今それはアウトです!
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(本記事は、菊間 千乃氏の著書『今それはアウトです!〜社会人のための身近なコンプライアンス入門〜』=アスコム、2020年9月26日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

会社の宴会で若手に余興をさせる

今それはアウトです!〜社会人のための身近なコンプライアンス入門〜
(画像=「今それはアウトです!〜社会人のための身近なコンプライアンス入門〜」より)

「楽しくやっている」の陰にある「断れない雰囲気」に注意して

本人たちが楽しそうにやっていれば、パワーハラスメント(パワハラ)にはならないというのは早計です。やっている若手社員や部下は、本意ではないと思っており、職場の人間関係上仕方なく「やらされている」と感じ、強制と受け止めている可能性があります。

一般には、①優越的な関係を背景とし、②業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により、③労働者の就業環境が害されるものがパワハラに該当すると考えられています。

社内の宴会や社員旅行において、余興や宴会芸が場の雰囲気を和ませたり、社員相互の親交を深めたりする上で役立つという面も否定はできません。もっとも、余興や宴会芸が業務上明らかに必要かというと大いに疑問ですから、それを強制することはパワハラの類型の1つである「過大な要求」ととらえられるかもしれません

賠償が命じられた事例

実際の事例としては、会社が、営業目標を達成できなかった社員に対し、研修会で発表する際、その会を盛り上げる目的で特定のコスチュームを着用させたことは、社会通念上正当な職務行為とはいえないとして、裁判所は、会社に対し22万円の賠償を命じました。この事例でもう1つ注目される点は、当該社員はコスチュームの着用を明示的に拒否していないものの、拒否することは非常に困難であったと、裁判所が評価したことです

命じるほうは軽い気持ちでも、パワハラにあたるとして損害賠償責任が発生する場合があることに注意しましょう。また、たとえ裁判などにならなくても、就業規則違反として懲戒処分の対象になることもあり得ます。

本人の実力と関係ないことで待遇に差をつける

今それはアウトです!〜社会人のための身近なコンプライアンス入門〜
(画像=「今それはアウトです!〜社会人のための身近なコンプライアンス入門〜」より)

人事考課の裁量を超えると、降格が無効と判断されることも

人間誰しも好き嫌いはありますが、それを直接の理由に、部下の能力や成果とかかわりなく処遇を決めることには問題があります。

一般的に、誰を昇進させるかは企業の経営判断であるため、その前提となる人事考課・査定においては、使用者である会社側に幅広い裁量が認められると考えられています。しかし、完全な自由裁量ではありません。人事考課・査定の目的が不当である場合や、評価要素が著しくバランスを欠く場合、人事考課の裁量を超えているとして、降格などの人事が無効と判断されることがあります。

裁量を超える人事とは

では、今回のケースはどうでしょうか。「生意気で癇に障る」ということは、程度にもよりますが、個人の受け止め方にもよるところが大きいと思われます。必要な指導をし、是正する機会を与えずに、この点のみをもって降格させることは、人事考課の裁量を超え無効とされる可能性があります。また、個人的に共通点があるか、話が合うかなどは、そもそも業務とは関係ないですよね。

降格が無効と判断されれば、降格に伴い賃金が低下していた場合、その差額を求めて、その従業員が会社に対し訴訟を提起することも考えられます。また個人的な好みで不当な人事をしたとして、あなた自身が懲戒処分の対象にもなり得ます

同じように、個人的な好みで昇進させること(例えば、自分の大学の後輩であるという理由のみで、能力や成果を全く考慮することなく昇進させてしまうこと)もやはり問題です。

全員が納得のいく人事とは永遠のテーマかもしれませんが、公平、公正という視点は、忘れてはいけませんね。

今それはアウトです!〜社会人のための身近なコンプライアンス入門〜
菊間 千乃
弁護士法人松尾綜合法律事務所弁護士。早稲田大学法学部卒業。1995年、フジテレビ入社。アナウンサーとしてバラエティーや情報・スポーツなど数多くの番組を担当。2005年、大宮法科大学院大学(夜間主)入学。07年、フジテレビ退社。11年、弁護士登録(第二東京弁護士会所属)。19年、早稲田大学大学院法学研究科先端法学専攻知的財産法LL.M.コース修了(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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