税理士が作った経営者の教科書,労務編,給料計算の仕方
(写真=Roman Samborskyi/Shutterstock.com)

給料計算については知っておいていただきたいことがたくさんありますので、2回に分けてご紹介します。

予定としては、
前編・・給料計算の基本
後編・・天引きできないもの、最低賃金、1週間で辞めた人の給料
の順にご説明をしていきます。

今回は前編です。

まずは「給料計算の基本」からです。

給料については「賃金支払い5原則」という大きな原則をまず知ってください。

「賃金支払い5原則」とは次の5つのことです。

①通貨払いの原則・・現金での支給が基本。労働協約に定めがあれば現物支給も可能
②直接払いの原則・・本人への支払う必要があり、代理人への支給は認められない
③全額払いの原則・・積立や貸付金の返済など給料の一部を控除することは認められない。
④毎月1回以上払いの原則・・月の1回以上は支払わなければいけない
⑤一定期日払いの原則・・毎月決まった日に支払わなければいけない

「原則」と小難しそうな言葉が付いていますが、内容は当たり前のことばかりです。

ひとつだけ補足説明をさせていただきます。

よく「締め日と支給日はどうすればいいですか?」というご質問をいただきます。

この質問にお答えする際に考えるのが、④の「毎月1回以上払いの原則」です。

つまり締め日から1ヶ月以上支給を延ばすことはできませんので、それさえ満たせばいつでも大丈夫ということです。

ただし締め日から支給日までが短すぎると、残業代の計算の時間などが厳しくなりますので、5~10日は時間を取っておくことをお勧めします。

この5原則を踏まえた上で、実際の支給について考えてみましょう。

給料を決めるときに考えておきたいのが、「どれくらいの給料を出せば良いのか」「残業手当や家族手当などを設定した方が良いのか」という点です。

まず「どれくらいの給料を出せば良いのか」についてですが、最低支給しなければいけない「最低賃金」以上であれば法的には問題ありません。(最低賃金については、第6回の「給与計算の仕方(後編)」でご紹介します。)

同業他社の状況や、従業員の方が納得するかどうかで決めることになります。

とはいえ、会社が一方的に有利な条件では従業員さんのモチベーションが上がらず、長期的には会社にマイナスになるでしょう。

大切なのは、社員のやる気をいかに引き出すか。いかに生産性を上げるか。

こういった点を考慮に入れて、決めてください。

次は「精勤手当」「住宅手当」などの「諸手当」についてです。

諸手当は「手当」という言葉が付いていますが、実質的にはすべて「お給料」として扱われます。

ですので、会社として基本給と分ける意味があるのであれば設定するのも良いですが、必要ないのであれば設定してもしなくても有利不利はありません。

ただし「残業手当」については少し留意が必要です。

実際の残業代を計算する代わりに、「残業手当」として毎月定額を支給する方法があります。

これを「固定残業手当制度」と言います。

「固定残業手当制」について勘違いしてはいけないのが、「残業手当を支払っていれば、割増賃金としての残業代は支払わなくても良い」という勘違いです。

実際に計算した時間外労働に対する割増賃金が固定の残業手当を越えている場合は、その差額を支払わなければいけないのです。

またこの制度を導入するためには就業規則に「残業手当が時間外労働の割増賃金に充当されること」を明示しておかなければいけません。

昨今、「未払い残業代」が社会問題になっています。

請求されると非常に大きな金額になることが多いため、残業代対策は十分にしておくようにしてください。

このようにして「いくら支払うか」が決まれば、次は給料から天引きするものの計算です。

給料から天引きするものは次の3つです。

源泉所得税
住民税
社会保険(厚生年金、健康保険、雇用保険)

まずは源泉所得税についてです。

天引きする源泉所得税の金額は、国税庁のHPなどにある「給与所得の源泉徴収税額表(月額表)」という表を見て計算します。

この「給与所得の源泉徴収税額表」の一部を次に載せていますので、実際の表を見ながら給料から天引きする「源泉所得税」の金額を計算しましょう。

サンプルとして、次のようなケースを考えます。

基本給:18万、残業代:5万、社会保険の本人負担額:3万円、扶養人数0人

(提供:ベンチャーサポート税理士法人