何かしらのビジネスに携わっている人の多くは「PDCAサイクルを回す」という言葉を一度は耳にしたことがあるだろう。PDCAサイクルが何となく有用であることは理解していても「実際の回し方やメリット・デメリットまでは知らない」という人は少なくない。そこで今回の記事では、PDCAサイクルの意味や回し方、メリット・デメリットについて分かりやすく解説する。
目次
PDCAサイクルとは
PDCAサイクルとは、「Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Action(改善)」という流れを繰り返し行うことで業務品質の改善(向上)を目指すツールである。「繰り返し行う」というのは、Action(改善)までひと通り完了したらその結果を踏まえて再びPlan(計画)から始めるという意味だ。元々は1950年代に品質管理の先駆者であるデミング氏が提唱したツールであった。
しかし近年は、品質管理のみならずマーケティングや営業などビジネスの幅広い場面で用いられるようになっている。
PDCAサイクルの回し方
では一体、PDCAサイクルはどのように回していくものだろうか。この章では、PDCAサイクルの回し方を順番に沿って解説する。
Plan(計画)
PDCAサイクルでは、はじめにPlan(計画)から始める。Plan(計画)のプロセスでは、業務目標を設定すると同時に目標を完遂するための行動計画を策定。例えば新規顧客の獲得がテーマならば「月間の受注数50社」といった目標が考えられるだろう。また50社の受注を完遂するための方法やスケジュール、各メンバーが行うべきことなどを細かく策定することも必要だ。
計画の策定にあたっては、有名な「5W2H」のフレームワークが非常に有用である。5W2Hでは、以下の7つの観点で考えることで抜け漏れがなく質の高い計画を策定することが可能だ。
・Who(誰が)
・What(何を)
・When(いつ)
・Where(どこで)
・Why(なぜ)
・How(どのように)
・How much(いくらで)
Do(実行)
2つ目のプロセスは、Do(実行)である。Do(計画)は、計画した内容を実際に遂行するプロセスだ。実行段階を行うにあたっては、以下2つの用心すべきポイントがある。
・計画通りに行う
そもそもPDCAサイクルは、試行錯誤を繰り返すことでより優れた施策や品質を実現するためのツールである。当初策定した計画通りに行動しないと「そもそも計画自体が正しかったかどうか」について判断ができない。その結果、Check(評価)やAction(改善)が難しくなる。計画をより優れたものに改善することが重要であるため、必ず計画通りに行動しなくてはならない。
・遂行した結果を詳細に記録する
結果を詳細に記録しておかないと「どのように計画を改善すべきか」について検討しにくくなってしまう。計画のどこに問題があったかをクリアにするためにも遂行結果は数値で確実に残しておきたい。
Check(評価)
3つ目のプロセスは、Check(評価)である。Checkでは、計画通りに遂行できたか(目標を完遂できたか)を測定し、できていない場合にはその原因を探っていく。計画通りに遂行できた場合には、当初策定した計画や施策が有用であることを意味する。成功した要因をクリアにしたうえで必要に応じてより良い数値目標を完遂するために計画をブラッシュアップすると良いだろう。
一方で計画通りに遂行できなかった場合には、その要因を入念に考えることが重要だ。例えば「新規顧客の獲得」に関する計画(目標)を完遂できなかった場合「そもそも計画が実現困難であった」「営業の方法に問題がある」「営業パーソンの能力に問題がある」などあらゆる原因が考えられる。複数ある候補の中から計画の未遂に直結する要因を正確に見極めることが必要だ。
PDCAサイクルによる改善の質を高めるうえでは非常に肝要となる。
Action(改善)
4つ目のプロセスは、Action(改善)である。Actionでは、Check(評価)のプロセスで判明した内容を踏まえて問題点をどのように改善するかを考えていく。例えば計画に無理があったことが問題であるならばより実現可能な計画に変えることが有効な改善策となる。複数の改善策がある場合には、効果やコスト面などを総合的に考えて最も優れた施策を実践すると良いだろう。
以上でPDCAサイクルにおける4つのプロセスは完了となる。Action(改善)までひと通り完了したあとは、その改善策を踏まえて再びPlan(計画)の策定やAction(実行)、Check(評価)などを行っていく流れとなる。
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PDCAサイクルを回すメリット2つ
たとえ有名なツールといえどもメリットがなければPDCAサイクルを活用する意味はない。そこでこの章では、PDCAサイクルを回すメリットを2点解説する。
1.何をすべきかが明確になる
1つ目のメリットは、会社や各メンバーが行うべき課題が明確となることだ。目標や計画を策定しないと最終的に完遂すべきゴールとはズレた行動をしてしまったり何をすべきか分からずに時間やコストを無駄にしてしまったりするリスクがある。一方でPDCAサイクルを回せば緻密に策定した計画に沿って行動するため、組織全体または各個人が行うべきことが明確となる。
その結果、ゴールに向かって正しい行動を行えるだけでなく悩む時間も削減できるだろう。
2.効率的に課題解決や目標達成を実現できる
2つ目のメリットは、効率的に課題解決や目標完遂を実現できることだ。PDCAサイクルを活用しないと課題の解決や目標の完遂に向けて手当たり次第に思いついた施策を試すことになる。その結果、ある施策が失敗しても施策の失敗要因や改善点を把握できないまま次の施策を試すことになりかねない。つまり失敗する要因が分からない状態のまま行動し続けることになるのだ。
そのためいつまで経っても課題の解決や目標の完遂を実現できない可能性が高い。一方でPDCAサイクルを回せば一つ一つの施策を遂行し終えた段階で改善すべき点や失敗要因などをクリアにしたうえで次の計画を策定することができる。そのためPDCAサイクルを回す回数が増えるほど着実に課題解決や目標の完遂に近づくことが期待できるだろう。
PDCAサイクルのデメリット(問題点)3つ
PDCAサイクルは、有用なツールだがメリットばかりではなくデメリットもある。PDCAサイクルを活用する際は、以下に挙げた3つのデメリットに用心しなくてはならない。
1.PDCAサイクルを回すことが目的となりがち
ビジネスの現場では、PDCAサイクルを回すことが目的となりがちな点がデメリットだ。本来PDCAサイクルは、目標の完遂や業務の改善を目的に活用する「手段」に過ぎない。しかし「PDCAサイクル」という用語がスローガンのように言われ続けることでPDCAサイクルを回すことが最終的な目標となっているビジネスパーソンは少なくない。
PDCAサイクルを回すことを重視するあまり本来の目的を見失ってしまうリスクがあるので注意が必要だ。
2.革新的なアイデアが生まれにくくなる
PDCAサイクルは、最初に立てた計画を基に小さな改善を積み重ねていくツールである。そのためPDCAサイクルに頼りすぎると革新的なアイデアが生まれにくくなってしまう。まったく新しい商品やサービス、業務プロセスなどを生み出すことが目標ならば、PDCAサイクルを回すことよりも顧客や現場のメンバーが持つ意見や発想を重視するのが良いだろう。
3.業務量が増えてしまい、かえって非効率的となる場合もある
PDCAサイクルの活用に際しては「業務量の増加」というデメリットにも注意しておきたい。PDCAサイクルを回すと計画の策定や結果の評価、改善策の考案など通常よりも行うべき業務が増える。つまりPDCAサイクルを回すことに労力や時間が割かれてしまいかえって目標の完遂までにかかる時間や労力が増える可能性があるわけだ。
保有する時間や労力などに余裕がない際には、まずは本来行うべき業務に集中したほうが良いだろう。またPDCAサイクルに費やす労力や時間を少なめに設定しておくのも一つの手である。
PDCAサイクルをうまく回すコツ3つ
最後にPDCAサイクルをうまく回すためのコツを3点紹介する。実務でPDCAサイクルを活用したい人はぜひ参考にして欲しい。
1.明確な目標から逆算してPDCAサイクルを回す
PDCAサイクルは、目標の完遂を目的に回すものである。そのため最初に明確な目標を設定し、それを基に計画の策定や実行、評価などを実施することが必要だ。明確な目標なしにPDCAサイクルを回すと目標の完遂に効果的な改善策が得にくくなるので用心しなくてはならない。
2.期間を限定する
期間を限定することもPDCAサイクルの効果を高めるうえでは不可欠である。例えば「売上高を2倍」などと期間を設定していない目標だと「いつまでに何をすべきか」が明確とならない。その結果、Plan(計画)の部分が漠然としたものとなってしまい、その後のDo(実行)やCheck(評価)、Action(改善)にも支障をきたす恐れがある。
一方で期間を限定すれば「誰が、いつまでに、何をすべきか」が明確だ。その結果、計画を完遂できない原因が明確となり、より的確な改善策を見いだすことが可能となる。また計画一つあたりのサイクルを短く設定することで目標完遂までの時間を短縮化する効果も期待できるだろう。
3.サイクルを回し続ける
PDCAサイクルは、なるべく短期間で多く回し続けることが重要である。なぜならPDCAサイクルは毎回のサイクルで得られた改善点を踏まえて次の計画を策定するため、回すほど施策の精度が高まるからだ。回せば回すほどより優れた施策を遂行できるようになり、結果的に目標の完遂や課題の解決に近づいていくだろう。
PDCAサイクルの成功例
PDCAサイクルは、企業で実際にどのような形式で利用されているだろうか。ここからは、企業で行われているPDCAサイクルの実践例のうち成功したケースを2例紹介する。
無印良品
無印良品のPDCAサイクルは、仕組みやマニュアルを作ったあとも常に手を加える仕組み作り・ツール導入などに力を入れ、常にPDCAサイクルを回すよう工夫した。まずPDCAサイクルの回し方として「P」から始めると決め打ちせず急を要する場合は、「Dから始めてC>A>P>Dと回していく」といった方法を採用。目の前の「やるべきこと」の実行を重視し変革を促していったという。
また店舗づくりのノウハウを集めた業務マニュアル「MUJI GRAM(ムジ グラム)」や業務基準書を丁寧に作成。その後、委員会を作ってマニュアル類のチェックと改革案策定を行い、CとAを回せる組織と運用ルールを作成してPDCAサイクルを回し続けることに成功している。
リクルート
リクルートでは、2種類のPDCA事例がある。1つ目は、新人研修におけるPDCAサイクルで毎週の業務量を決めてメンタと1対1で日々の業務を振り返り指導する方法だ。毎日フィードバックを受けた新人社員は、PDCAサイクルの基本を身に付ける。
2つ目は、営業における「ヨミ表」を使ったPDCAサイクルだ。ヨミ表では、案件ごとに達成見込み度をランク分けして可視化し、どの商談を優先するかを明確化することで業績アップに成功している。
PDCAに代わる概念OODAループ
現在は、PDCAに代わる概念としてOODAループが注目されている。ここでは、OODAループの概念やPDCAとの違いについて解説していく。
OODAループとは
OODAとは「Observe(観察)→Orient(方向付け)→Decide(判断)→Action(行動)」という流れを繰り返し行うことで業務品質の改善(向上)を目指すツールの一つ。OODAは「ウーダ」と読む。OODAループでは、OODAの作業を終えたあとOODAの結果を振り返る「ループ」というステップが加わる。OODAループの各ステップを簡単に紹介する。
・Observe(観察):物事の本質を観察する
・Orient(方向付け):状況を把握して自分なりの方向付けを行う
・Decide(判断):行動する・しないも含めてどうするかを決める
・Action(行動):成果が出るまで行動する
・ループ(振り返る):OODAの結果を見直す
ループ(振り返る)のステップは、慣れてくれば省略も可能である。OODAループの大きな特徴は、Action(行動)から次のObserve(観察)まで時間を空けず、素早く何回もループを回す点だ。
PDCAとOODAの違い
PDCAは、結果やプロセスが重視されるフレームワークで品質改善の場面で役立つ。PDCAサイクルを回すには、それなりの時間が必要になるため、中長期の計画を立てて成長したいケースでフィットする。一方スピード重視のOODAは、意思決定に役立つ思考方法だ。市場動向や顧客ニーズの把握などスピード感を持って観察や判断が必要になる場面では、PDCAサイクルよりOODAループのほうが適している。
PDCAサイクルに関するQ&A
Q.PDCA どういう意味?
A.PDCAとは「Plan(計画)」「Do(実行)」「Check(評価)」「Action(改善)」の頭文字を取った造語である。PDCAサイクルとは、これらのステップを「Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Action(改善)」の順番で繰り返し行うことで業務品質の改善(向上)を目指す手法の一種だ。
Q.PDCAの分かりやすい例は?
A. PDCAサイクルの身近な例としてダイエットを例にとり紹介する。
Q.PDCA はなんて読む?
A.PDCAとは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)の頭文字を取った略語でアルファベットそのまま「ピーディーシーエー」と読む。PDCAの順番で作業を進め、AからまたPへ戻って継続的に改善を進める。
Q.PDCAをうまく回すポイントとは?
A.PDCAをうまく回すポイントは、以下の3点である。
- 明確な目標から逆算してPDCAサイクルを回す
- 期間を限定する
- サイクルを回し続ける
PDCAサイクルの目的は、目標の完遂だ。明確な目標がないとPDCAサイクルを回しても効果的な改善策が得にくい。また最終目標の期間を限定しないと実行計画があいまいになるだろう。さらにPDCAサイクルは、できる限り多く回すことで目標を完遂しやすい。これらのポイントを意識して実践すればPDCAサイクルをうまく回せるようになる。
Q.PDCAマネジメントにおいてACTとはどのような意味か?
A.PDCAのAは「Action」とする場合と「Act」とする場合がある。どちらも意味的には「改善」だ。Plan・Do・Checkは、すべて動詞なので名詞のActionではなくActにするのが正しいという意見もあるが、どちらでも意味的には同じである。
例えばAを「改善案の策定」とするとPの計画と混同するかもしれない。Aは、あくまでも目標に、より近づけるための改善案策定であり、その改善案を実際に実施するためのスケジュール作成をPと捉えるとより理解しやすいだろう。
Q.PDCAサイクルとOODAループの違いは?
A.PDCAサイクルは「Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Action(改善)」という流れを繰り返し行うフレームワークで品質改善の場面で役立つ。PDCAサイクルを回すには、時間がかかるため、中長期の計画を立てて対応するケースに適している。
一方OODAループは「Observe(観察)→Orient(方向付け)→Decide(判断)→Action(行動)→ループ(振り返り・慣れれば省略可)」という流れで実施する意思決定に役立つ思考方法だ。市場の動向や顧客ニーズの把握などスピード感を持って観察や判断が必要になる場面では、OODAループが適している。
PDCAサイクルはあくまで課題解決のツール
今回紹介したようにPDCAサイクルは「課題の解決や目標完遂を最短ルートで達成するためのツール」である。うまく活用できれば収益の向上や業務改善など事業の拡大に大きく貢献するだろう。ただしPDCAサイクルはあくまで目標完遂のための手段に過ぎない。PDCAサイクルを回すことが目的となり本来の目的を見失わないように十分に注意が必要だ。
うまく回すコツを参考にぜひ自分の事業でPDCAサイクルを活用して欲しい。
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文・鈴木 裕太(中小企業診断士)