今それはアウトです!
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(本記事は、菊間 千乃氏の著書『今それはアウトです!〜社会人のための身近なコンプライアンス入門〜』=アスコム、2020年9月26日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

空の領収証に金額を記入して会社に請求

今それはアウトです!〜社会人のための身近なコンプライアンス入門〜
(画像=「今それはアウトです!〜社会人のための身近なコンプライアンス入門〜」より)

支払った以上の額を経費で受け取るのは、会社に対する詐欺行為

バブル時代には経費が使い放題だったこともあり、水増し請求用に白紙領収書が発行される例もしばしばあったといわれています。さすがに昨今では随分珍しくなったのではないでしょうか。

さて、小料理屋に支払ったよりも多い金額を白紙領収書に記入し、水増し請求をしたこのケース。刑罰の対象になったり、会社から懲戒処分を受けることがあり得ます。

具体的にどのような刑罰の対象になるかというと、まず、あたかも記載した金額を支払ったかのように装って、実際よりも多い金額を受け取る行為は、詐欺罪(刑法246条)にあたる可能性があります。詐欺罪の法定刑は、10年以下の懲役です。

また、虚偽の金額を白紙領収書に記入し提出することは、有印私文書偽造罪(同法159条1項)および同行使罪(同法161条)に該当すると考えられます。この場合、3カ月以上5年以下の懲役の対象になります。

これらは、最初から水増し請求を目的に白紙領収書を用意させた場合も、領収書を受け取った後に金額欄が白紙だと気付いて水増しした金額を書いた場合も、変わりありません。

会社からも厳しい処分が?

以上の行為は、就業規則上の服務規律にも違反すると考えられます。特に、詐欺に該当するような経費の不正受給は、懲戒解雇を含む厳しい処分の対象となる可能性があります

安易な気持ちによる行為が、このように大ごとになる可能性があります。気を付けましょうね。

就業時間に株取引をする

今それはアウトです!〜社会人のための身近なコンプライアンス入門〜
(画像=「今それはアウトです!〜社会人のための身近なコンプライアンス入門〜」より)

勤務中は「職務以外のことはしない」のがルール。当たり前ですが……

老後の資産作りのために投資を始める方も増えているようです。株価が気になり、ついチェックしたくなってしまうかもしれませんが、就業時間中は控えたほうがよいでしょう。このような行為は就業規則違反として、懲戒処分の対象になることがあります。

決められた仕事を業務時間内にきちんと完了させるのであれば、誰にも迷惑はかからないという考え方もあるかもしれません。しかし、株価チェックのため使用するのが会社のパソコンの場合は、就業規則違反とされる可能性があります。多くの企業では、会社の所有するパソコンなどの備品類を業務以外の目的で使用することを就業規則で禁止し、業務用パソコンの使用についての規則も制定しているからです。

私物のスマホでもアウト

だからといって、私物のスマホなら就業時間中に株価をチェックして問題ない、ということにはなりません。多くの会社の就業規則では、勤務中は職務に専念することを定めており、使っている端末が会社のものか私物かを問わず、就業時間中に株価をチェックする行為が職務専念義務違反と扱われる可能性もあるからです。当然、懲戒処分の対象になる可能性も否定はできません。実際に、公務員の事例ではありますが、就業時間中にスマホで株取引をしたとして減給10分の1(3カ月間)の懲戒処分を受けた事例があります。

また就業時間中は、会社が外部に公表していない情報を入手しやすい状況であり、その状況での株取引は、インサイダー取引を疑われやすいともいえます。当然ながら、インサイダー取引は刑罰などの対象になりますので、注意しましょう。

今それはアウトです!〜社会人のための身近なコンプライアンス入門〜
菊間 千乃
弁護士法人松尾綜合法律事務所弁護士。早稲田大学法学部卒業。1995年、フジテレビ入社。アナウンサーとしてバラエティーや情報・スポーツなど数多くの番組を担当。2005年、大宮法科大学院大学(夜間主)入学。07年、フジテレビ退社。11年、弁護士登録(第二東京弁護士会所属)。19年、早稲田大学大学院法学研究科先端法学専攻知的財産法LL.M.コース修了(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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