調剤報酬改定の影響を受けて調剤薬局は利益率が低下する中で、2019年度は多くの企業が一定の売上確保へ
~大手調剤薬局チェーンはM&Aを含む積極的な新規出店展開へ、再編は本格化かつ迅速化する見込~
株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内の調剤薬局市場を調査し、現況、参入企業動向、将来展望を明らかにした。
1.市場概況
新型コロナウイルス感染症拡大の影響がまだ軽微であったことで、2019年度の調剤薬局チェーン経営企業の業績は、一定の売上を達成した企業が多い。しかし、増収増益を達成した企業でも、伸び率が鈍化している企業が多数見られ、また利益については各種の調剤報酬加算の取得に努めたことや、業務の効率化などを図ったことで増益を達成した企業が多い。一方で、減益を余儀なくされた企業も多い。調剤薬局市場では、2016年度以降、調剤報酬改定および薬価改定の影響が顕著で、全般的に業績の伸び悩み、悪化傾向が鮮明となっている。
増収の主要因となる新規出店についても、大手企業を中心として自社開発店舗の案件減少をM&Aで補うことで大量の出店を継続する企業も見られるが、大手企業を除けば新規出店数は全体的に減少傾向にある。今後、薬価改定に加えて調剤報酬の見直しがなされる見込みで、調剤薬局チェーン経営企業は業績の二極化が引き続き進んで行く見通しである。
2.注目トピック
かかりつけ薬局機能を強化し、既存店売上高の伸長を図り、地域における優位性を確立することの重要性
2016年10月から敷地内薬局(病院の敷地内にある調剤薬局)が解禁されたことで、国立や私立の大学附属病院、国公立病院、赤十字病院をはじめ民間病院を含め敷地内薬局を設置する動きが拡がっている。敷地内薬局に関しては、これまでの公募条件を見ると大手調剤薬局チェーン経営企業以外が出店するのは難しい場合も多い。
そのため、今後も門前薬局(敷地外だが病院のすぐ近くにある調剤薬局)とマンツーマン薬局(一般診療所の門前薬局)主流の構図は大きくは変わらないものと考える。また、門前型やマンツーマン型もかかりつけ薬剤師・薬局機能を発揮し、広域の処方箋を応需する薬局(面分業)が増加すると見込まれる。それと並行して、面分業の進展やドラックストアの処方箋応需店舗の増加などにより、中長期的には面分業対応型薬局数の増加と、処方箋応需全体に占める面分業比率が拡大する見通しである。
ただし、医薬分業の進展と調剤薬局数の増加に伴い、新規出店の余地は確実に縮小しており、これまでのように多数の企業が大量出店を背景に売上高を伸ばすことは難しくなっている。そのため、調剤薬局チェーン経営企業は従来以上にかかりつけ機能を強化し、既存店売上高の伸長を図り、地域における優位性の確立を実現することの重要性が増している。
3.将来展望
調剤薬局市場が成熟化していく中で、店舗数は増加を続けており、競争状況は激しさを増している。新規出店数の維持や人材の確保、教育研修の拡充を図るためには、さらなる企業規模の拡大が不可欠になると考える。
こうした観点から鑑みると、今後、調剤薬局業界の再編は本格化かつ迅速化するものと見込まれる。これまでのM&Aは、全国展開してきた大手チェーン経営企業による中小チェーンの買収や中小薬局の営業権譲受が中心であったが、今後は中堅チェーン経営企業が主導するM&Aや、中堅チェーン同士の統合などの可能性が高まるとみる。とくに、地域を限定し展開してきた中堅チェーンがその中心になるものと考える。
調査要綱
1.調査期間: 2020年10月~2021年1月 2.調査対象: 調剤薬局経営企業および製薬企業、医薬品卸 3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談、電話・e-mailによるヒアリング、ならびに文献調査併用 |
<調剤薬局とは> 本調査における調剤薬局とは、地方厚生局長等に届け出た保険薬局(保険調剤が可能な薬局)で、医療機関から発行された処方箋に基づき医薬品を交付する薬局を指す。調剤業務を主体とする調剤専門薬局の他、物販を主体とする薬局・ドラッグストアでも調剤業務を実施している店舗が含まれる。 |
<市場に含まれる商品・サービス> 調剤薬局経営企業、調剤薬局チェーン経営企業 |
出典資料について
資料名 | 2020~2021年版 調剤薬局の実態と展望 |
発刊日 | 2021年01月29日 |
体裁 | A4 320ページ |
定価 | 120,000円(税別) |
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