外形標準課税の税率と税額の算出方法 3つの構成要素別に解説
(画像=kellymarken/stock.adobe.com)
中川 崇
中川 崇(なかがわ・たかし)
公認会計士・税理士。田園調布坂上事務所代表。広島県出身。大学院博士前期課程修了後、ソフトウェア開発会社入社。退職後、公認会計士試験を受験して2006年合格。2010年公認会計士登録、2016年税理士登録。監査法人2社、金融機関などを経て2018年4月大田区に会計事務所である田園調布坂上事務所を設立。現在、クラウド会計に強みを持つ会計事務所として、ITを駆使した会計を武器に、東京都内を中心に活動を行っている。

法人が支払う地方税である「法人事業税」は、中小企業は所得の金額のみで計算される。一方、規模の大きい法人は外形標準課税に基づいて計算しなければならない場合もある。

この記事では、外形標準課税の仕組みや、構成要素である「所得割」「付加価値割」「資本割」の3つについて解説する。

目次

  1. 外形標準課税とは
    1. 外形標準課税の対象企業は資本金だけで判定する
  2. 外形標準課税を構成する3つの要素
  3. 外形標準課税の要素1「所得割」
  4. 外形標準課税の要素2「付加価値割」
    1. 付加価値の計算方法
    2. 付加価値の4つの要素
    3. 資産に含まれたものの扱い
    4. 付加価値割による外形標準課税の税額計算方法
  5. 外形標準課税の要素3「資本割」
    1. 持株会社の場合は注意が必要
  6. 外形標準課税を把握し正確な税金計算を行おう

外形標準課税とは

外形標準課税は、法人事業税の課税方法の一つで、資本金が1億円を超える企業について適用される制度である。

通常の企業は、税務上の利益である「所得」のみで法人事業税が算出される。これに対し、外形標準課税を適用された企業の法人事業税については、所得以外に法人が生み出した付加価値や資本金等の金額からも算出される点が異なる。

外形標準課税の対象企業は資本金だけで判定する

外形標準課税の対象となる企業は、資本金の額または出資金の額(以下、「資本金の額」とする)が、1億円を超える企業である。

ここで注意しなければならないのは、1億円を超えるのは資本金の額であり、同じ地方税である「法人住民税」の均等割の金額に使われる資本金等が1億円を超えることではない。つまり、資本準備金等は含める必要はない。

ただし、資本金の額や出資金の額が1億円を超える企業であっても、「一般社団法人」「一般財団法人」などの法人は外形標準課税の対象外となる。

外形標準課税を構成する3つの要素

外形標準課税は、以下の3つの要素から構成される。

外形標準課税の税率と税額の算出方法 3つの構成要素別に解説

外形標準課税が適用される法人の「法人事業税」は、これら3つの各々に対して税率を適用して税額を計算する。

外形標準課税の要素1「所得割」

所得割は、外形標準課税が適用されない法人の「法人事業税」と同じ基準で課せられるものである。

所得割の税率は外形標準課税が適用されない法人では「7.48%」(東京都における資本金または出資金が1億円以上の場合の最高税率)であるのに対し、外形標準課税が適用される法人では、最高でも「1.18%」(東京都の一般企業の場合。以下同じ)と、低く抑えられている。

外形標準課税の要素2「付加価値割」

企業が1年間に企業活動によって与えた付加価値を基準として、法人事業税を課税するのが付加価値割である。

ここで、付加価値とは一般的には企業がその活動により新たに生み出した価値のことである。例えば、材料を仕入れて製品を作る場合、製品の売上から材料の仕入れ価格を引いた金額が、その企業の生み出した価値と考えられる。

付加価値の計算方法

付加価値の計算方法は2通りある。

・控除法

生産額から付加価値とは認識されない材料費や外注費などを控除した金額から求める。

・加算法

利益の金額から、法人税などの金額や租税公課、人件費、支払利息、減価償却費など、付加価値とみなされるものを加算する。

外形標準課税では、加算法の考え方で課税対象となる付加価値の金額を算出する。

付加価値の4つの要素

付加価値割の課税対象となる付加価値は、4つの要素からなる。所得割の所得と比較すると、以下のような図になる。

外形標準課税の税率と税額の算出方法 3つの構成要素別に解説

付加価値は、「単年度損益」と「収益分配額」に分けられ、収益分配額は更に「報酬給与額」「純支払利子」「純支払賃借料」に分けられる。

所得割の「所得」も付加価値割の「付加価値」も、その期の法人事業税上の損益の金額を元にして計算することは同じである。

ただし、付加価値割の付加価値は、その後に収益分配額を加算して付加価値割の対象となる金額を計算するのに対し、所得割の所得は繰越損失の考慮以外の計算はしない。

以下、それぞれの要素について細かく説明する。

・【1】単年度損益

単年度損益は、法人事業税の「所得割」の所得と同じで、その期の法人事業税上の損益の金額を元にして算出されるが、それぞれは繰越損失がある場合に違った扱いをする。

「所得割」の所得は、繰越損失がある場合、法人事業税上の損益の金額から繰越損失の金額を差し引いた金額とする。一方で、「付加価値割」の付加価値は、仮に繰越損失があっても考慮せずに、そのまま計算に用いる。

なお、単年度損益がマイナスの場合はそのままとし、収益分配額から控除する。

・【2】報酬給与額

報酬給与額は、報酬などのうち、法人税法上で損金に参入されるものであり、役員報酬や従業員への給与・賞与が該当することは簡単に想像がつくが、それ以外にも対象となるものがある。

・退職金

まず、退職金が報酬給与額に該当する。一般的には報酬や給与に該当しないとされるが、付加価値割の付加価値の計算には入る。

・確定拠出年金

確定給付企業年金等の掛金のうち、事業主が負担した部分も報酬給与額に該当する。例として、「独立行政法人勤労者退職金共済機構」が運営している、「中小企業退職金共済」や「建設業退職金共済」「確定拠出年金」が挙げられる。

・派遣会社に支払う報酬

派遣会社から従業員派遣を受けた時に支払う「派遣料」の支払いも報酬給与額に含まれるが、全額ではなく支払額の75%が計上される。なお、支払額には「旅費交通費」見合いは含めるが、「消費税」は除いて計算する。

一方で、一見、給与や賞与であっても報酬給与額とならないものもある。その内の一つが「通勤手当」である。

また、もともと損金に参入されない「賞与引当金繰入額」や「退職給付引当金繰入額」も報酬給与額に入れることはできない。賞与引当金や退職給与引当金は取り崩し、実際に支給された時に損金算入が行われ、報酬給与額の対象となる。

・【3】純支払利子

純支払利子は、支払利子から受取利子を控除した金額のことである。

・支払利子に該当するもの

支払利子とされるのは「負債の利子」とされるもので、法人税法上の損金になる。代表的な例として、借入金や発行社債の利息があり、ファイナンス・リース取引のリース料の中に含まれる「支払利息相当額」も該当する。

ただし、「売上割引」については、利息に似ているが実質的には報奨金の性質があるものとして純支払利子の計算には含まない。

また、条文上は当てはまらないものであっても、準ずるものとして「手形の売却損」も支払利子として挙げられる。なお、この場合、手形の売却から手形の決済の間に期末を迎えるとしても、期間按分はせずに全額がその事業年度の純支払利子の計算に加えられる。

しかし、似た性質のある「ファクタリング費用」については、基本的には資産の譲渡から発生するものとされるため純支払利子の計算に加えない。しかし、譲渡の対象となる債権に償還請求権がある場合は、支払利子に該当する。

・受取利子に該当するもの

受取利子とされるものは、各事業年度において支払いを受ける利子で、法人税において益金算入されるものである。

代表的な例として、預金利息、貸付金利息、有価証券利息、還付加算金などがある。

・【4】純支払賃借料

純支払賃借料は、支払賃借料から受取賃借料を控除した金額のことである。

賃借料とは、土地や住宅、店舗、工場などの建物とそれと一体となって効用を果たす構築物や附属設備を借りるために支払われるものである。すなわち、付属している水道、ガス、電気機器類などにかかる金額も、純支払賃借料に含まれる。

また、純支払賃借料の計算に含まれるのは、貸借の期間が1ヵ月以上のもので、実際に使用しているか否かは問われない。

資産に含まれたものの扱い

付加価値割の計算の対象となる収益分配額は、単に事業年度において益金や損金として計上されたものばかりではない。

その他に付加価値割の計算に含まれるものとして、当該事業年度に支出されたものの、資産計上されたものも含まれる。対象となるものは以下の4つである。

  • 棚卸資産
  • 有価証券
  • 固定資産
  • 繰延資産

事業年度末においてそれらとして計上されているものの、資産計上されていなければ当期の損金に含まれていたものについては付加価値割の計算に含まれることとなる。

付加価値割による外形標準課税の税額計算方法

付加価値割による外形標準課税の税金の計算は、以下の手順で行う。

(1) 単年度損益、報酬給与額、純支払利子、純支払賃借料を各々で計算する。単年度損益以外の金額については計算結果がマイナスになった場合は0とする。

(2) それらを足し合わせ、付加価値割の対象となる金額を求める。計算結果がマイナスになった場合は0とする。

(3) 税率(1.26%)を乗じて、算出する。

また、雇用安定のため、報酬給与額が収益分配額の70%を超える場合など、雇用状況に関連した軽減措置があるがここでは省略する。

外形標準課税の要素3「資本割」

資本割は、資本金等の金額を元に計算される税金である。

資本割の計算は、法人税法で定められている資本金等の金額を元に計算され、税率は「0.525%」である。

ただし、無償増資や無償減資を行ったため、資本金と資本準備金の合計を下回った場合は資本金と資本準備金の合計となるなど調整措置が取られている場合がある。

持株会社の場合は注意が必要

資本割の調整の中で知っておくべきものは、いわゆる持株会社の場合である。

総資産のうち、発行済株式等や出資の50%を超える株式や出資を持っている会社である、「特定子会社」の株式や出資の簿価が50%を超える場合は、資本金等の内、それに相当する金額を資本割の対象から外すことができる。

外形標準課税を把握し正確な税金計算を行おう

ここでは、資本金が1億円を超える会社について課せられる法人事業税である「外形標準課税」について解説した。外形標準課税は、「所得割」「付加価値割」「資本割」に分けられるため、正確な税金計算を行うためにはそれぞれについて把握することが肝要である。

特に「付加価値割」は計算が複雑なため、4つの要素についての違いを理解し、それぞれの計算方法を確認して欲しい。

文・中川崇(公認会計士・税理士)

無料会員登録はこちら