注目のオークション結果から、NFTの話題まで。今週、アートマーケットを賑わせたトピックを振り返ってみよう。(1ドル=112.20 円, 1ユーロ=129.92円で換算)

目次

  1. マーケットの動向
  2. 注目の作品
  3. オークション結果
  4. NFT

マーケットの動向

▍世界の現代アート市場が売上高と取引密度で過去最高を記録。Artpriceがレポート

オンラインアート価格データベースのArtprice社が「コンテンポラリーアートマーケットレポート2021」を公開。2020年のCovid-19によるコンテンポラリーオークション市場の落ち込みからこの1年(2020年6月末から2021年6月末)で回復し、世界のコンテンポラリーアート市場は、売上高と取引密度の両面で過去最高を更新したことを報告している。

このほか、ポイントとなる数字には以下のようなものがある。

  • 2000/01年には3%だったコンテンポラリーアートが、2020/21年には全体の23%を占めるようになった。
  • ここ12ヶ月間で102,000点のコンテンポラリー作品がオークションに出品され、総額約3,000億円(27億ドル)という驚異的な数字を売り上げている。2019/20年と比較して117%の上昇。
  • 香港の売上高がロンドンを抜き、+277%と異例の成長
  • バンクシーは、ピカソ、バスキア、ウォーホル、モネに続き、アート市場全体で最も売れているアーティストのトップ5に。

なお、現代美術の中で最も売れたアーティストは、ジャン=ミシェル・バスキア。KAWSは最も多くの作品を販売し、オークションではちょうど1,682点を販売している。(Artprice)

▍アメリカのアート作品分割保有のプラットフォーム企業「Masterworks」の評価額が10億ドルを突破。最初のアート・スタートアップ・ユニコーンへ

「Masterworks」twitterより

アメリカのアート作品分割保有のプラットフォーム企業「Masterworks」は、約123億円(1億1,000万ドル)の資金を調達し、10億ドル以上の驚異的な評価額を確保したことを発表した。この数字は、シリコンバレーの言葉で言うところの「ユニコーン」の栄誉を獲得したといえる。Masterworksは、草間彌生、ホックニー、ピカソなどのトップレベルの芸術作品を取得し、証券取引委員会に登録。それぞれの作品の株式を提供している。ARTnewsによると、今月の時点で、20万人以上がMasterworksに登録し、1万5千人がプラットフォームで取引される株式を購入しているという。(artnet news)

なお、「ANDART」は「Masterworks」に先駆けて日本でスタートしたアート作品の共同保有プラットフォーム。これまで手が届きづらかった高額な有名アート作品や大型作品でも1万円から購入 / 売買することができます。

注目の作品

▍アンディ・ウォーホルがジャン=ミシェル・バスキアを描いた肖像画、見積額 22億円超でクリスティーズに出品

ジャン=ミシェル・バスキアの肖像画
(画像=ジャン=ミシェル・バスキアの肖像画)

画像引用:https://news.artnet.com/
クリスティーズは、11月11日に開催される20世紀美術のイブニングセールで、アンディ・ウォーホルが制作したジャン=ミシェル・バスキアの肖像画を出品する。「酸化絵画」のシリーズのうちの一作。同シリーズは、銅や金の塗料をキャンバスに塗り、ウォーホル自身か友人・アシスタントらにキャンバスに排尿させることで制作したもの。尿の酸がメタリック塗料と反応して酸化し、「抽象的なきらめき」を生み出している。作品の制作された1982年はウォーホルにとっては晩年の作品であるが、バスキアが同年に制作した作品はオークションで多くの最高額を記録しており、落札予想価格は22億円超(2,000万ドル)となっている。(artnet news)

▍バンクシーの2枚組の《風船と少女》がクリスティーズのオークションに登場

バンクシーの2枚組の《風船と少女》
(画像=バンクシーの2枚組の《風船と少女》)

画像引用:https://www.euronews.com/
《風船と少女》はバンクシーの代表作のひとつだが、これが2つのパーツに分かれた「2枚組」のバージョンが、今月末にロンドンで開催されるクリスティーズのオークションで初めて公開される。この作品は、2005年にバンクシーが制作した25点のうちの1点で、1点には少女が、もう1点には彼女のハート型の風船が描かれている。約5.3億円 (410万ユーロ) もの高値での落札が予想されている。(euronews)

▍サザビーズ、香港で4,000万ドルのボッティチェリ作品を発表

サンドロ・ボッティチェリ
(画像=サンドロ・ボッティチェリ)

画像引用:https://news.artnet.com/
サザビーズは、10月9日・10日に香港で行われる秋のセールシリーズで、4,000万ドルのサンドロ・ボッティチェリの作品をアジアでプレビューするという注目の試みを行っている。今回の出品は、西洋の優れた作品に対するコレクターの要望が高まる中、将来的にアジアでオールドマスター作品のオークションを開催する可能性に道を開くもの。公開される作品は、復活したキリストを描いた≪The Man of Sorrows≫で、15世紀後半から16世紀前半に制作されたものであり、来年1月にニューヨークで開催されるオークションハウスの恒例行事「マスターズウィーク」のスターロットとなっている。(artnet news)

▍モハメド・アリの知られざるアートがオークションで大ヒット

モハメド・アリの知られざるアート
(画像=モハメド・アリの知られざるアート)

画像引用:https://www.artnews.com/
ボクサーのモハメド・アリが描いた十数点の作品が、ニューヨークのオークションに登場。ボナムズ社がパークアベニューの本社で開催したこのオークションには、アリが1970年代に描いたあまり知られていない26枚のドローイングやペインティングが出品され、合計1,066万円 (94.6万ドル)で落札された。また、アリがボクシングで勝利を収めた際に描いた≪Sting Like a Bee≫(1978年)は、最低予想価格の10倍以上となる4,769万円 (42.5万ドル) で英国のコレクターによって落札され、アスリートの制作した芸術作品としては記録的なものとなった。(ARTnews)

オークション結果

▍抽象表現主義絵画が躍進!10月1日開催クリスティーズオークション

2021年10月1日、クリスティーズ(ニューヨーク)の「Post-War to Present」ライブオークションが開催された。最初期に発行されたNFTを対象とし、暗号資産イーサリアムで入札が行われることでも話題となった。ANDARTでは落札額トップ5の作品とANDARTに関連する注目作品をピックアップして紹介している。

▍日本人アーティストが躍進!マレットジャパンオークション

2021年10月7日、マレットジャパンオークション「Modern and Contemporary Art」が開催された。国内外の若手からベテランまで、幅広いアーティスト達の作品216点が出品され、上位に日本人アーティストの作品が複数ランクインしている。ANDARTでは、落札価格トップ5とANDARTに関連するアーティストの情報を紹介している。

▍羽田空港で開催。日本初の「保税蔵置場」を活用したアートオークション

2021年10月1日、ニューアート・エストウェストオークションズの主催により、日本で初めて空港の「保税蔵置場」を活用したアートオークションが羽田空港で開催された。日本国外にある作品の日本のアートオークションへの出品は、従来は作品ごとに輸入通関時に課税されていたため出品数が限定的だった。保税蔵置場を活用することで、関税等を留保した状態で海外からの出品が可能としたもので、2020年12月1日付け及び2021年2月26日付関税法基本通達一部改正により実現できたもの。

当日はシステムトラブルのため、ロット150までで中断となったが、上位には草間彌生、奈良美智、白髪一雄といった日本人アーティストが名を連ねた。中断したオークションは2021年11月18日に再開される。(ニューアート・エストウェストオークションズ)

NFT

▍TikTokがNFTに参入。トップクリエイターのコンテンツを購入可能に

TikTok
(画像=TikTok)

画像引用:https://techcrunch.com/
全世界の月間ユーザー数が10億人を突破した急成長中のソーシャルメディアプラットフォームTikTokは、Lil Nas X、Grimes、Bella Poarch、Rudy Willingham、Gary Vaynerchukなどのトップクリエイターのコンテンツを活用した独自のNFTを発表。一点ものや限定版のNFTのリリースは、既存のNFTコミュニティで話題を集めることに重点を置いているようだ。(TechCrunch)

▍NFTプラットフォーム・Nifty Gateway、Beepleオークションでコレクターから訴訟を提起される

≪Abundance≫
(画像=≪Abundance≫)

画像引用:https://news.artnet.com/
アートコレクターのAmir Soleymaniが、Beeple NFTの落札を巡り、NFT取引プラットフォームであるNifty Gatewayに対して訴訟を提起している。Beepleの新作≪Abundance≫のオークションに関連するもの。本オークションでは、最高落札者に初版の作品が提供されるだけでなく、入札額2-9位の入札者にはNFTの第2版、11人目から100人目までの入札者には、また別のNFTのエディションが与えられるという形式になっていた。

Soleymaniは2位となったものの、入手したかったのはオリジナル作品のみであって第2版を入手したかった訳ではないこと、また、2位と3位の入札者の落札金額が大きく異なるのにも関わらず、得られるのは同じ内容の作品である事に対して不服を申し立て支払いを拒否。すると、Nifty Gatewayは彼のアカウントを凍結。そのアカウントには、数十万ドル相当のNFTが含まれていると言われている。Soleymaniは、今回のようなランク付けされたオークション形式の条件は「不公正であり、入札者を拘束するものではない」と訴えている。(artnet news)

▍NFTが日本のマンガ・アニメをアートに変える

ブロックチェーンNFT証明書発行サービスを採用
(画像=ブロックチェーンNFT証明書発行サービスを採用)

画像引用:https://asia.nikkei.com/
漫画「ONE PIECE」の出版社である集英社は、同作品の中から10の名場面を選び、活版印刷作品へと仕上げ、9月25日〜10月3日の間に各16-20枚の限定版の抽選販売を行った。1枚約50万円という価格にもかかわらず、2日間で3,000件を超える応募があったという。このプロジェクトでは、その価値を保証し、次の世代へと引き継いでいくために、スタートバーン 株式会社のブロックチェーンNFT証明書発行サービスを採用。それぞれのプリントには、ICタグ付きの紙の証明書が付属し、所有者はスマートフォンでタグを読み取ることで、作品がいつ取引されたかを知ることができるようになっている。(NIKKEI Asia)

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文:ANDART編集部