【所長たちのホンネ座談会 Part2】経営者がやるべきことは仕組みづくりと人材創出
(画像=プロパートナーONLINE)

職員の先頭を走り、自ら道を切り拓いていく所長たち。
「経営者としてのモチベーションは何か?」
「モチベーションが下がったらどうする?」
「所長の仕事とは?」など、
普段は聞けないホンネに迫る座談会を開催。

税理士法人SS総合会計の鈴木宏典氏、
社会保険労務士法人リライエの石田隆利氏、
税理士法人阿比留会計事務所の阿比留一裕氏、
スクエアワン株式会社の石川和司氏の4名が語り合います。

〔司会〕株式会社アックスコンサルティング コンサルタント

所長のモチベーション
自分の運命に責任を持つ独立した存在が楽しい

司会 時には、「今日は仕事をしたくないなぁ」と感じたり、気持ちの浮き沈みもあると思います。
どのようにケアしていますか?

石川 〝自分の運命をコントロールできる状態〞にあることが、すごく重要だと思っています。
経営者は、「嫌なら断ればいい」「信条に合わないから断る」というのが、自分の責任でできる。
私の場合、そういった独立した存在であることが、自分を解放してくれて、楽にいられるので、
仕事へのモチベーションが上がる要素になっている気がします。

鈴木 多くの人は、自分に降りかかった困難を外部のせいにしてしまうと思うんです。
石川先生はすごくハードルの高いことを実践されていて、素晴らしいですね。

石田 私自身は、モチベーションが下がろうが、「仕事だからやる」 という感じですが、
職員が成長したり、変わった瞬間を見ると、やる気は出ます。
阿比留先生のモチベーションも聞いてみたいです。

阿比留 私は子どもの頃から、やる気のなさに定評がある人間でして......。
〝モチベーションややる気に依存しない仕組みをつくる〞 という路線で生きています。
例えば集客も、自分が頑張らなくても提携先から自動的に紹介がくる仕組みになっています。
スタッフの仕事も仕組み化しているので、こと細かに指示は出しません。
むしろ、「所長の工程、早く終わらせてください」と職員から圧がかかるくらいです。
案件も業務も、来てしまったらやるしかないので、 やります(笑)。
モチベーションによって成果がぶれるという状態が嫌なので、
機能的な仕組みを構築するプロセスが好きなんです。
なので、モチベーションを上げるとか維持するという発想がそもそもないですね。

司会 モチベートが必要な人、仕組みがあれば自然にできる人、両方のタイプがいますよね。
鈴木先生は、どのように情熱を持ち続けているのですか?

鈴木 私は、仕事そのものが好きなんです。
お客様と話したり、経営塾の塾生に響いている感じだったり、自分が役に立って、
みんなの関係性が変わる仕事そのものがモチベーションになっています。
もちろん眠い朝もありますが、 やっているうちに楽しくなっちゃうんですよね。
お客様への価値提供そのものを、魅力に感じているのだと思います。

石川 経営者は、仕事とプライベートの境目があまりない人が多いように思います。
仕事のことを考えないようにする方が、かえってストレスなのかもしれません。

組織と人材の育て方
顧客満足を軸に従業員満足を考える

司会 経営者として、職員さんの成長や動機づけについてはどのように考えていますか?

石田 以前、お客様から「あなたはもう来なくていい。
スタッフさんが来てくれたら十分だから」と評価されたときには、
これを繰り返せたら業界も地域も良くなっていくだろうという希望につながりました。

司会 一方、阿比留先生は......

阿比留 育てる気がないですから(笑)。それぞれの調子や個性による振れ幅をなくして、
常に一定のクオリティを提供し続けられる仕組みにしています。
なので、採用のときは、「何も教えないし、成長させる気もない」ということを伝えます。
妙にやる気のある人ではなく、
毎日決まった仕事をこなすことにモチベーションを感じられる人を採用したいので。

石川 一貫した姿勢がすごいですね。私自身は「飲みながら話そうか」など、
ある意味昭和的な感情マネジメントをしている傾向があるのですが、
「果たしてそれが本当にお互いのためになっているのか」と、いま思いました。
リー ダーって孤独な面があって、それを会社や事務所で埋め合わせしているような気がします。
こちらがよかれと思ってやっていることが、
実は自分の満足にしかなっていないこともありそうです。

司会 鈴木先生は、パートさんを担当者レベルに成長させていく、ということをされていますね。

鈴木 私は阿比留先生と逆ですよ。
成長やお客様への価値提供こそが、エンゲージメントを高める要素だと思っています。
CS(顧客満足) を軸にしたES(従業員満足)じゃないと意味がない。
お客様に価値提供するための型があって、
それを乗り越えて成長することが一番のモチベーションになるんです。
自立型人材の育成には3つの要件があって、まずはしっかりした型をつくること。
次に、目的・理念をはっきりさせること。
最後に、できたら承認、できなかったらダメだったことをきちんとフィードバックする。
お客様への価値提供が一番崇高で、それを実現する仕組みを会社としてつくる、
モチベーションとシステムを両立することが重要です。

司会 人としての関わりだけでは依存関係になってしまうので、
仕組みやレベルアップの目安をつくるということですね。

鈴木 人は結局、仕事ができるようになればモチベーションも上がるのだと思います。
単に昇給や福利厚生を充実すればいいのではなく、
自分の業務と組織の理念が結びついていることが大切だと考えています。

所長の役割
ビジネスモデルの構築と最後の砦としての安心感

司会 経営者は、プレーヤーとして困難な局面を乗り越えたり、
ビジネスの仕組みをつくったり、仕事の幅が本当に広いですね。
そのなかでも、所長として絶対に外せない仕事とは何でしょうか?

阿比留 ビジネスモデルをつくることです。
誰をターゲットに、どんな付加価値を提供し、どういう仕組みで実行するか。
そして、お客様やスタッフとして、どんな人を受け入れて、排除するか。
その部分は経営者にしかできません。
所長が頑張って申告書を書くより、
事務所に合わないお客様を1件解約してくれた方が、スタッフは喜ぶ気がします。

石川 志を同じくする、優秀な人財を集めることでしょうか。
高収益な体質をつくるためにも、人財は重要です。

石田 私が従業員だったら、経営者には最後の砦であってほしい。
心が折れそうなとき、「あの人がいれば大丈夫」という存在。
そういう意味で、私も早く本当の経営者になりたいです。

鈴木 やはりビジネスモデルの策定でしょう。そして、理念策定と浸透
私の場合はプレーヤーも兼務しているので、
一つくらいは誰にも負けないものがあってもいいと思っています。
石田先生がおっしゃっていたように、「さすが所長」と頼られる存在になりたいです。

司会 最後に、ほかの先生に聞いておきたいことはありますか?

鈴木 石田先生に、社労士としてのビジョンを聞いてみたいです。

石田 地方は若者の減少が顕著です。コロナ禍で、さまざまな変化もありました。
「全国の田舎の労働環境を変える先導者になる」というのが、最近の経営理念です。
いまは、学びの場を提供する学校も開催しています。

鈴木 うちも社労士をかかえていますが、それぞれ特徴が出るものですね。
阿比留先生は、次の計画は何かありますか?

阿比留 税理士を雇おうかな、と思っています。私の実務を引き継ぎたいのと、
将来父が引退して税理士が減ると、法人でなくなりますから。
あまり心踊る計画ではありませんが(笑)。

司会 これからも定期的に、皆さんの動向を知りたいですね。
今日は起業家としての力強い原動力を垣間見ることができました。
ありがとうございました。

※月刊プロパートナー2021年5月号より抜粋

プロフィール
鈴木宏典氏
税理士法人SS総合会計 代表税理士
2017年、事業承継により代表に就任。60名超のスタッフを率いる。MAS監査の導入や後継者向け経営塾「経営輝塾」などで顧客を幅広くサポート。パートスタッフ育成にも定評があり、会計事務所向けセミナーでの講演実績も多数。

石田隆利氏
社会保険労務士法人リライエ 代表
20歳からの10年間で社会保険労務士のほか、建築士や土地家屋調査士など10の国家資格を取得。2009年に30歳で社労士事務所を開業。顧問先の従業員向け研修などを提供するほか、「田舎の社会人学校」など地域の発展に貢献するサービスを展開。

阿比留一裕氏
税理士法人阿比留会計事務所 代表社員
税理士・公認会計士。大手監査法人、地方銀行に勤務後、2009年に開業。個人事業の美容業・飲食業に特化し、融資サポート、パッケージ型の税務サービスを展開。小規模事務所でも高い生産性を実現する独自のビジネスモデルを構築。

石川和司氏
スクエアワン株式会社 代表取締役
司法書士・宅地建物取引士。2001年開業。「会計事務所サポートサービス」を開発し、多くの会計事務所と連携。行政書士業務、社労士業務、M&Aアドバイザリー、不動産コンサルティングなど複合的なサービスで幅広いニーズに応えている。
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