解雇理由証明書とは?従業員から提出を求められたらどうする?
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従業員の解雇については労働基準法でルールが定められており、解雇の正当な理由が必要となる。経営者ならば、解雇した従業員から「解雇理由証明書」の提出を求められることもあるだろう。今回は、解雇理由証明書の交付時期や期限、従業員が解雇理由証明書を求める理由や作成するときの注意点などについて解説する。

目次

  1. 解雇理由証明書とは何か
    1. 解雇理由証明書の交付請求時は遅滞なく発行する
  2. 解雇理由証明書の交付時期
  3. 解雇理由証明書の期限
  4. 解雇理由証明書の書き方
  5. 従業員が解雇理由証明書を求める理由2つ
    1. 1.解雇理由が知りたい
    2. 2.不当解雇として訴える予定である
  6. 解雇理由証明書を作成するときの注意点2つ
    1. 1.第三者から見られる前提で作成する
    2. 2.根拠になる就業規則の条文を明示する
  7. 労働問題に詳しい専門家に相談することも選択肢のひとつ

解雇理由証明書とは何か

解雇理由証明書とは、会社が従業員を解雇した理由などについて記載した書面のことだ。一般的には、以下のような項目を記載するが、法的に定められた様式は存在しない。

・解雇する従業員の名前
・解雇を通知した日付
・解雇理由証明書の発行日
・事業主氏名又は名称
・使用者職氏名
・解雇理由

解雇理由証明書は、『解雇通知書(解雇予告通知書)」や『雇用保険の離職票」とは別に発行する書面である。なお、『解雇通知書』は、解雇日の30日前までに予告するように、「労働基準法第20条第1項」に定められている。

第二十条 使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。

解雇理由証明書の交付請求時は遅滞なく発行する

解雇理由証明書は、従業員を解雇した際に必ずしも交付する必要はない。しかし、解雇された労働者から請求があれば、遅滞なく交付しなければならないことが、「労働基準法第22条第1項」に記載されている。

第二十二条 労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあつては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。

また、労働者から解雇予告をした後に、予告期間中に解雇理由証明書の請求があった場合も遅滞なく交付する必要があることが、「労働基準法第22条第2項」に記載されている。

② 労働者が、第二十条第一項の解雇の予告がされた日から退職の日までの間において、当該解雇の理由について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。ただし、解雇の予告がされた日以後に労働者が当該解雇以外の事由により退職した場合においては、使用者は、当該退職の日以後、これを交付することを要しない。

解雇理由証明書の交付を請求できるのは、正社員だけとは限らない。「労働基準法第9条」が適用されるため、契約社員やパート、アルバイト、試用期間中の従業員などから請求された場合でも、解雇理由証明書を交付しなければならない。

第九条 この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。

解雇理由証明書の交付を請求されたのにも関わらず発行しない場合、「労働基準法第120条第1項」に則って、「30万円以下の罰金」が課せられる可能性がある。解雇理由証明書は経営側から積極的に交付する義務はないが、解雇された従業員から交付を求められれば、原則として対応必須と覚えておこう。

解雇理由証明書の交付時期

解雇理由証明書は、従業員から交付の請求があれば、「労働基準法第22条第1項」に記載されているように遅滞なく交付しなければならない。

明確な日数は定められていないが、従業員の解雇が裁判になってしまった場合、解雇理由証明書の交付に応じなかったり、交付が大幅に遅れていたりしたら、非常に心証が悪い。解雇理由証明書の交付請求があれば、従業員にも発行日の目安を伝えた上で、速やかに対応したほうが良いだろう。

解雇理由証明書の期限

解雇理由証明書の請求権は、「労働基準法第115条第1項」によると、2年で時効となる。

第百十五条 この法律の規定による賃金の請求権はこれを行使することができる時から五年間、この法律の規定による災害補償その他の請求権(賃金の請求権を除く。)はこれを行使することができる時から二年間行わない場合においては、時効によつて消滅する。

したがって、従業員を解雇してから2年以上の期間が経過しているならば、解雇理由証明書の発行を求められても応じる必要はない。とはいえ、請求者との関係性や解雇理由、ステークホルダーへのレピュテーションリスクなどを勘案し、応じるか否かを判断しよう。

解雇理由証明書の書き方

解雇理由証明書を書く際には、解雇理由はできるだけ具体的事実を踏まえた上で、正確に記載しよう。もし、解雇理由証明書の交付後に解雇に関する裁判をすることになれば、解雇理由証明書に記載されている内容が大きな意味を持つ。解雇理由証明書に記載された解雇理由と別の理由を裁判で主張することは事実上難しいため、正確な記載が必要だ。

また、解雇理由証明書に従業員が請求していない事項について記入することは、「労働基準法第115条第1項」で禁止されている。

③ 前二項の証明書には、労働者の請求しない事項を記入してはならない。

解雇理由証明書に法的に定められた様式は存在しないが、公的機関がフォーマットをインターネット上に掲載している場合があるので、参考にするとよいだろう。

<参考フォーマット1:大阪労働局>
https://jsite.mhlw.go.jp/osaka-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/hourei_youshikishu/youshikishu/_120080.html

<参考フォーマット2:厚生労働省>
https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/library/tokyo-roudoukyoku/standard/relation/22.pdf

従業員が解雇理由証明書を求める理由2つ

従業員が解雇理由証明書を求めるのには、どのような理由があるのだろうか。

1.解雇理由が知りたい

従業員が解雇理由証明書を求める時点で、解雇に対して一定の不満を持っていることが想定される。解雇の理由が納得できないものであれば、裁判に持ち込まれてしまう可能性もあるだろう。解雇した従業員に不当解雇であると主張されないように、しっかりと解雇理由証明書を作成し、速やかに交付しよう。

2.不当解雇として訴える予定である

不当解雇を理由として会社を訴える予定の者も、解雇理由証明書の発行を求めてくる。裁判所に提出する証拠として、解雇理由証明書を求めてくるパターンだ。

従業員の解雇理由が会社都合や事業縮小などの場合は、特に問題になりやすい。解雇理由に該当すると判断している事象を正確に記載し、それらと解雇の根拠になる就業規則の条文と関連付けるように記載すると良いだろう。

解雇理由証明書を求めてくるだけでは、その従業員がどのような狙いを持っているかは計り知ることはできない。会社としては、従業員が請求していない事項について記入を避けた上で、できるだけ具体的事実を正確に記載して速やかに交付するようにしたい。

解雇理由証明書を作成するときの注意点2つ

解雇理由証明書を作成する際は、どのようなことに注意すれば良いのだろうか。ここでは、解雇理由証明書の作成時のポイントを2つ解説していく。

1.第三者から見られる前提で作成する

従業員が解雇理由証明書を求めてくる時点で、解雇に対して一定の不満を持っていることが想定され、交付した解雇理由証明書を裁判所や調停機関が見る可能性は高い。したがって、「会社の内情や文化を理解していない第三者も見る」という前提で、解雇理由証明書を作成することが重要だ。

解雇理由証明書は会社側が作成するため、どうしても自分たちの主観で作成してしまいがちだ。「客観的に見たらこの内容は第三者にどう映るだろうか」と自問自答することが重要だ。場合によっては、外部の専門家に確認してもらうと良いだろう。

2.根拠になる就業規則の条文を明示する

労働基準法では、根拠なき解雇を行うことは禁止されている。解雇の根拠が適切であるか否かは別途議論が必要だが、少なくとも解雇理由証明書には、解雇の根拠になる就業規則の条文を明示しよう。

ただし、中小企業のなかには、しっかりと就業規則が整っていない、存在していても従業員に周知できていないケースもあるかもしれない。そのような時は、就業規則の中に解雇の理由となるケースを記載しておき、該当する理由を示すと良いだろう。

労働問題に詳しい専門家に相談することも選択肢のひとつ

解雇理由証明書は、会社がどのような理由で従業員を解雇したのかを記載した書面のことであり、期限内に交付を請求された場合は、速やかに応じる義務がある。ただし、従業員が解雇理由証明書を求める時点で、解雇に対して不満を持っていることも想定されるため、慎重かつ丁寧な対応が必要だ。

解雇・退職問題については、弁護士などの労働問題に詳しい専門家に相談することもひとつの選択肢だろう。特に中小企業の場合は、労務や法務の部門がしっかりと整っていないことも多い。

外部の専門家を活用すれば費用がかかるが、もしうまく対応できずに裁判が長期化すれば、多大なコストがかかったり、ステークホルダーに会社のあらぬ悪評が広がったりするリスクもあるため、結果的には高い費用ではないという考え方もできるだろう。

文・THE OWNER編集部

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