WORDS by EXECUTIVE
(画像=piter2121/stock.adobe.co)

「AI(人工知能)は間違いなく都市交通の安全性と効率性に革命を起こす」——。中国の最大都市・上海で新たに自動運転タクシーのサービス実証をスタートさせた中国の滴滴出行(Didi Chuxing)。同社の程維CEO(最高経営責任者)はこう強調した。

AIを活用した移動サービスでヒューマンエラーによる交通事故が起こらない世の中を創り出すことに意欲を示しつつ、人の運転を伴わずに24時間運行できる自動運転タクシーを実用化することで車両の活用効率を高めるということも見据えた発言と言える。

連載「経営トップ、発言の真意——WORDS by EXECUTIVE」、今回はライドシェア最大手・滴滴出行の程維CEOの発言に焦点を当て、将来有望とされている自動運転タクシーを巡る業界動向などについて解説していく。

自動運転と安全、自動運転タクシーと収益性

運転をコンピュータに任せるということに、不安を覚える人も少なくないかもしれない。ただ、人間なら「死角」となる範囲もカバーできるセンサーを車両に搭載し、自動運転の「脳」に相当するAIにさまざまな交通シーンを学習させれば、事故のリスクを極限まで抑えることができる。

そのため、自動運転技術の実用化によって交通事故が減るというのが、現在の国際社会における定説となっている。トヨタも自動運転機能を市販車に将来搭載することで、「交通事故死傷者ゼロ」の社会を創ることを目指している。

また、人々の自動車に対する考え方が「所有から利用へ」に変わりつつあることを考えると、自動運転タクシーのビジネスの有望性は非常に高いものと考えられる。

自動運転タクシーは人件費が掛からないことから運行コストも抑えられ、いまのタクシーより安い料金で人々が自動運転タクシーを頻繁に利用する未来が訪れることが予想される。

こうした自動運転のメリットや有望性に着目し、滴滴出行も自動運転の技術開発やサービス開発に取り組んでいるわけだ。

将来、ライドシェアサービスを自動運転タクシーに切り替える!?

これはあくまで推測だが、滴滴出行は現在ライドシェアサービスを展開しているが、将来はそのサービスを全て自動運転タクシーに切り替えるかもしれない。

ライドシェアはタクシーと同様、人の労働により成り立つものであるため、料金が一定以下にはならない。一方でライドシェアを将来全て自動運転タクシーに切り替えれば、前述の通り、もっと安い利用料金でユーザーに移動サービスを提供できる。

安い利用料金で提供できるということは、それだけ多くのユーザーを惹き付けることができるということだ。移動サービス事業者としての滴滴出行の確固たる地位を維持し続けることに、自動運転タクシーのサービスの展開は大きく寄与するものと考えられる。

ライバルも多い自動運転タクシービジネス

上海でスタートさせた自動運転タクシーの実証実験はまずは数十台の規模で展開されており、利用者に対し無料でサービスが提供されている。

可能な自動運転の程度を示す「自動運転レベル」では、上から2番目の「レベル4」での運行となる。このレベル4は、特定地域における自動運転中は完全にシステムが操作を司るという水準で、いまは念のため運転席にセーフティドライバーが座っているが、いずれは完全無人にしていく計画だ。

ただ、アメリカではGoogleからスピンアウトしたWaymoが2018年12月にレベル4の自動運転タクシーをすでに商用化し、セーフティドライバーを乗せない形での運行も一部で実現させている。中国国内でもWeRideなどのスタートアップ企業やネット検索最大手・百度(Baidu)などが自動運転タクシーの事業開発に取り組んでおり、ライバルは多い。

将来有望なビジネスには多くの企業が参入する。そんな中、滴滴出行がどれだけ存在感を高めていけるか、注目だ。

経営トップ、発言の真意
(画像=THE OWNER編集部)クリックすると連載TOPページへ飛びます