税理士が作った経営者の教科書,会計編,損益計算書
(写真=PIXTA)

前回は「貸借対照表って何?」というテーマでお伝えしましたので、今回は「損益計算書って何?」というテーマで進めたいと思います。

損益計算書とは簡単にいうと「売上がいくら上がって、経費がいくらかかって、最終的に利益がいくら残ったのか」を記載している書類です。

つまり、これは経営者であれば誰もが計算する「いくら儲かったのか」を示す資料ですので、イメージも付きやすいと思います。

とはいえ、損益計算書にはいくつかのルールがあります。

損益計算書も細かく言うとたくさんのルールがありますが、最初に押さえていただきたいルールは2つだけです。

まずはこの2つのルールを知れば損益計算書は読めるようになります。

その2つとは

1.収益や費用は発生のタイミングで計上し、お金の授受のタイミングではないこと
2.5つの段階に分けて利益を見ること

の2つです。

では1つずつ詳しく見ていきましょう!

1.収益や費用は発生のタイミングで計上し、お金の授受のタイミングではないこと

まずは「収益や費用は発生のタイミングで計上し、お金の授受のタイミングではない」についてです。

これは「いつのタイミングで収益や費用を計上するか」という問題についてです。

収益は経営者から見れば「入金のときに収益」と考えるのが普通ですよね。

お金を貰ってはじめて「売上」と考えるのは、経営上極めて健全で正しい考え方です。

ただ、会計のルールでは違うのです。

売上は物販であれば「商品を引き渡したとき」、サービス業であれば「サービスを提供したとき」に計上することになっているのです。

たとえばHP作成の会社であれば「HPを納品した日」が売上の計上の日ですし、ネット通販の会社であれば「商品を発送した日」が売上計上の日です。

逆に経費の方も「納品された日」「サービスの提供を受けた日」が計上のタイミングです。

たとえばクレジットカードで電話代などを払った場合は、引き落としがあった日ではなく、利用日が経費に計上するタイミングになります。

請求書を出した日付でもなければ、入金の日付でもない、「商品を引き渡したとき」、「サービスを提供したとき」に計上し、お金の動きとはタイミングがずれることがある。

これが1つ目のルールです。

2.5つの段階に分けて利益を見る

次は2つ目のルールの「5つの段階に分けて利益を見る」についてです。

損益計算書は売上から始まって、いろいろな経費を引いて利益を見ていくのですが、経費を5つの段階に区分して利益を見ていくことになっています。

最初は「売上」から「売上原価」を引いた「売上総利益(粗利益)」についてです。

「売上原価」に入る費用というのは「売上を上げるために直接必要な費用」のことで「売上を上げれば、連動して上がる費用」のことを言います。

例えば物販の会社の「仕入」は売上原価に該当しますし、「発送代金」や「箱代」なども売上原価に入ります。

HP作成の会社であれば、制作費のうち社外へ外注している部分は売上原価になります。

ネット通販などのインターネットで集客しているビジネスの場合、PPC代金などのネットの広告宣伝費も売上原価になると考えられるでしょう。

またコンサルタントのようなサービス業ですと売上原価が0で「売上=売上総利益(粗利益)」ということもありえます。

このように売上総利益(粗利益)が計算されるわけですが、「なぜ売上総利益(粗利益)を見る必要があるのか」については、後日「損益計算書の活かし方」で詳しくご説明します。

今日は簡単にだけご説明させていただきます。

売上総利益(粗利益)は「全ての利益の源泉」であり「商品やサービスの競争力を表している重要な指標」です。

経営者は売上総利益(粗利益)をコントロールすることが、経営上の重要課題になるのです。

では次は「営業利益」について見ていきましょう。

「営業利益」は上でご紹介しました「売上総利益(粗利益)」から「販売費及び一般管理費」を引いて計算します。

「販売費及び一般管理費」というのは「通常の営業活動から生じる費用」のことで、役員報酬や給料、法定福利費、旅費交通費、消耗品費、広告宣伝費、交際費、会議費、地代家賃など多くの費用が「販売費及び一般管理費」に該当します。

言い換えれば「経費のうち売上原価以外のもの」のほとんどが、「販売費及び一般管理費」になるといえます。

つまり「売上」から「売上原価」と「販売費及び一般管理費」を引いた「営業利益」というのは、「会社が本業でいくら儲けたか」を示す指標になるのです。

そういった意味でも「営業利益」は非常に重要な指標とお考えください。

次は「経常利益」についてです。

「経常利益」は「営業利益」に「本業以外の収益や費用(営業外収益、営業外費用と言います)」を加味して計算した利益のことです。

「本業以外の収益や費用」の代表的なものは「銀行の利息」などです。

ただ起業直後では営業外収益や営業外費用に該当するものは少なく、経常利益は営業利益とほぼ一致することが多いでしょう。

この「経常利益」に「臨時的に発生した収益や費用(特別利益、特別損失と言います)」を加味したものが「税引前当期純利益」と言います。

「臨時的に発生した収益や費用」の代表的なものは車などを売ったときの「固定資産売却益(固定資産売却損)」などがあります。

こういった「特別利益」や「特別損失」も起業直後は少ないことが多いです。

この「税引前当期純利益」について重要なことは、言葉通りですが「法人税や住民税、事業税を引く前の利益」のことで、この「税引前当期純利益」に対して税金が掛かってくるということです。

最後に「税引前当期純利益」から「法人税、住民税、事業税の合計額」を引いたら、最終的に会社が1年間に儲けた利益である「税引後当期純利益」が求まります。

つまり「税金も含める全ての経費」を「売上」から引いていった本当の最終利益が「税引後当期純利益」だということです。

この「税引後当期純利益」を見て「黒字」や「赤字」と言うことになります。(提供:ベンチャーサポート税理士法人