「誰を昇進させ誰を昇進させないのか」「なぜその社員を昇進させるのか」。昇進人事は、人事のなかでも重要な仕事の一つだ。しかし、昇進させる社員をどのように見極めたらいいのだろうか。人事に携わる管理職がチェックしたい18のポイントを解説する。

目次

  1. 昇進とは?
    1. 昇進によって企業が得られるメリットとデメリット
  2. 昇進させる社員を選ぶ際にチェックしたい18のポイント
    1. 1.勤務態度が良好である
    2. 2.結果を数字でしっかりと出せる
    3. 3.ポジティブである
    4. 4.コミュニケーション能力がある
    5. 5.チームワークを高められる
    6. 6.好奇心が旺盛である
    7. 7.ストレスに強い
    8. 8.健康である
    9. 9.性格が明るい
    10. 10.他人からの印象を意識できている
    11. 11.意思決定が速い
    12. 12.聞き上手である
    13. 13.運がいい
    14. 14.上司の信頼が厚い
    15. 15.結果への執念が強い
    16. 16.勉強家である
    17. 17.努力家である
    18. 18.Noと言える
  3. 昇進に使えるアセスメントツールの紹介
    1. 適性検査(素質のアセスメント)
    2. 技能試験・アセスメント研修(能力のアセスメント)
    3. 多面観察・360度評価(行動のアセスメント)
  4. 誰もが納得する人事を目指そう
  5. 昇進でよくある質問
    1. Q.昇進と昇格はどっちが上?
    2. Q.役職が上がることをなんと言う?
    3. Q.出世する人はどんな人?
昇進させる社員を選ぶ18のチェックポイント
(画像=takasu/stock.adobe.com)

昇進とは?

昇進とは、企業において社員の役職を上げる人事のことである。一般的には、平社員から課長、課長から部長などへと役職を上げる人事のことを指す。

昇進により社員の責任範囲が拡大したり部下を監督指導したりする役割が生じる。また、昇進により役職手当などで給与が増えるケースもあるだろう。なお昇進に似た言葉として「昇格」がある。

通常、昇格は社員が社内における何らかの職能資格を取得した際に使われるケースが多い。「昇進」と「昇格」は、同じ意味ではないので注意が必要だ。

昇進によって企業が得られるメリットとデメリット

昇進によって企業が得られるメリットとデメリットには、以下の点が挙げられる。

【メリット】

  1. 社員のモチベーション向上:昇進は、社員の努力が認められることを示すため、モチベーションを向上させ、社員の仕事への取り組みを強化できる
  2. リーダーシップの発揮:昇進によって、経験豊富な社員がリーダーシップを発揮し、部下を指導・育成することができる。これにより、組織全体のスキル向上が期待できる
  3. 組織の活性化:昇進を通じて人事異動が行われることで、新しい考え方やアイデアが導入され、組織の活性化が図られる

【デメリット】

  1. ピーターの法則(無能の原理):ピーターの法則とは、社員が自分の無能さを示すレベルまで昇進するという原理。この法則により、昇進した社員が新しい職務に適応できず、組織の効率が低下する可能性がある
  2. 昇進競争の悪影響:昇進を重視する企業文化において社員が昇進競争に熱中し、協力やチームワークが損なわれることがある
  3. 職務適性とのミスマッチ:昇進によって、社員が以前の職務とは異なるスキルや知識を必要とする新しい職務に就くことがある。その際、適切な研修やサポートがなければ、職務適性とのミスマッチが生じる可能性がある

このように昇進は、企業にとって多くのメリットをもたらす一方でデメリットも存在する。企業は、昇進の適切なタイミングや条件を検討し、社員の適性や能力に応じた人事評価を行うことが重要だ。またピーターの法則に対処するためには、昇進後の研修やサポート体制を整え、適切な職務配置を行うことが必要になるだろう。

昇進させる社員を選ぶ際にチェックしたい18のポイント

では、昇進させる社員を選ぶ際にはどういった点をチェックすればよいのだろうか。

1.勤務態度が良好である

ポイントの第一は勤務態度。例えば、勤務態度が良好な社員と勤務態度が良くない社員を比較した場合、勤務態度が良好な社員の評価を高くすべきなのは言うまでもない。

勤務態度が良好であることは、少なくとも自分自身のタイムマネジメントがしっかりとできているということになる。自分自身のタイムマネジメントができる人は、他人のタイムマネジメントもできる可能性が高く、昇進を検討する重要な要素の一つといえるだろう。

2.結果を数字でしっかりと出せる

結果を数字でしっかりと出せるかどうかも大切だ。いくら勤務態度が良好でも結果が出せない社員を昇進させてはならない。

特に社員を重要な役職へ昇進させる場合、他の社員が納得できる実績と可能性を有しているかがポイントになる。社内派閥の論理や情実人事などをもって昇進させることなどはあってはならない。

営業などの数字が厳しく求められる分野の人事においては、このことは特に重要だろう。

3.ポジティブである

勤務態度や評価がほぼ同じ社員Aと社員Bがいたとする。「常にポジティブな社員A」「常にネガティブな社員B」のどちらを昇進させるべきだろうか。

程度にもよるだろうが一般論では、ポジティブな社員Aの評価を高くすべきだろう。特にチームワークでの仕事が求められるポジションの場合、社員がポジティブであることは少なからず重要になる。

4.コミュニケーション能力がある

コミュニケーション能力も重要なポイントだ。例えば、一定の人数を有するチームを率いる場合、チームのトップには相応のコミュニケーション能力が求められる。

誰にも相談せず常に一人で物事を進めてしまう一匹狼では、チームを率いることは困難だ。また最近は上司と部下による1on1(ワンオンワン)ミーティングを導入する企業が増えている。

しかし、コミュニケーション能力が欠如した上司では、1on1ミーティングの効果的な実施は困難だろう。

5.チームワークを高められる

チームワークを高める能力も重要だ。「チームの目標を明確にしてメンバーの役割分担を決める」「各人を叱咤激励してモチベーションを高め目標を実現する」など、決して自分だけでチームの成果を独り占めせず逆にメンバーに栄誉を分け与える。

チームの規模が相応に大きい場合、特にリーダーのチームワークを高める力が問われることになる。

6.好奇心が旺盛である

好奇心が旺盛な社員Aとあまり好奇心がない社員Bであればどちらを昇進させるべきだろうか。これも程度によって異なる。

しかし一般論では、好奇心旺盛な社員の評価を高くすべきだろう。好奇心が旺盛な人の多くは問題意識があり問題解決への意欲にあふれている。

また、往々にして内発的動機付け(内発的モチベーション)が旺盛な人が少なくない。

7.ストレスに強い

ストレスに強いことも重要なポイントの一つである。特に役員などの高次のポジションに昇進させる場合、ストレスに弱いと致命的だ。

株主や社内外からのプレッシャーに耐え、あまたの問題にくじけず、他者の批判にも動じないストレス耐性が絶対に必要である。一般的に組織ではポジションが上になるほどストレスが激しくなる。

ストレスから体を壊してしまったり精神を病んでしまったりするようでは仕事にならないだろう。

8.健康である

上述した「勤務態度が良好である」ともつながるが社員が健康であることも重要なポイントだ。病気で欠勤しがちであったり何らかの健康上の問題を抱えていたりするケースでは、残念ながら評価を下げざるを得ない。

また、日ごろ健康を維持している人の多くは、運動や栄養管理などを含めた日常の自己管理がしっかりとできている。

自己管理ができない人は、往々にして他人の管理もできないケースが多い。

9.性格が明るい

性格が明るいことも重要だ。性格が明るい人はチーム全体を和ませメンバーの心をほどいてくれる。会社組織でも同様にユーモアに富んだ明るい性格の人材が重要だ。

10.他人からの印象を意識できている

有名なメラビアンの法則によると人の第一印象を決定づける要素は、「見た目などの視覚情報が全体の55%を占める」という。見た目が良い人とは、「他人から自分はどう見られているのか」を意識している人であり身だしなみなどを整えてそれに対応できている人である。

清潔感を感じさせ服装などもきちんとしている人のほうがいいだろう。特に営業など社外との接触が多い部署では重要なポイントだ。

11.意思決定が速い

意思決定の速さも重要だ。特に責任が重いポジションに昇進させる場合、ことのほか重要になる。日本の企業は一般的に意思決定が遅いことで悪名高い。

しかし、世界レベルでは企業の意思決定はどんどん速くなっている。先が読めない不確実な現代においては、意思決定が遅いことは企業存続が危ぶまれる重大な脅威になる可能性がある。

12.聞き上手である

「聞き上手であるか」も重要なポイントだ。上司と部下による1on1ミーティングを組織的に行っているヤフーでは、1on1ミーティングにおいて「週に1度30分間、場所を確保し、部下の話を聞く」ことを上司に求めている。

上司は「聞き役に徹する」「部下の悩みや課題を聞く」「コーチング」などを行いながら一緒になって課題を解決することが望ましい。

「部下の話を聞かない」「聞けない上司」といったことでは、最初から話にならないだろう。

13.運がいい

故松下幸之助が松下電器産業の採用試験で自ら面接官を務めていた際、面接の最後に「あなたは運がいいですか?」と必ず質問していたのは有名な話だ。「運が悪いです」と答えた人は、どんなに面接の内容や試験の結果が良くても必ず不合格になったという。

このように運は、人事において時に決定的な影響を与える可能性がある。会社人事でも運が悪い人よりも運がいい人を、少なくとも自分は運が悪いと考えている人よりも自分は運がいいと考えている人を昇進させるべきだろう。

14.上司の信頼が厚い

「上司の信頼が厚い社員A」「上司の信頼が薄い社員B」がいた場合、どちらを昇進させるべきだろうか。仮に能力や評価が同じだった場合、当然社員Aを優先すべきである。

上司といえども社員であり社員による評価は高いほうがいいのは当然だ。ただし「単にゴマすりが上手い」「社内営業が巧みである」などの理由ではいけない。

15.結果への執念が強い

結果への執念が強いことも重要だ。結果を出すためには、結果が出るまであきらめない姿勢を保ち続ける必要がある。

結果への執念が弱いと努力を放棄して途中で投げ出してしまいがちになる。失敗が続いてもくじけず決してあきらめない執念の強さがなければならない。

16.勉強家である

普段から読書やセミナーなどで仕事に必要な知識や情報をインプットし、自己研さんをしている社員が望ましい。例えば、平日夜や休日は自宅にこもってアニメやゲームなどにハマっている社員と比較すると、仮に能力や評価が同じだとした場合、どちらを昇進させるべきかは明らかだろう。

優秀な人の多くは、勉強家であり常に自己投資を行っている。

17.努力家である

優秀な人の多くは勉強家であり、さらには努力家でもある。課題に直面してもあきらめずコツコツと努力を続けることが期待できるだろう。「アイデアを出す」「試行錯誤を繰り返す」「解決策を見つけ出す」など地道な努力を続けることができる人は、貴重な存在だ。

18.Noと言える

Noと言えるかどうかも重要なポイントだ。特にリーダーのポジションへ昇進させる場合、Yesしか言わないYesマンを昇進させるのは非常にリスキーだ。

タスクに優先順位をつけて「不要不急のもの」「必要のないこと」などを行わないタイムマネジメントを行うには、Noと言うことが絶対に必要である。また近年はコンプライアンスの順守が厳しく求められている傾向だ。

そのため、社内の不正行為やモラル違反、各種のハラスメント行為に対してNoと言える人材が求められている。

昇進に使えるアセスメントツールの紹介

昇進の判断においてアセスメントツールは、企業にとって重要な役割を果たす。適性検査、技能試験・アセスメント研修、多面観察・360度評価など、さまざまなアセスメントツールが存在し、それぞれに異なる目的で使用される。そこで、昇進に使えるアセスメントツールの概要と特徴について紹介する。

適性検査(素質のアセスメント)

適性検査は、社員の能力や適性を測定するためのツールだ。昇進に際しては、新しい役職に適した人物を選定するために、適性検査が用いられることがある。適性検査には、以下のような種類が存在する。

  1. 知能検査:社員の論理的思考力や言語能力、数学的能力などを測定する。これにより、問題解決能力や学習能力を評価できる
  2. 性格検査:社員の性格特性や対人関係のスキルを評価する。これにより、リーダーシップやチームワークなどの能力を把握できる
  3. 職業適性検査:社員がどのような職種に適性を持っているかを測定する。これにより、昇進後の職務適性を判断できる

適性検査を実施することで、昇進候補者の素質や潜在能力を評価し、適切な人選を行うことができる。

技能試験・アセスメント研修(能力のアセスメント)

技能試験・アセスメント研修は、昇進候補者の具体的な能力を評価するためのアセスメントツールである。昇進に際しては、新しい役職で必要とされる技術や知識を持っているかどうかを確認するために、技能試験やアセスメント研修が実施されることがある。

・技能試験
昇進候補者が新しい役職で求められる技術や知識をどれだけ習得しているかを測定するための試験だ。例えば、マネージャー職への昇進にあたっては、プロジェクトマネジメントやリーダーシップに関する知識が試されることがある。

・アセスメント研修
昇進候補者に実際の業務をこなす能力があるかどうかを評価するために行われる研修だ。研修中に実践的な課題やケーススタディを通じて、候補者の能力を測定し、適切な人選を行うことができる。

技能試験やアセスメント研修の実施で、昇進候補者の実務能力を客観的に評価し、昇進後の業務遂行能力を確認することが期待できるだろう。

多面観察・360度評価(行動のアセスメント)

多面観察・360度評価は、昇進候補者の行動や態度を多角的に評価するためのアセスメントツールだ。昇進に際しては、候補者がどのような人間関係を築いているか、他者からどのような評価を受けているかなどを把握するために、多面観察や360度評価が実施されることがある。

・多面観察
昇進候補者の日常的な行動や態度を評価するために上司や部下、同僚などさまざまな立場の人からの評価を収集する。これにより候補者のリーダーシップやコミュニケーション能力、協調性など、職場での実際の行動を評価することが可能だ。

・360度評価
昇進候補者自身や上司、部下、同僚、取引先など、さまざまな関係者から評価を受け、総合的な評価を行う。これにより候補者が組織内外でどのように評価されているかを把握し、適切な人選を行うことが可能だ。

多面観察・360度評価の実施で、昇進候補者の行動や態度を多角的に評価し、昇進後の役職に適した人物かどうかの判断がしやすくなるだろう。これにより、組織全体の働きやすさや効率を向上させることが期待できる。

誰もが納得する人事を目指そう

昇進させる社員を選ぶには上記のようなポイントが重要となってくる。しかし、進め方によっては昇進の基準があいまいになり、周囲が納得しない懸念も払しょくできない。職場のチームワークを乱さないためにも、誰もが納得する人事を目指すべきだろう。

既存の手法だけではなく、人事アセスメントツールなども利用し、昇進の判断を間違いのないものにしたい。

人事に携わる管理職がチェックしたい18のポイントを解説した。当然ながら企業には企業ごとの人事評価基準がある。一方で公平性や客観性、透明性は、ほとんどの企業の人事評価で実現すべき普遍的テーマだ。万人が納得する人事評価基準は存在しないかもしれない。しかし、そうした普遍的テーマを追求すべきであることは間違いないだろう。

昇進でよくある質問

Q.昇進と昇格はどっちが上?

A.昇進は「役職が上がる」、昇格は「職位や報酬が上がる」といった点が昇進と昇格の違いだ。どちらが上というわけではなく、それぞれに異なる意味を持っている。昇進は組織内での権限や責任が増すことを意味し、昇格は個人の能力や経験に応じた評価の上昇を意味する。両者は、同時に行われることもあるが、必ずしも連動しているわけではない。

Q.役職が上がることをなんと言う?

A.役職が上がることは一般的に「昇進」と言う。昇進は、組織内での地位や権限が増して責任範囲が広がることを意味する。昇進することで、その人は個人の業績や能力、リーダーシップが評価され、組織内でさらなる貢献が期待されることを示す。

Q.出世する人はどんな人?

A.出世する人は、優れた業績や能力を持ち、リーダーシップやコミュニケーション能力が高い人であることが多い。また柔軟な思考を持ち、変化に適応できる能力やチームワークを大切にする姿勢も重要である。さらに状況に応じて適切な判断を下すことができる判断力や、問題解決能力も求められる。出世する人は、組織内での信頼と尊敬を得ていることが一般的だ。

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