ハウステンボス
(画像=snowdrop/stock.adobe.com)

「ハウステンボス」は、経営状況がどん底の状態から息を吹き返した。インバウンドの追い風もあり絶好調だったが、このほど赤字に転落した。新型コロナウイルスの影響だ。同社が発表した最新の決算の数字から、経営にどのくらいのダメージがあったのか、解説していこう。

どん底から復活を遂げたハウステンボスについて

ハウステンボスについて、最初に簡単におさらいしていこう。ハウステンボスは長崎県佐世保市にあるリゾート施設で、運営会社はハウステンボス株式会社だ。オランダ風をコンセプトにアトラクションや飲食店、宿泊施設があり、1992年に開業した。

ただ、初期投資が膨大だったこともあって経営がうまくいかず、2003年に経営破綻している。しかし、旅行大手のHISが2010年から経営再建に向けた支援を行い、見事復活を遂げた。2019年9月期は入場者数254万人、売上高255億円、純利益が56億円という数字を残している。

2020年9月期の最終損益は黒字から赤字に転落

しかし、2020年12月11日に発表した2020年9月期(2019年10月~2020年9月)の連結業績は一転して厳しいものとなった。まず売上高は、前期比52.1%減とほぼ半減し、122億5,800万円にとどまった。

営業利益と経常利益、最終損益も黒字から赤字に転落している。営業利益は52億9,500万円のプラスから19億9,800万円のマイナスに、経常利益は53億5,900万円のプラスから12億8,900万円のマイナスに、そして最終損益も56億1,000万円のプラスから24億3,800万円のマイナスに転じている。

ちなみに、ハウステンボスを楽しむパッケージツアーを提供するエイチ・テイ・ビイ観光などを含めた、ハウステンボスグループ5社の連結業績も厳しい状況だ。売上高は前期比51.8%減の146億2,000万円で、営業利益と経常利益、そして最終損益はいずれも赤字に転落している。

56日間の休園、人々の外出自粛、インバウンドのゼロ化が響く

ハウステンボスが赤字に転落した理由は、他でもなく新型コロナウイルスの感染拡大の影響だ。まず感染防止の観点から2〜5月に計56日間の休園を余儀なくされた。これにより入場者数が大きく減り、結果として入場者数は前期比45.6%減の138万6,000人にとどまった。

もちろん休園の影響だけではない。56日間といえば日数でいうと1年365日の15%程度だ。しかし入場者数は45.6%減となった。つまり外出自粛ムードでテーマパークを訪れようとした人が減ったことや、インバウンド客がほぼゼロになったことが大きく響いたと言える。

ハウステンボスは今期2021年9月通期の業績見通しについては、「新型コロナウイルス感染状況がどこまで影響を及ぼすか不明であるため、未定とさせていただきます」としている。仕方がないところだろう。

現状、新型コロナウイルスに関してはワクチン開発に関する明るいニュースも出てきたが、一方でイギリスでは感染力が強い変異種が見つかるなど、予断を許さない状況が続いている。ハウステンボスが将来を楽観視できる状況にはまだ全くなっていない。

厳しい中でも取り組んだことが、復活を早める鍵に

ハウステンボスはこのような厳しい決算となったが、一方でこのような状況の最中にさまざまな取り組みを行ったことにも注目したい。

例えば、「1DAYパスポート」の充実化だ。別料金だった観覧車やジュラシックアイランドなどのアトラクションを1DAYパスポートで利用できるようにしたことが、来場者満足度の向上につながった。

また、コロナ禍だからこそできる取り組みとして、EC(電子商取引)サイトの充実を図り、品揃えも充実させた。広場のレイアウト変更やイベントと連動した商品展開などにも努めたようだ。コロナ禍の収束後にこのような取り組みが実を結べば、ハウステンボスの早期の復活に期待が持てそうだ。

コロナ対策を徹底して実施したことも大きい。接触感染や飛沫感染を防ぐために外部講師を招き、スタッフに対する講習の実施や実践を徹底した。その結果、入場者の園内感染とスタッフの感染がいまのところ確認されていないという成果を挙げている。

そして、このようなノウハウはコロナ禍の収束後も活きる。ニューノーマルの時代においては、たとえ何らかの感染症が拡大していない状況下でも、人との距離間などを気にする人が多いはずだ。そのため感染対策がきちんと行われているハウステンボスに対する好感度が上がることが考えられる。

業績改善に向けた期待感は大きい

大型リゾート施設であるハウステンボスが新型コロナウイルスの影響を受けるのは、致し方ないことであると言える。しかしハウステンボスは、コロナ禍においてもがき、悩み、未来につながる取り組みも行っており、業績改善に向けた期待感は大きいと言えそうだ。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)

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