新規で立ち上げたプロジェクトを一から管理する場合、予算の見積もりやスケジュール管理など膨大な業務をこなさなくてはならない。そのため「何からどうやって行うべきかわからない」と悩んでしまう人も多いだろう。そこで今回は、プロジェクトマネジメント(管理)で必要なスキルや手法、成功させるポイントをわかりやすく解説する。

経営に携わる人や今から新しくプロジェクトのマネジメントを担う人は参考にして欲しい。

目次

  1. プロジェクトマネジメントとは
    1. プロジェクトマネジメントの重要性
    2. プロジェクトマネジメントの主なフレームワーク
    3. PMBOKによるプロジェクトマネジメントの定義
    4. プロジェクトマネジメントの基本要素とフロー
    5. プロジェクトマネジメントの仕事内容
  2. プロジェクトマネジメントで必要なスキルと手法
    1. 1.全体を俯瞰する力
    2. 2.将来を予測する力
    3. 3.コミュニケーション力
    4. 4.プロジェクトマネジメントに役立つ手法に関する知識
    5. 5.リスクマネジメントと問題解決
    6. 6.ステークホルダーマネジメント
  3. プロジェクトマネジメントを成功させるポイント5つ
    1. 成果物から逆算してプロセスを策定する
    2. 目標や目的をチームで共有する
    3. 想定外の事態を想定しておく
    4. やるべきことや各メンバーの役割を明確化する
    5. 上司や経営陣からの支持や理解を得る
  4. プロジェクトマネジメントで視座が高まる
  5. プロジェクトマネジメントでよくある質問
    1. Q.プロジェクトマネジメントとは、具体的に何をする?
    2. Q.プロジェクトマネジメント力とは何を指す?
    3. Q.プロジェクトマネジメントは誰にできる?
プロジェクトを成功に導く マネジメントにおける5つの秘策
(画像=MichailPetrov/stock.adobe.com)

プロジェクトマネジメントとは

プロジェクトマネジメントとは、プロジェクトを成功させるために計画の策定や業務の管理などを行うことである。具体的には、最終的なプロジェクトのゴールを明確にし、ゴールから逆算して「いつまでに何を誰がどのように行うか」を明確にすることが必要だ。そのうえで計画通りにプロジェクトが進むように予算や人員、進捗状況などを管理していく。

プロジェクトマネジメントの重要性

プロジェクトマネジメントが重要視される理由は、効率的な業務遂行を実現できると同時にプロジェクトの成功可能性が高まるからである。予算やスケジュール、各メンバーが行うべきことを明確にすることでただぼんやりと作業をこなす場合と比べてより短い時間でプロジェクトをこなせる可能性が高まるだろう。

また緻密な計画と管理に基づいてプロジェクトを進めるため、成功する可能性も高い。

プロジェクトマネジメントの主なフレームワーク

プロジェクトマネジメントには、複数のフレームワークが存在し、それぞれの特徴や適用状況に応じて使い分けられる。主なフレームワークとしては、PMBOK(Project Management Body of Knowledge)、PRINCE2(Projects in Controlled Environments)、アジャイルが挙げられる。

・PMBOK
PMBOKは、アメリカのProject Management Institute(PMI)が開発したプロジェクトマネジメントの知識体系だ。プロジェクトマネジメントのプロセス、標準、ツール、手法などを体系化し、プロジェクトマネジメントのベストプラクティスを提供する。

PMBOKは、プロジェクトマネジメントの10の知識エリアと5つのプロセスグループに分けられ、それらを組み合わせてプロジェクトを遂行する。PMBOKは、さまざまな業界やプロジェクト規模に適用可能である。

・PRINCE2
PRINCE2は、イギリス政府が開発したプロジェクトマネジメントのフレームワークで、特に公共部門で広く利用されている。

PRINCE2は、プロジェクトの始めから終わりまでの一連のプロセスを定義し、プロジェクトの成果物の品質やリスク管理に重点を置く。また役割と責任の明確化が特徴で、プロジェクトのステークホルダー間のコミュニケーションが円滑に行われるようになっている。

・アジャイル
アジャイルは、プロジェクトマネジメントの柔軟性と迅速性に焦点を当てたフレームワークだ。特にソフトウェア開発やイノベーティブなプロジェクトに適しており、変更に柔軟に対応できるように設計されている。

アジャイルでは、短期間のイテレーションを繰り返しながら開発を進め、途中でのフィードバックや改善が可能だ。「スクラム」「カンバン」「リーン」などさまざまな手法が存在する。

PMBOKによるプロジェクトマネジメントの定義

PMBOKによると、プロジェクトマネジメントは「限られたリソースを用いて、プロジェクトの目的達成を図るための計画、実行、監視、制御、および終了のプロセスである」と定義されている。PMBOKは、プロジェクトマネジメントの知識体系を提供し、プロジェクトの成功確率を高めるためのベストプラクティスを提示している。

プロジェクトマネジメントの基本要素とフロー

プロジェクトマネジメントには、いくつかの基本要素とフローが存在する。PMBOKでは、以下の5つのプロセスと10の知識エリアが定義されている。

【プロセス】

  1. 立ち上げ:プロジェクトの目的や範囲を明確化し、プロジェクトを正式に開始する
  2. 計画:プロジェクトの目標達成に向けた詳細な計画を立てる
  3. 実行:プロジェクト計画に従って作業を実行し、リソースを管理する
  4. 監視・制御:プロジェクトの進捗や品質を監視し、必要に応じて計画の修正や調整を行う
  5. 終了:プロジェクトの成果物の確認・引き渡しを行い、プロジェクトを正式に終了する

【知識エリア】

  1. 統合管理:プロジェクト全体の調整と統制を行う
  2. スコープ管理:プロジェクトの範囲を明確化し、変更を管理する
  3. タイム管理:プロジェクトのスケジュールを管理し、期限を遵守する
  4. コスト管理:プロジェクトの予算を管理し、コストの最適化を図る
  5. 品質管理:プロジェクトの成果物が品質基準を満たすように管理する
  6. 人的資源管理:プロジェクトチームの編成や人材の育成を行う
  7. コミュニケーション管理:プロジェクト関係者との情報共有や意思疎通を図る
  8. リスク管理:プロジェクトのリスクを特定・分析し、対応策を立てる
  9. 調達管理:プロジェクトで必要な資源やサービスの調達を行う
  10. ステークホルダー管理:プロジェクトに関与するステークホルダーの期待や要求を満たすように管理する

これらの要素とフローは、プロジェクトマネジメントにおいて重要な役割を果たし、効果的に適用することでプロジェクトの成功につながる。

プロジェクトマネジメントの仕事内容

プロジェクトマネジメントの仕事内容は、プロジェクトの目標達成に向けて、以下のような業務が含まれる。

プロジェクトマネジメントの仕事内容

プロジェクトマネジメントの専門家は、これらの業務を通じてプロジェクトの成功を目指し、プロジェクト関係者と協力してプロジェクトを遂行する。

プロジェクトマネジメントで必要なスキルと手法

プロジェクトマネジメントを遂行するにあたっては、主に以下のスキルが求められる。

1.全体を俯瞰する力

一般的にプロジェクトでは、複数のチームに分かれてそれぞれの専門領域に関する業務を担う。そのためプロジェクトマネジメントを行う者には、特定のチームだけでなく全体を俯瞰して計画や管理を行う力が求められる。特定チームのみの成果ばかりを重視すると他のチームが行う業務の質が低下したり計画通りに業務が進まなくなったりする恐れがあるだろう。

その結果、他チームが行う業務の質や進捗状況にも悪い影響がおよびプロジェクト全体が円滑に進まなくなってしまうのだ。このような事態にならないためにもプロジェクトでは全体最適を意識したマネジメントが求められる。

2.将来を予測する力

円滑なプロジェクトの進行を実現するには、将来を予測する力も不可欠だ。新規事業の立ち上げといった難易度の高いプロジェクトでは、途中で想定外のトラブルやミスが生じる可能性がある。途中で思わぬトラブルやミスが生じると大幅な手戻りや損失が生じるリスクが高い。手戻りや損失を回避するためにもあらかじめ生じ得るトラブルやミスをすべて予測し未然に対策しておくことが重要である。

3.コミュニケーション力

プロジェクトマネジメントでは、業務を担うメンバーはもちろん上司や取引先などあらゆる利害関係者と接する機会が生じる。そのためコミュニケーション力はプロジェクトの遂行にとって不可欠なスキルといえるだろう。ここで注意すべきなのは、利害関係者の立場や業務内容などによってプロジェクトに対する姿勢や重視すること、理解度などが異なる点である。

相手によって考え方が異なるため、ただ単に専門知識や自身の意見を伝えるだけでは、相手に納得したうえで行動してもらうのは困難だ。相手に応じて伝え方を変えることができてこそ、はじめてプロジェクトマネジメントで役立つコミュニケーション力といえるだろう。

4.プロジェクトマネジメントに役立つ手法に関する知識

プロジェクトを成功させるには、マネジメントに役立つ広範な知識を持っておくとなお良い。例えば後述する「ガントチャート」や「WBS」といった手法に関する知識があるとマネジメントの効果や効率性の向上につながるだろう。またシステム開発などの専門性が高いプロジェクトでは、各メンバーが行う実務に関する知識(プログラミングなど)も最低限持っておくとコミュニケーションの円滑化につながる。

以下は、プロジェクトマネジメントでよく利用される手法だ。

・ガントチャート
ガントチャートとは、縦軸が作業内容、横軸が日付となっている図表である。作業内容ごとに進捗状況や担当者を記入することで、プロジェクトにおける「やるべきこと」と「進捗状況」を一目で把握できる点が特徴だ。エクセルや無料ツールで簡単に作成できる点、スケジュールや作業内容の調整を容易に行える点がメリットである。

・PERT
PERT(Program Evaluation and Review Technique)とは、プロジェクト全体の流れと各業務の所要日数を可視化する手法、およびその図表である。業務が多く複雑なプロジェクトにおいて各業務の関連性を明確化したりプロジェクト全体の所要時間を推定できたりする点がメリットだ。また納期遅れを防ぐうえで重要な業務(クリティカルパス上の業務)を見つけ出し重点的に対策を講じることも可能となる。

・WBS
WBS(Work Breakdown Structure)とは、プロジェクトを複数の作業に分解し構造化した図表に表す手法である。プロジェクトの成功に不可欠な業務を抜け漏れなく洗い出せる点がメリットだ。また業務を階層構造に表すことでメンバーやチーム間で業務を分担することが容易となる点も魅力といえる。

5.リスクマネジメントと問題解決

リスクマネジメントとは、プロジェクト遂行中に発生する潜在的なリスクを特定、評価、対処する一連のプロセスのことだ。リスクは、予期せぬ出来事や状況の変化によって、プロジェクトの目標達成に悪影響を及ぼしかねない。リスクマネジメントは、リスクの発生確率と影響を最小限に抑えることを目的としている。

問題解決は、プロジェクトの進行中に発生する問題に対処し、プロジェクトを円滑に進めるための能力である。問題は予期しない状況や課題によって生じるが、適切な問題解決スキルを持つことで、プロジェクトの遅延や品質低下を防ぐことが可能だ。

6.ステークホルダーマネジメント

ステークホルダーマネジメントも、プロジェクトの成功に不可欠なスキルだ。ステークホルダーとは、プロジェクトに関心を持つあらゆる人物・組織を指し、その中には顧客、取引先、従業員、上層部、投資家などが含まれる。ステークホルダーマネジメントの目的は、プロジェクトの目標達成に向けて、これらのステークホルダーと効果的に連携し、理解し合い、支持を得ることだ。

ステークホルダーマネジメントには、以下4つの主要なプロセスが存在する。

  • ステークホルダーの識別
  • ステークホルダーの分析
  • ステークホルダーの優先順位付け
  • ステークホルダーとのコミュニケーション

ステークホルダーマネジメントが適切に実施されることで、プロジェクトの進行が円滑になり、リスクの回避や問題解決が容易になるだろう。またステークホルダーの満足度向上にもつながり、プロジェクト全体の評価が高まることが期待できる。

プロジェクトマネジメントを成功させるポイント5つ

最後にプロジェクトマネジメントを成功させるポイントを5点解説する。実際にプロジェクトマネジメントの業務を担う人は、ぜひ参考にして欲しい。

成果物から逆算してプロセスを策定する

まず大前提として成果物から逆算してプロセスを策定することが不可欠だ。成果物から逆算することでゴールまでの道筋が明確になると同時に重要な業務を抜け漏れなく行えるようになる。成果物を明確にせずにプロセスを策定するとやるべき業務が抜け落ちてしまったり途中で何をすべきか分からなくなって時間が無駄に過ぎたりするリスクがあるため、注意しなくてはならない。

目標や目的をチームで共有する

目標や目的をチーム間で共有することもプロジェクトマネジメントでは不可欠だ。たとえ明確で分かりやすい目標や目的があってもプロジェクトのリーダーだけしか把握していないと各メンバーは何をどうやって行うべきかわからない状態でプロジェクトに取り組むことになる。その結果、無駄な業務を行って時間や予算を無駄にしたり想定外のトラブルやミスが生じたりしかねない。

目標や目的をチーム間で共有してはじめて円滑なプロジェクトの遂行につながるわけだ。

想定外の事態を想定しておく

先ほど簡単に触れたがプロジェクトのマネジメントを行う際には、あらかじめ想定外の事態を想定しておくことがベストである。新規事業の立ち上げやシステム開発など難しいプロジェクトであるほど想定外のミスやトラブルが生じやすい。「計画通りに進まない可能性の方が高い」という前提に立ったうえでミスやトラブルによる損失を最小限に抑える施策を考えておこう。

やるべきことや各メンバーの役割を明確化する

プロジェクト全体の計画と同時に各メンバーの役割や業務内容を明確にすることも重要だ。一人ひとりの役割や業務内容が不明瞭だと各メンバーは「プロジェクトが失敗しても、自分の責任ではないだろう」という他人任せの考えに至る恐れがある。全員が他人任せになると最終的にはプロジェクト全体の質や進捗にも悪い影響が生じかねない。

一方で役割や業務を明確にすればプロジェクトに対して責任感や主体性を持ってもらえるようになる。一人ひとりが責任と主体性を持てばプロジェクトの成功に大きく近づくだろう。

上司や経営陣からの支持や理解を得る

プロジェクトを進めるにあたっては、予算配分や人員配置などをめぐって上司や経営陣から許可を得る必要が出てくる。そのため円滑にプロジェクトマネジメントを行うには、上司や経営陣から支持や理解を得ることは不可欠だ。上司や経営陣から全面的に理解を得られればより多くの予算を配分してもらえたり優秀な人材を優先的に回してもらえたりするなど会社全体から強力なバックアップを得られるだろう。

プロジェクトマネジメントで視座が高まる

プロジェクトマネジメントの質を高めればプロジェクトが成功する可能性やプロジェクト遂行の効率性を高める効果が期待できる。新規事業やシステム開発といった重要なプロジェクトに今回紹介した手法やスキルを役立ててみよう。

プロジェクトマネジメントでよくある質問

Q.プロジェクトマネジメントとは、具体的に何をする?

A.プロジェクトマネジメントとは、目標達成に向けてプロジェクトを効果的に計画、実行、監視、制御し、完了させるための一連の手法や手順のこと。具体的には、プロジェクトの目的や要件を明確化し、スケジュールやリソースを計画・配分する。

またリスク管理やステークホルダーとのコミュニケーションを行い、問題発生時には適切な対応策を講じる。プロジェクトの進捗状況を定期的に監視・評価し、必要に応じて計画を修正することもプロジェクトマネジメントの仕事に含まれる。

Q.プロジェクトマネジメント力とは何を指す?

A.プロジェクトマネジメント力とは、プロジェクトを円滑に進め、期限内に品質とコストを満たす成果物を届けるためのスキルや能力を指す。これには、計画立案・実行・監視・評価・調整などのマネジメント技術やリーダーシップ、コミュニケーション能力、問題解決力、リスク管理力、ステークホルダーマネジメント力などのソフトスキルが含まれる。

Q.プロジェクトマネジメントは誰にできる?

A.プロジェクトマネジメントは、専門的な知識やスキルを身につけることで、誰でも習得することが可能である。ただし効果的なプロジェクトマネジメントを行うためには、実践経験や継続的な学習が重要。またチームの協力やステークホルダーとの円滑なコミュニケーションが求められるため、対人スキルやリーダーシップを鍛えることも大切である。

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文・鈴木 裕太(中小企業診断士)

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