事業用の固定資産を有している場合、固定資産税の納付が義務付けられている。毎年6月頃に市町村から届く固定資産税の請求書に、戦々恐々とする人もいるのではないだろうか。ここでは、固定資産税がどのような税金なのか、また、固定資産税の会計処理のやり方について解説する。
目次
固定資産税はどのような税金か
固定資産税は1月1日現在の土地、建物、償却資産といった「固定資産」の所有者に対し、その固定資産がある市町村が課税する税金である。
固定資産税はどのようなものか、その特徴や性質について説明する。
固定資産税には2種類ある
固定資産税は、大きく2つに分類される。
- 土地や家屋に対して課税される固定資産税
- 償却資産に対して課税される固定資産税
いずれも、1月1日現在の所有者に対して課せられるという共通点はあるものの、対象となる資産や申告の仕方などに違いがある。
固定資産税額の確定方法が異なる
これら2種類の固定資産税の違いは、こちらから申告して税額を確定させるか、市町村が調査して税額を決定されるかという点にある。
土地や家屋に対して課税される固定資産税は、市町村が土地や家屋を調査して、その結果に基づいて税金を請求する形式になっている。
一方で、償却資産に対して課税される固定資産税は、償却資産を持っている会社や個人事業主が、1月1日現在に所有する固定資産やその内訳を申告することによって税金額を申告し、後日請求受けてから支払うことになる。
土地や家屋の固定資産税
土地や家屋の固定資産税は、1月1日現在で所有している土地や家屋に対して課税される税金であり、それらの内訳は以下の通りである。
土地:宅地、田畑、山林、牧場等
家屋:住家、店舗・工場、倉庫、その他の建物
土地や家屋の固定資産税の課税額
土地や家屋に課税される金額は、以下の計算式で算出される。
課税標準×税率(通常は1.4%)
ただし、土地は課税標準の金額が30万円、家屋は課税標準の金額が20万円以下の場合は課税されない。
課税標準は、通常その土地や家屋の評価額を基にして決められる。
土地の評価額は、固定資産評価基準に基づいて、路線価(相続税法のそれとは異なるもの)等を使ってその価格が決定される。
- 家屋については、固定資産評価基準に基づいて、建築時に市町村の担当者が家屋を検査した上でその価格が決められる。
また、価格は3年に一度の割合で変更がなされる。この変更がなされる年度を基準年度といい、前回の基準年度は2018年である。
償却資産の固定資産税
償却資産の固定資産税は、1月1日現在所有している資産の中で、土地や建物以外の事業用途の資産(償却資産)に対して課税される税金である。
償却資産に対して課税されるが、自動車税や軽自動車税に該当するものは除外される。
また、家屋と一体にされることの多い以下のようなものも、償却資産となる。
- 道路の舗装
- 庭園
- 門、塀、外構工事
- 看板
償却資産の固定資産の課税額
償却資産に課税される金額は、以下の計算式で算出される。
課税標準×税率(東京都の場合は1.4%)
ただし、課税標準の金額が150万円に満たない場合は、免税点となるため課税されない。
課税標準の基となる評価額は、償却資産の取得価額を減価償却した後の金額で決められる。償却の方法は、法人税や所得税で用いられている定率法に近い方法が用いられ、減価償却した後の評価額は、以下の計算式によって算出される
計算式の考え方としては、前年中に購入したものについては、実際の購入が何月であっても年の真ん中で購入したものとされ、償却額が1年通じて持っていた場合の半分の割合となる。
また、減価償却後の評価額が取得価格の5%未満になった場合は、取得価格の5%とされる。
課税標準は、資産ごとの評価額を足し合わせて千円未満を切り捨てた金額となる。
固定資産税は経費になる?
固定資産税を支払った時に気になるのが、経費になるか否かである。
結論から言えば、固定資産税は、会社であっても個人事業主であっても経費になる。事業用の資産を使うことによって発生する費用であるため、事業に関連した費用とされるからである。
固定資産税が経費とならないケース
固定資産のうち、個人事業主が家事使用もしているものについては、その分は事業に関連しないものであるため経費計上することはできない。
また、固定資産税の納付遅れによるペナルティとして課せられる延滞税については、経費にすることができない。これは個人や法人を問わず、さらに言えば固定資産税以外の税が原因であっても、同様に経費計上はできない。
固定資産税の勘定科目や会計処理
固定資産税の勘定科目や会計処理について解説する。
勘定科目はほとんどの場合「租税公課」
固定資産税を計上するときは、土地・家屋の固定資産税、償却資産の固定資産税を問わず「租税公課」の科目に計上される。
固定資産税の計上時期や計上金額
計上は原則として固定資産税の決定があった時に、その決定額を費用計上する。その場合、支払いはこの時点では行われていないので、相手は未払費用となる。
ただし、納税する度に計上することもでき、その場合は、納税したときに実際に納めた金額を計上することになる。
なお、個人事業主の場合、対象となる資産に家事使用しているものがzあれば、その分は差し引いて費用計上しなければならない。
例外:物件を売買したときの清算分
不動産物件を売買した際には、慣習上、売買時点から年末(地域によっては翌年3月31日)までの期間に対応する固定資産税について、買主から売主に支払うことによって、お互いの不動産取得税の負担を日割りにすることとなる。
このような行為は「未経過固定資産税」とされ、税金そのものではなく不動産物件の売買価格を構成するものとなっている。何故ならば、未経過固定資産税は、国や地方公共団体に対して支払われる税金ではなく、私人間で行われる利益の調整であるからである。
そのため、未経過固定資産税は、不動産業者でなければ、売手は売却代金として固定資産売却益または固定資産税売却損として計上し、同じく買手は固定資産の該当科目について組み込むこととなっている。
消費税の処理
固定資産税は消費税が課税されるのであろうか。
結論から言えば、通常、固定資産税は消費税の対象外であり、消費税は課税されない。
ただし、名目が固定資産税であったとしても、未経過固定資産税の取引については税金の支払いではなく、私人間で行われる利益の調整であるため消費税が課せられる。
そのため、不動産物件を売買する際に行われる未経過分の清算については不動産物件の売買代金の一部として考えられるため、消費税の上では建物に関して言えば、課税対象となる。
固定資産税の減額
固定資産税は場合によって減額する制度がある。ここではそのうちのいくつかについて述べる。
住宅用地の減額
住宅用地(全部またはその大半を人の居住に供している土地)については土地の課税標準を減額することによって固定資産税を減額する措置がある。
その内容は以下の通りである
小規模住宅用地 (住宅用地で住宅1戸につき200平方メートルまでの部分) | 固定資産税評価額の1/6を課税標準にする |
一般住宅用地 (小規模住宅用地以外の住宅用地) | 固定資産税評価額の1/3を課税標準にする |
なお、すべて敷地の上にある建物についてすべて人が住むための住宅の場合は上表のとおりとなるが、そうでない場合(店舗併用住宅などの場合)は減額する金額が減ることがある。
新築住宅の減額
新しく住宅を建てた場合、最大で7年間の固定資産税の減免制度がある。
住宅について50平方メートル以上(貸家の場合は40平方メートル)280平方メートル以下の物件について、以下の年数について120平方メートルの部分について固定資産税が2分の1になる。
通常の建物 | 3年 |
3階建以上の耐火・準耐火建築物 | 5年 |
認定長期優良住宅 | 5年 |
3階建以上の耐火・準耐火建築物かつ認定長期優良住宅 | 7年 |
都市計画税と固定資産税の違い
固定資産税とともに課税される税金として都市計画税がある。これらの税金は、似ているようで異なる点がある。
都市計画税とはどのような税金か
都市計画税は、土地や家屋に課せられる固定資産税と同じく、1月1日現在所有している土地や家屋に対して課税される税金である。
固定資産税との違いは、固定資産税は全ての市区町村で課せられる税金であるのに対して、都市計画税は課税されないところもある点である。
また、税率も異なり、固定資産税は1.4%であるのに対して、都市計画税は各市町村によって異なる場合もあるが、東京23区の課税率は0.3%である。
勘定科目や会計処理は?
都市計画税は、税率や課税されるか否かという点で固定資産税とは異なるが、会計処理は固定資産税と同じであり、勘定科目は原則として租税公課に計上される。
また、会計処理は、原則として課税決定された時にその決定額を計上するが、納税した金額について計上することも可能である。
また、延滞税や家事使用見合いについても経費にできないことは固定資産税と同じである。
固定資産税を正しく会計処理しよう
今回は、固定資産税がどのような税金か、どのように会計処理を行うかについて説明した。
固定資産税についてまとめると、以下の通りである。
- 固定資産税は土地・家屋や償却資産に対して課税される
- 固定資産税はたいてい経費にできるが、事業用途外や延滞税は経費とならない
- 固定資産税の課税決定があった時に、租税公課勘定で課税額を計上する
本稿がお役に立てれば幸いである。
文・中川崇(公認会計士・税理士)