MA Channel:ちょっとためになるコラム
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日本M&AセンターはASEANにおいてシンガポールに次ぐ第二の拠点として、2019年10月にインドネシア駐在員事務所を開設しました。将来のGDP大国として、ASEANの中でも特に大きい成長が期待されるインドネシアのM&Aについてご紹介します。

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ASEANの大国・インドネシア

クロスボーダーM&Aの中でも今後成長が見込まれ、注目されているASEAN。そのASEANの中で、将来の大きな成長が期待できるのが、ベトナム、インドネシア、タイ、フィリピンの4ヵ国です。その中でもインドネシアは、面積、人口、天然資源、産業のポテンシャルを持った大国で、経営者らが「大きな夢」を見るにふさわしい国です。南国特有の人なつこさやゆったりとした生活のリズムからは、「大きな夢」の実現を急がない悠然とした空気も漂っており、インドネシアのポテンシャルの高さを感じさせます。

将来のGDP大国

インドネシアは2018年にGDP1兆ドルを突破しました。ASEANではタイの2倍強を誇り断然トップでASEANの3分の1を占めます。ちょうど日本の5分の1ほどのスケールとなります。年間成長率はコロナショック前までコンスタントに5%前後の水準で推移しており、「インドネシアの成長率は高い」というイメージが世界的に定着しています。国民の平均年齢も29歳と若く、生産年齢人口(15~64歳)も長期的に増加。「高い成長率」と「人口増」はもたらすのはASEANナンバーワンの経済規模の拡大です。2050年には日本を追い越し、世界第4位のGDP大国となることが予想されています。日本の中堅・中小企業の海外M&Aによる進出先としても大きく注目されています。

外資企業誘致でさらなる経済成長へ

インドネシアではASEANを代表する世界屈指のメガシティであるジャカルタをはじめ、あらゆるインフラ整備を急いでいます。インフラ基盤が整うことにより、外国からの企業進出が増え、自国民の雇用が進み、国民の生活レベル向上に結びつくためです。
外資企業を誘致することで生まれるもう一つの効果は、貿易収支の赤字改善です。インドネシアの経常収支は慢性的な赤字体質で、その主な原因は輸入額の多さにあります。中間所得層の増加に合わせて輸入品が増え、石油、天然ガスなどの天然資源を柱とする輸出ではまかないきれず、赤字を解消するため直接投資のような長期にわたり安定資金が入ってくることが最適と考え、外国資本を取り入れることを考えています。

M&Aのハードルは高めだが、親日国で日本企業の親和性は高い

インドネシア企業と日系企業とのM&Aは、2000年代に入って約200件に上り、年間約10件のペースで推移しています。買い手である日系企業は、8割近くが上場企業か上場企業の海外法人、残りが非上場企業で、M&A案件のトレンドとしては、資源系から製造業、そして近年ではサービス業へと変化してきています。 売り手の事情はまちまちで、後継者不在のケースが多いですが、事業を拡大するうえで金利の高い地元金融機関から借り入れるより外部から資本調達したいというケースや競争激化で資金繰りが厳しく、新たなパートナーを探したいといったケースもあります。実際にインドネシア企業とM&Aを実施するとなると比較的難易度は高いといえます。

具体的には
(1)会計書類の信用度が低い
(2)法整備が不透明
(3)外資規制
(4)土地の所有問題
(5)労働法など高いハードル

以上、5点が挙げられます。一見、これらをみるとインドネシア進出に腰がひけてしまうイメージを持たれるかもしれません。しかし、日本企業との親和性が非常に高く、また2020年11月の雇用創出のためのオムニバス法成立により、外資規制はほぼ撤廃されました。アフターコロナを見据え、多くの日本企業がインドネシアでのM&Aに挑戦しています。高い経済成長を続ける国であることから、いったん成功したあとの果実が大きく、メリットとデメリットのバランスを取りながらM&Aを実施することが重要となります。

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(日本M&AセンターがASEAN M&Aのノウハウを紹介 / 画像=MA Channel:ちょっとためになるコラム)
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安丸 良広(やすまる・よしひろ)
海外事業部ASEAN推進課 インドネシア駐在員事務所長
総合商社、監査法人を経て2002年に日本M&Aセンターに入社。前身である海外支援室の設立に参画。M&Aの成約数は100件を超え、19年にインドネシアオフィスの設立に携わる。米国公認会計士(USCPA)。
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