【第4回】商品のネーミングのためにプロを雇うべき?それとも自分たちで考えるべき?

THE OWNER特別連載「経営者のお悩み相談所 〜経営コンサルタントが一問一答!〜」第4回目は「商品のネーミングのためにプロを雇うべきか、それとも自分たちで考えるべきか」という経営者のお悩みについてお答えします。

▼経営者様からのご質問はこちらで受け付けております!
https://the-owner.jp/contents/the_owner_questions

【今回のご質問】
商品のネーミングを考える際は、ネーミングのプロを雇った方が良いでしょうか?

「プロを雇うべきか、自分たちで取り組むべきか」。色々な場面で、こうした悩みを抱える経営者は少なくないでしょう。今回は商品のネーミングという「センスが問われる」テーマ。まずはメリット・デメリットを考えてみましょう。

日沖 博道(パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長)
日沖 博道(パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長)
【略歴】アーサー・D・リトルでシニアマネジャー、日本ユニシスで統括パートナー、アビームコンサルティングでディレクターを務める。経営コンサルティングと事業会社経営(ベンチャー企業、合弁企業など)を交互に経験し独立、2012年より現職。
【学歴】一橋大学 経済学部卒、テキサス大学オースティン校 経営大学院修士(MBA)
【専門領域】事業戦略、マーケティング戦略、ビジネスモデル、BPRとBPM
【最新著】『ベテラン幹部を納得させろ!~次世代のエースになるための6ステップ~』
【パスファインダーズ社】少数精鋭の戦略コンサルティング会社として、新規事業の開発・推進・見直しを中心としたコンサルティングを提供。
URL:https://www.pathfinders.co.jp/

原則は「テーマと自社リソース次第」だが、迷う理由もそれなりに

質問者の業種が分からないのでこの場合の「商品」がどんなものか具体的には分からないのですが、編集部要請の「BtoC向けの有形商材で想定して」で考えましょう。この場合、「プロを雇うべきか」というのは「プロ人材を正社員で採用する」ことではなく、「外部の専門家に依頼すべきか」という意図だと考えます。また、質問のニュアンスから、「従来は社内でネーミングしていたが(外れることが多いので)社外に頼んだほうがいいだろうか」という話ではなく、「今回初めて自社商品を出す(ので社内には専門家はいない)」という状況だと推察されます。

こうした「外部に依頼すべきか、自社内で何とかすべきか」という選択は経営学では”Make or Buy” questionという汎用的な研究テーマになっています。部品を自製するか外注するかは(成功確率を含めて)どちらがトータルで安く済むかで考えるのがオーソドックスなのですが、専門家市場が成り立っているようなサービスについてだと、通常はその課題テーマ分野の経験者が社内にいれば優先的に社内で検討し、いなければ社外の専門家に頼むということが原則です。要は「テーマと自社リソースが合致するかしないか」次第です。しかし本件のような「商品ネーミング」という課題テーマに関しては、たとえ経験者が社内にいなくとも、ある程度迷うのがある意味当然なのです。

経営者が迷う理由は以下のように幾つかあります。

1)「センスがものをいう」というのは分かっていても、もしかすると自社の従業員でもできるのではないか、とも思える(美大出身者などがいればなおさら。それに事実として、製薬会社の小林製薬のように自社内でネーミングを考えて成功している事例も少なくない)
2)このあとも幾つか新商品を出していくなら、自社でネーミングを考えることができる人材を育てておいたほうが長い目で見ていいのでは、とも思える
3)仮に社外の専門家に頼むとしても、その妥当な相場観が分からないのが普通(要は、初めてだとちょっとビビッてしまう)

いきなり判断しようと考えると迷うばかりだと思います。まずは2つのオプションのメリットとデメリットを洗い出すことから始めることをお薦めします。下表に、典型的に想定すべきものを挙げました(業界や個社の事情、または当該商品によってはこれ以外にも重要な要素があるかも知れません)。