MA Channel:ちょっとためになるコラム
(画像=MA Channel:ちょっとためになるコラム)

アメリカで1980年代に誕生したサーチファンドが日本でも黎明期を迎えています。日本M&Aセンターと日本政策投資銀行、キャリアインキュベーションが出資して2020年にサーチファンド・ジャパンが設立されました。サーチファンドとは、経営者を志す人材(サーチャー)と後継者不足に悩む企業をファンドがつなぐ第三者承継の新しい形です。起業と出世以外の第三の経営者へのステップとなり、後継者不在のオーナー社長にとっては“後継者の顔が見える”事業承継として期待されています。2021年5月からサーチファンド・ジャパン初の専任サーチャーとなった大屋貴司氏にお話を伺いました。

経営者と企業との出会いがモチベーション

サーチャーとして全国のオーナー社長との面談や企業探しの日々を送っている大屋氏。約半年間の活動期間を振り返り、「経営者を目指している多くの人々から興味を持ってもらえています。継ぎたいニーズは確実にあります」と語ります。ただ一方で、「オーナー社長さんからは『サーチファンドって何ですか』と質問され、認知獲得のため仕組みを繰り返し説明している状況です。ただ何よりオーナー社長さんとお会いできる機会が大変ありがたいと感じています」と手ごたえと課題を分析します。これまでの活動では最終合意には至らなかったものの、事業承継に向けた交渉も経験し、「オーナー様の第一候補にはならなくても複数の選択肢のうちに入れてもらえたことは次につながります」と、一歩ずつ着実に進んでいます。

日本でサーチファンドを広めるために

大屋氏は事業会社やコンサルティング会社、広告会社で多様なキャリアを歩んできました。
機械部品メーカーでは営業や商品開発、海外拠点の立ち上げなどビジネス全般の実務を経験し、コンサルティング会社では経営幹部として出向し、外食チェーンや運送会社で業績改善の成功体験を積み重ねてきました。その中で、「全国には素晴らしい中小企業がたくさんあり、それぞれの地域で経済と雇用を支えています。自分も今までの経験を活かして、経営者としてもっと踏み込んで貢献していきたい」と、新しいサーチャーとして挑戦を決断しました。単なる個人の自己実現だけではなく、「日本にサーチファンドを根付かせるためにも私が実績を残すことが重要だと考えています」と、高い使命感がサーチャー活動の原動力になっています。

現場第一主義で企業を成長に導く

ビジネスパーソンとして常に現場、現物、現実を直視する経営手法の「三現主義」を心掛けてきたという大屋氏。年商80億円の中堅外食チェーンに経営幹部として出向した際には、店舗内のオペレーション改善に取り組み、マーケティングで新たなターゲット層にアプローチするといった取り組みを進めました。その結果、企業は赤字体質から脱却し、最高益を出すなど業績は回復しました。「会議室にこもって考えることよりも、現場を見て回って仲間と手足を動かすことを大切にしてきました」と強調します。サーチファンド・ジャパンの公募で数百人のサーチャー候補から選ばれた実績と人柄のほか、新しいサーチャーという職業を日本に広めるようとする熱い思いも持ち合わせています。「今までのキャリアで培ってきた経験を活かせて、さらなる成長の可能性を秘めた企業と一緒に成長していきたいです」と大屋氏。後継者不足に悩む経営者に向けて「第三者承継をお考えで、お目当ての候補が現れていない経営者の方に是非ともお声掛けいただきたいです。顔の見える関係を築き、安心して後継者に選んでもらえる提案活動をしていきます」と、これからも全国を奔走します。

大屋貴司(おおや・たかし)

1976年生まれ、山梨県出身。東京大学卒業。大手広告会社を経て、機械部品メーカーとコンサルティング会社で勤務。外食チェーンと運送会社の経営に参画し、業績回復に尽力。2021年5月からサーチファンド・ジャパンの専任サーチャーとして活動中。

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