろう。

持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)とは

SDGsとは、2015年9月の国連サミットにおいて、全会一致で採択された国際目標だ。2001年に策定された開発分野における国際社会共通の目標であるミレニアム開発目標(MDGs)の後継として、日本でも積極的に取り組んでいる。2015年9月の国連サミットで採択された際に「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された。

「2030年までに地球上の誰一人取り残さない持続可能でよりよい世界を目指す」という世界共通の目標として17のゴールから構成されている。SDGsの前身であるMDGsには、発展途上国向けの開発目標として2015年を期限とする「貧困・飢餓」「初等教育」「女性」「乳幼児」「妊産婦」「疾病」「環境」「連帯」の8つの目標があった。

しかし乳幼児や妊産婦の死亡率の削減などに一部未達成の項目もある。MDGsは、発展途上国向けの目標であったのに対し、SDGsは発展途上国だけではなく先進国自身が取り組む普遍的な目標であることに違いがある。

17のゴールの詳細

17のゴール(目標)の下には169のターゲットと232の指標がある。具体的に17のゴールの中身を見てみよう。目標1~6を見るとSDGsの前身であるMDGsが発展途上国向けの開発目標であったことがうなずける。ただし所得の格差やジェンダー平等など日本でも検討すべき課題はあるだろう。

SDGsについてわかりやすく解説 企業にとって知らないでは済まされない!
出典:外務省

目標7~12を見ると日本でも問題になっている点が多いことがわかるだろう。エネルギー問題や経済成長、雇用や働き方、イノベーション、まちづくりなど日ごろから耳にする言葉である。

SDGsについてわかりやすく解説 企業にとって知らないでは済まされない!
出典:外務省

目標13~17では、グローバルな視点が多い。異常気象、資源、平和な社会など日本だけではなく世界的な問題である。

SDGsについてわかりやすく解説 企業にとって知らないでは済まされない!
出典:外務省

SDGsの特徴

SDGsは、政府の取り組みでは足りず企業や地方自治体からありとあらゆる団体まですべての人の行動が求められている点が大きな特徴だ。「達成のカギは、一人ひとりの行動に委ねられている」という認識をすべての人が持たなければ達成できない目標なのである。17のゴールは、「社会」「経済」「環境」といった3つの側面に密接にかかわっている。

・社会:貧困や飢餓、教育などいまだに解決を見ない社会面の開発アジェンダ
・経済:エネルギーや資源の有効活用、働き方改善、不平等の解消などすべての国が持続可能な形で経済成長を目指す経済アジェンダ
・環境:地球環境や気候変動など地球規模で取り組むべき環境アジェンダ

持続可能な、よりよい未来を築くには、社会、環境、経済の3アジェンダから統合的に解決することが必要だ。アジェンダとは、未来に向けた議題や課題、行動計画などの意味を持つ。

日本での取り組み

日本におけるSDGs推進本部は、以下のような構成で毎年2回の会議でさまざまな取り組みが話し合われ決定されている。

・総理大臣:本部長
・官房長官や外務大臣:副本部長
・全閣僚:構成員

「SDGsアクションプラン2022」(2022年の重点事項)

「SDGsアクションプラン2022」では、「2030アジェンダ」にある5つのP「People(人間)、 Planet(地球)、Prosperity(繁栄)、Peace(平和)、 Partnership(パートナーシップ)」に則して、以 下8つの事項に重点的に取り組むこととしている。

・People(人間):感染症対策と未来の基盤づくり

  1. あらゆる人々が活躍する社会・ジェンダー平等の実現
  2. 健康・長寿の達成

・Prosperity(繁栄):成長と分配の好循環

  1. 成長市場の創出、地域活性化、科学技術イノベーション

・Planet(地球):地球の未来に貢献する

  1. 持続可能で強靱な国土と質の高いインフラの整備
  2. 省・再生可能エネルギー、防災・気候変動対策、循環型社会
  3. 生物多様性、森林、海洋等の環境の保全

・Peace(平和):普遍的価値の遵守

  1. 平和と安全・安心社会の実現

・Partnership(パートナーシップ):絆の力を呼び起こす

  1. SDGs 実施推進の体制と手段

「SDGs未来都市」と「ジャパンSDGsアワード」

日本政府によるSDGsの取り組みは多岐にわたる。その中から特に重要な「SDGs未来都市」と「ジャパンSDGsアワード」について紹介しよう。

政府は、SDGsの達成に向けた取り組みを公募し、優れたSDGsの取り組みを提案する都市や地域を「SDGs未来都市」として選定。これは、2018年から始まった取り組みでSDGsを原動力とした地方創生を推進することを目的に行われている。

なかでも特に先導的な取り組みは「自治体SDGsモデル事業」として選定。2020年時点で全国各地の93都市が選ばれ、資金面での支援も受けている。SDGsの達成に資する優れた取り組みを行う企業・団体を表彰する制度が「ジャパンSDGsアワード」だ。SDGs推進にあたって「見える化」を行い、国内の取り組みを促進する目的でつくられた制度である。

2017年6月のSDGs推進本部第3回会合で創設され毎年表彰が行われている。

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世界におけるSDGsの取り組み

SDGsは、2015年の国連サミットにおいて宣言され日本を含めたすべての加盟国が合意しているため、世界各国でもさまざまなSDGsの取り組みを行っている。ここでは、その中でも代表的な取り組みを見ていこう。

フィンランドの取り組み

SDGsに積極的に取り組んでいる国として有名なのがフィンランド。フィンランドでは、行政が積極的にSDGsの施策や情報発信を行っているため、国民のSDGsへの意識も高く社会的にSDGsが浸透している。なかでもレスポンシブルツーリズムは、代表的な施策の一つだ。レスポンシブルツーリズムとは、責任ある観光のことを指す。観光客や観光業者にかかわらず観光に関係する人すべてが観光地に与える影響に責任を持つことで自然や環境を守る取り組みを行っている。

首都のへルシンキでは、サステイナビリティを中心とした観光の情報を発信しているホームページを作成するなどフィンランドでSDGsは日常のものとなっているのだ。

スウェーデンの取り組み

スウェーデンもSDGsに積極的に取り組んでいる国の一つだ。スウェーデンでは、国が積極的にSDGsに参加しているだけでなく企業や国民も積極的にSDGsに参加している。特に有名なのがゴミ問題への取り組みだ。スウェーデンでは、ゴミを100種類にも分別しリサイクルに取り組んでいる。ゴミをリサイクルすることで環境問題への対策となる。行政は、スーパーなど普段から皆が立ち寄る場所に回収ステーションを設置し、国民のゴミの分別に協力しているのだ。

また企業も断熱材のリサイクルに力を入れるなどSDGsに積極的に取り組んでいる。このようにスウェーデンでは、SDGsへの取り組みは日常生活に浸透しているのが特徴だ。

デンマークの取り組み

SDGsの達成度で世界トップクラスなのがデンマークだ。「SUSTAINABLE DEVELOPMENT REPORT 2021」によると2021年におけるデンマークの順位は3位となっているが2020年2位、2019年1位の国である。デンマークでは、他の国に比べ、ジェンダー平等にも力を入れている国だ。

もともと男女の社会的な格差が大きい国であったデンマークでは、女性の管理職の割合を増やしたり男性でも育児休暇を取りやすいようにする取り組みを行い、ジェンダー平等を実現しようとしている。もちろんそのほかのSDGs目標達成にも積極的だ。デンマークでは、SDGsの17の項目のすべてを達成できるような村をつくるプロジェクト「UN17 Village」も実行中である。

この村の広大な土地にリサイクル建材などを使用した建物を建てそこに人が住むことになっており2023年に完成する予定だ。今後のSDGsの成果にさらなる期待が持たれている。

SDGsの達成状況

SDGsでは、貧困や病気、差別、環境などの問題を2030年までに解決するために17の目標を設けている。では、現在どの程度まで目標を達成できているのだろうか。ここでは、2021年時点の代表的な目標についてSDGsの達成度を見ていこう。

・貧困
「あらゆる場所であらゆる貧困をなくそう」という目標が立てられているが、今のままでは貧困の撲滅は達成できない。これは、新型コロナウイルスの影響拡大で極度の貧困が増加したためだ。このままいけば2030年の世界の貧困率は、7%に留まる見込みである。

・飢餓
飢餓についても、「飢餓をゼロに」という目標であったが、これは達成できそうにない。これもまた、新型コロナウイルスの影響が拡大したためだ。世界の飢餓(栄養不足におちいる可能性のある人)は、2014年は6億700万人だったのが、2020年では7億人から9億人に上ると推算された。

・教育
教育の目標は、「質の高い教育をみんなに」である。この目標も新型コロナウイルスの影響拡大で達成できそうにない。2020年は、全世界の子どもの9%にあたる約1億100万人の子どもで最低限の読解力ができる水準を下回っている。これは、基本的な学校インフラが不足している国が多くあるためだ。

・ジェンダー
ジェンダー平等についても目標にはほど遠い状態だ。議員や企業の管理職の女性の割合は、依然として低い。それどころか女性に対する暴力がコロナ禍で悪化、世界で児童婚も増加する可能性が高くなっている。

このように多くのSDGsの目標は、新型コロナの影響もあり達成できない見通しだ。これからもさらにSDGsの目標達成に向けた努力が必要だろう。

企業にとって知らないでは済まされないSDGs

今や企業にとってSDGsへの取り組みは常識となりつつある。知らないでは済まされないレベルに来ており、持続可能でよりよい社会の実現を目指すSDGsの取り組みに該当しないものを探すことの方が難しいかもしれない。

SDGsが話題になる理由

SDGsの17のゴールは以下のようなあらゆる分野に及ぶ。

・エネルギー問題
・CO2排出量の増加による温暖化
・異常気象や自然災害の増加
・森林の砂漠化
・水不足など

地球環境に深刻な影響を与えるものは、すべて対象だ。昨今の世界的な新型コロナウイルスの影響も「SDGsアクションプラン2022」では、重点事項として掲げている。また以下のように女性活躍を推進することは、ジェンダー平等や経済成長と雇用の問題との関係が深い。

・女性に配慮したインフラ整備
・母子保健サービスの拡大
・女性の指導的役割への参画推進等の支援

SDGsが指し示す方向性は、企業経営やマーケティングなどの観点からも無視できない。地球環境に対する危機意識が世界規模で高まっていることもある。しかしビジネスとしての重要性が認知されたことも大きいといえるだろう。

SDGsに取り組まないことは企業イメージのダウン

近年では、企業におけるSDGsへの取り組みをアピールする会社が増えている。企業の環境(Environment)・社会(Social)・企業統治(Governance)に配慮する企業を重視するEGS投資は、欧米を中心に広く浸透しており投資残高も拡大傾向だ。SDGsを企業経営の方針に取り込みESG投資を呼び込むことは、企業価値の向上につながる。

また以下の内容は、企業を経営するうえで必要な労務管理に深くかかわる問題だ。

・ジェンダー平等への意識
・働きがいのある人間らしい職場環境づくり
・健康的な生活を確保
・ワーク・ライフ・バランスの推進など

ブラック企業のイメージは、風評リスクにつながり採用や従業員の定着率に大きな影響を与えかねない。対外的にもSDGsに取り組まないことは、企業イメージのダウンにつながるのである。

SDGsは企業価値を高めるために重要

そもそもSDGsは、あまりに広い範囲を全体的にカバーしているため、漠然としたイメージしかわかない人も多いかもしれない。しかし「SDGsに取り組むのが当たり前」という時代が目の前に迫っている。SDGsが指し示す方向性は、企業経営やマーケティングなどの観点からも無視できないものになっており企業価値向上のためにも必須課題と言えるのだ。

SDGsに関するQ&A

Q.SDGsはなぜできた?

A.SDGsができたのは、世界中の国や人が協力して貧困問題や環境問題などの解決をするためである。SDGsは、2030年までに持続可能でよりよい世界にすることが目標であり、そのためには解決しなければならない問題が多い。貧困や飢饉、教育やジェンダーの問題などを解決しなければならないがこれらの問題は一つの国や個人だけでは解決できない。

これらの問題を解決するためにSDGsができ世界の国々が力を合わせようとしている。

Q.SDGsの読み方は?

A. SDGsは、「エス・ディー・ジーズ」と読む。SDGsは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称でその頭文字から取っている。SDGsでは、2030年までに持続可能でよりよい世界にすることを目標としているが、これは貧困問題や環境問題などの解決に役立つと考えられている。

そもそもSDGsは、2015年9月に行われた国際サミットで採択され全加盟国で同意にいたった。日本もSDGsに同意しているため、さまざまな施策が行われている。

Q.SDGsでは何をするの?

A. SDGsでは、ごみのリサイクルや平和活動などさまざまな活動を行う。SDGsは、17の目標(ゴール)と169個のターゲットから構成されている。目標は幅広く貧困問題やエネルギー問題、環境問題、水の問題などを解決するためのさまざまな取り組み(ターゲット)が必要だ。SDGsの取り組み方は、国や行政、企業、個人でそれぞれに異なる。

まずは、ごみのリサイクルなど自分の身近にある問題解決のための行動を行ってみてはいかがだろうか。

加治 直樹
著:加治 直樹
特定社会保険労務士。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。銀行に20年以上勤務。融資及び営業の責任者として不動産融資から住宅ローンの審査、資産運用や年金相談まで幅広く相談業務を行う。退職後、かじ社会保険労務士事務所を設立。現在は労働基準監督署で企業の労務相談や個人の労働相談を受けつつ、セミナー講師など幅広く活動中。中小企業の決算書の財務内容のアドバイス、資金調達における銀行対応までできるコンサルタントを目指す。法人個人を問わず対応可能であり、会社と従業員双方にとって良い職場をつくり、ともに成長したいと考える。
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