紙袋市場,2019年
(写真=gpointstudio/Shutterstock.com)

2018年度の国内紙袋販売量は、前年度比102.5%の152億4,500万袋の見込

~平袋が市場を牽引し、紙袋市場は拡大推移の見通し~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内の紙袋市場の調査を実施し、製品セグメント別の動向や参入企業動向、将来展望を明らかにした。

紙袋市場規模の推移・予測

紙袋市場,2019年

1.市場概況

 2017年度の国内紙袋市場規模は、コンバータの販売数量ベースで148億7,676万袋(前年度比3.0%増)であった。本調査では手提げ袋、角底袋、平袋の3つの紙製包装材を対象としているが、食品の包装材として利用される平袋の袋数が近年拡大傾向にあり、その伸長率も高い水準にある。これが引いては紙袋市場の拡大に繋がっている。2018年度も同様の傾向が続いており、紙袋市場規模は152億4,500万袋(前年度比2.5%増)と販売量は拡大する見込みである。

 一方で、他の2種については、手提げ袋は下げ止まり感が出ているものの、角底袋については減少し続けている。平袋は食品分野における一次包装材として活用されているが、手提げ袋や角底袋は二次包装材として活用されるケースがほとんどとなっており、省包装化の影響を受けている。ただ、最も大きなマイナス要因となっているのが他素材へのシフトであり、特に安価なPE袋(ポリエチレン袋)へのシフトは、ピークは過ぎたと見られるものの、未だに続いている。

2.注目トピック

~減少基調の手提げ袋、角底袋は、“脱プラスチック” が追い風になるか~

 2018年に入り、プラスチックゴミによる海洋汚染(マイクロプラスチック問題)への問題意識が世界規模で急速に高まり、各国で “脱プラスチック” の動きが加速している。一方、これまで日本では、使い捨てプラスチック問題については、差し迫った課題としては捉えられていなかった。しかし、従来からあった本質的なリサイクル率の低さへの指摘に加え、2018年1月に中国が廃棄プラスチックの輸入禁止措置を発動したことにより、日本国内においても使い捨てプラスチック問題が喫緊の課題として認識され始めており、これが “脱プラスチック” の機運の高まりに繋がっている。

 こうした状況の中で日本政府では、「プラスチック資源循環戦略」を策定し、プラスチック廃棄物の削減に向けた具体案として、「レジ袋の有料義務化」も示された。スーパーなどの小売業を対象に、2020年4月からの義務化を実施する見通しとなっている。環境省では、使い捨てプラスチックの象徴とされるレジ袋を第一ターゲットとし、削減目標の達成を目指す方針を打ち出したと言える。これにより、PE袋の代替需要が創出される見通しとなっており、その受け皿として紙袋の需要が高まる可能性が出てきている。

3.将来展望

 2019年度の国内紙袋市場規模(コンバータ販売数量ベース)は157億袋、前年度比3.0%増と予測する。引き続き平袋が増加するとともに、“脱プラスチック” の機運が高まる中で、手提げ袋・角底袋の販売量もほぼ横這い推移と予測する。
中長期的に見ても、平袋は拡大基調で推移すると予測する。手提げ袋・角底袋については、PE袋の代替需要が創出されることにより上向く可能性はあるが、一方で、競合素材となるバイオプラスチックの存在感も高まることも考えられ、小幅な成長率にとどまる可能性もある。