税理士が作った経営者の教科書,労務編,就業規則,36協定
(写真=Monkey Business Images/Shutterstock.com)

さて今回は「就業規則」と「36協定」というものについて考えてみたいと思います。

「就業規則」

あまり耳にしない言葉ですよね。

「大きな会社で作るもんでしょ?」
「なくても罰則がないなら、いつか作ればいいんじゃない?」

いえいえ、違うんです!

この「就業規則」、実は会社を守るために非常に重要な働きをするものなのです。

まず「就業規則とは何か?」から考えてみましょう。

就業規則

就業規則というのは従業員さんの労働条件を明らかにするために、会社が従業員の代表と一緒に作る社内ルールのことです。

従業員が10人を超えると、この就業規則を労働基準監督署に提出することが義務付けられています。

「10人」にはパートやアルバイトも含まれます。

ちなみに従業員が10人以下でも就業規則を作ることは勿論できます。

10人以上で「義務」になるということです。

就業規則には絶対に記載しないといけない内容と、記載が任意の内容があります。

絶対に記載しないといけない内容は、

始業時間と終業時間
休憩時間
休日
賃金の計算の仕方、支払い方、支払い時期、昇給の仕方
退職(解雇事由を含む)

などがあります。

特に解雇についてのルールを決めておかないと、実は解雇をする事もできないのです。

ルールなしに社員を解雇した場合、労働基準監督署や裁判所に駆け込まれでもしたら、負けてしまう事になります。

また解雇以外についても、就業規則がない状態で労働者と会社との間に労使問題が発生したときは、労働基準法を厳しく適用されてしまいます。

こういった意味で就業規則は会社を守る重要な役割を果たしています。

さて就業規則に任意でも記載しておくと良い内容としては、

 解雇の定め
 固定残業の定め

などがあります。

最近は精神的な病などで会社に来れなくなったりする人が増えていますが、基本的には就業規則にルールがなければ辞めてもらうことはできません。

また未払残業代対策として「固定残業制」も最近は多く取り入れられています。

「固定残業制」は、残業時間に関わらず残業代として定額を支給するというものです。

就業規則で固定残業代を定めておき、給与明細で分けて記載をしておくことで会社を守る一助になります。

ただし注意しておくべきことは、実際の残業代を計算した際に固定残業代を超えたときは、超えた分を支給しないといけません。

固定残業代を定めておけばいくら残業しても大丈夫、というわけではないのです。

万が一未払い残業代で訴えられたときに、超過分だけが対象となるという意味で、会社を守ることになります。

これら以外にも就業規則は会社を守る条項を、労働基準法の枠内で盛り込むことができます。

実際には就業規則というものは、「経営者が会社をどのようにしたいか」によって千差万別です。

ネットに無料で落ちている就業規則のひな形では、経営者の意思を正しく反映することはできません。

さて就業規則と絡めて、もう一つ知っておいて欲しいことがあります。

「36協定」というものです。

36協定

「36協定」というのは経営者と従業員の間で結ぶ協定のことで、残業や休日出勤をするために必ず必要なものなのです。

この「36協定」がなければ、法的には残業もさせることができないのです。

ちなみに「36」というのは労働基準法第36条による協定だからです。

この36協定を締結し労働基準監督署に届け出ることによって、時間外・休日労働が可能となるのです。

36協定では、

時間外労働をさせる必要のある具体的事由
時間外労働させる必要のある業務の種類
時間外労働をさせる必要のある労働者の数
1日について延長することができる時間
有効期間

などについて定めなければなりません。

ちなみに就業規則に残業の定めがあっても、36協定がなければ残業はできません。

就業規則に時間外・休日労働させる旨を定めることと、36協定を締結し届け出ることは別問題なのです。

就業規則を作ると同時に36協定も作成するようにしましょう!

さて今日は就業規則と36協定について考えてきました。(提供:ベンチャーサポート税理士法人