MA Channel:ちょっとためになるコラム
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ASEANにおける中進国であるタイ。戦禍が続いた19世紀から欧米の植民地とならずに独立を守り抜いた歴史が今も国民の誇りとなっています。国民の国王家への敬愛の念が深く、僧侶への敬意も深い仏教大国の一面もあります。「マイペンライ(大丈夫)」の言葉に代表される「微笑みの王国」をご紹介します。

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世界的な製造国を実現したタイ

アジアのデトロイトと評される自動車産業の一大集積地として製造業が盛んです。日本企業のASEANサプライチェーンの要ともなっています。低廉な人件費を武器に発展した世界有数の製造国として知られますが、タイはASEANの中でシンガポールに次いで2番目に高齢化が進んでいます。失業率が低いことから人材の確保が難しく、産業の高度化も課題とされています。そのため日本の高い技術力・省力化がタイで役立つことは間違いなく、製造業で高い付加価値を生み出すためにM&Aによる資本業務提携は今後も増えると予想されています。

巨大な日本人マーケット

1960年代に日本の自動車産業が進出し、電機、電子、機械などが製造拠点をタイに整備しました。その過程でバンコク周辺を中心とした巨大な日本人マーケットが出来上がりました。現在でも在留邦人はASEANの都市で群を抜いて多い数字となっています。関連して日系のサービス業もバンコクに進出しており、飲食業や小売業の市場はすでに飽和状態だと言われています。そういった業種での新規参入は現地のローカルマーケットへの営業展開がなければ業容拡大は難しく、ブランド力とマーケティング力があり、商習慣に精通している現地企業をM&Aで獲得することが近道だと考えられています。

後継者不在による日本人オーナーの企業売却が増加

タイのM&Aは海外企業がタイ企業を買収するケースは年間20~30件程度だとみられています。売却理由は経営者の高齢化と後継ぎ不在が多く、新たに相続税や贈与税が導入されたことも今後増加要因になり得ます。今後はそのような事業承継を目的としてM&Aはさらに増えていくと予想されています。日本企業によるタイ企業のM&Aは公表ベースで年間15件程度。買収金額は10億円以上が多く、上場企業による買収が主流となっています。なかでも特徴的な点は日本人がオーナーを務めるタイ企業が売却を希望する例が増えていることです。業種は建設、コールセンター、部品製造など多種多様で日本語ができる人材も多く、M&A後のPMIも成功する確率が高いと考えられています。
タイ企業をM&Aで買収する際の注意点を簡単にまとめると

(1)外資規制
(2)労働法の改正
(3)全法人監査の原則

の3つが挙げられます。製造業には外資規制はありませんが、非製造業は外国人事業法によって株主取得などで制限を受けます。また、全法人監査を受けていますが、監査済みと呼べない事象も多いため、安心するのは禁物です。タイ特有の法律や商習慣を理解し、タイ語を学んで現地スタッフと綿密なコミュニケーションを図ることは、タイビジネスを成功させる鉄則となります。

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(日本M&AセンターがASEAN M&Aのノウハウを紹介 / 画像=MA Channel:ちょっとためになるコラム)
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井 直大(い・なおひろ)
海外事業部 ASEAN推進課 シニアディールマネージャー タイ王国担当
新卒で日本M&Aセンターに入社。2018年にシンガポールに赴任し、現地の会計事務所ネットワークを構築。タイの中堅・中小企業と日本企業の海外M&A支援を担当。バンコクで海外拠点開設の準備に従事。
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