WORDS by EXECUTIVE
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「世界中で受け入れられているなっていう風に思いました」——。

ユニクロを運営するファーストリテイリングの2019年8月期決算。ユニクロの通期の営業利益において海外部門が国内部門を上回り、柳井正会長兼社長は2019年10月10日の記者会見でこのように手応えを語った。

日本の国内市場が縮小傾向にあるなか、ユニクロの海外での攻勢はさらに続くものとみられる。2027年ごろに人口が世界一となることが予測されるインドへの1号店出店も果たし、ファッションの本場・ヨーロッパでの出店も増やしていく。

連載「経営トップ、発言の真意——WORDS by EXECUTIVE」、今回はファーストリテイリングの柳井正会長の発言を取りあげ、海外部門を中心にユニクロの事業戦略に迫る。

2019年営業利益、国内は1024億円、海外は1389億円

ファーストリテイリングの2019年8月期の通期の決算は、相変わらず好調だった。営業利益の伸びは鈍化したものの前期比9.1%増を維持し、金額にすると2,576億3,600万円を確保した。こうした近年の好調ぶりを下支えしているのが、ユニクロの海外部門だ。

通期業績における営業利益では、ユニクロの国内部門が前年比13.9%減の1,024億円と苦戦しているのに対し、海外部門は同16.8%増の1,389億円と大幅増を記録し、ユニクロの営業利益として初めて海外が国内を逆転した格好となった。

「無限の可能性を持つ大市場」に進出

ユニクロの海外部門では特に「グレーターチャイナ」(中国本土・台湾・香港)での事業が営業利益の伸びを下支えしている形だが、東南アジアやオセアニア地区の貢献度も高い。2019年9月にはイタリア初店舗をミラノで開業し、開店当日にはオープンを待つ客で数百メートルの行列ができるほど現地で話題になった。

10月初旬にはインド初店舗をデリーで開業したユニクロ。柳井会長は現在既に13億人の人口を擁するインドを「無限の可能性を持つ大市場」と評している。同社はインドについて、今後の人口の伸びに加えて27歳という平均年齢の若さにも着目しており、柳井会長は「飛躍的な成長が期待できる国」とも語っている。

同社は2019年の秋には新たに2店舗をデリー近郊で開業。インドにおいてグローバル市場向けの経営人材を多数採用していることも発表している。インドを「売上基地」としてだけではなく、「人材基地」としてもとらえているようだ。

「EC事業」がさらなる躍進の武器に

ユニクロの店舗数においても、既に海外の方が多くなって久しい。2019年8月末時点で、国内店舗は817店、海外店舗は1,379店舗だ。国内店舗数は微減傾向にある一方、海外店舗はかなりのペースで増えている。

海外店舗で特に多いのが中国大陸で711店舗となっており、韓国が188店舗、台湾が67店舗、フィリピンが58店舗、アメリカが51店舗、タイが50店舗、マレーシアが49店舗と続く。(※2019年9月時点)

今後は海外におけるEC(電子商取引)事業の展開を拡大することも発表している。現在のEC事業展開国は21カ国・地域となっており、こうした展開国を今後さらに増やしていく考えのようだ。

このEC事業の売上高はグループ全体で年平均31%成長しており、ファーストリテイリングの次なる躍進の武器となることは間違いなさそうだ。

ユニクロの世界戦略は今後さらに加速

「世界に出ていくことが始まるなという実感を持った」——。営業利益が国内を上回ったことについて、こうも語った柳井会長。その言葉通り、ユニクロの世界戦略は今後さらに加速していくとみられる。

「ユニクロ風」とも言えるビジネス戦略を展開する海外のライバル企業も増えるなか、国外における競争は激しさを増すことが予想される。まずはインド事業の成功が同社の世界戦略の一丁目一番地になるとみられるなか、どこまでグループ全体で売上を積み増していけるか注目だ。

経営トップ、発言の真意
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