「金持ち企業」をランキング化している企業がある。企業格付け会社のリスクモンスターだ。現預金から借入金などを差し引いた「Net Cash」で順位付けを行い、最新版では任天堂が3回連続で1位に輝いている。2位以下にはどのような企業がランクインしているだろうか?
リスクモンスターの第10回「金持ち企業」ランキング
Net Cashについてもう少し詳しく触れておく。日本会計基準と国際財務報告基準で若干算出の方法が異なるが、リスクモンスターの報道発表によれば、日本会計基準の場合は現預金から以下の項目を差し引いて算出している。
・短期借入金
・長期借入金
・社債
・1年以内返済の長期借入金
・1年以内償還の社債
・割引手形
では、早速ランキングを紹介していこう。ランキングの推移が分かるように、2021年8月に発表された第10回だけではなく、第9回と第8回のランキングも共に示した。
ちなみに、第10回のランキングでは、2021年6月2日時点で開示されていた2020年4月期決算以降の最新決算を分析しており、3,286社が調査対象となっている。
1位は任天堂、TOP10のうち6社が製造業
冒頭触れた通り、任天堂が3年連続で1位に輝いている。任天堂に続くのが信越化学工業で、こちらも3年連続で2位だ。3位はユニクロを展開するファーストリテイリング、4位は空気圧機器大手のSMC、5位は自動車メーカーのSUBARUだった。
ファーストリテイリングとSUBARUは初のトップ5入りである。ちなみに、第10回のランキングではTOP10の企業のうち6社が製造業で、製造業が上位に多い傾向はこれまでと特に変わっていない。
補足すると、TOP10外で大きく順位を下げた企業としては、オリエンタルランドや日本航空が挙げられる。ディズニーランドの運営会社であるオリエンタルランドは前回の20位から598位に、日本航空は29位から2,965位へと順位を落とした。コロナ禍による業績悪化が背景にある。
任天堂が3年連続で1位に輝けた理由は?
なぜ、任天堂は1位に輝けたのだろうか。簡単に言えば、現預金の金額が多い上、借入金や社債などの「有利子負債」がゼロだったことが挙げられる。つまり、任天堂は無借金経営を実現しつつ、貯金も多い企業ということだ。
以下が上位5社の現預金と有利子負債の金額の一覧だ。
さらに、TOP10内の企業では産業用ロボット大手のファナックも有利子負債がゼロで、無借金経営を実現している。また、現預金額では任天堂よりもセブン&アイホールディングスの方が多いが、セブン&アイホールディングスは有利子負債も多いため、9位に甘んじている。
第11回、第12回のランキングにも注目を
金持ち企業になるためには、そもそも業績がいいことが条件だ。例えば、任天堂はコロナ禍の巣ごもり需要もあってゲーム事業が好調で、危なげなく1位の座をキープしている。一方でオリエンタルランドや日本航空はコロナ禍で業績が悪化し、大きく順位を下げた。
そして第11回、第12回のランキングがどのような結果になるのかも、非常に気になるところだ。仮に、コロナ禍がほぼ収束すれば、次は巣ごもり需要が減り、外出する人が増える。そうすれば、任天堂は順位を下げ、オリエンタルランドなどは順位を上げるかもしれない。
文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)