矢野経済研究所
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2030年の国内車載ソフトウェア(4分野)市場規模は1兆3,140億円に達すると予測

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内外の車載ソフトウェア市場を調査し、 市場構造の変化推移、品目別市場動向、品目別市場規模推移、将来展望を明らかにした。ここでは、国内の車載ソフトウェア(4分野)市場規模の推移・予測について公表する。

国内の車載ソフトウェア(4分野)市場規模推移・予測

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1.市場概況

国内の車載ソフトウェア市場は2019年まで拡大基調で推移したものの、2020年は新型コロナウイルス感染症の影響を受けて新車販売台数減少が見込まれており、2020年の車載ソフトウェア(4分野)市場は前年比92.2%の8,298億円を見込む。

しかし、その後はOEM(自動車メーカ)の、特にCASE(Connected、Autonomous、Shared & Service、Electric)対応などの設備投資・研究開発投資が引き続き伸びていく見込みで、2030年まで右肩上がりの成長を続けていく見通しである。2025年の車載ソフトウェア(4分野)市場は1兆1,038億円、2030年には1兆3,140億円に達すると予測する。

2.注目トピック

2020年は日本OTA元年である

世界のOEMは、2015年くらいからOTA(Over The Air:車載ソフトウェアの遠隔更新サービス)開発を続けているが、2020年9月時点ではテスラのように「OTAによる有料のECUプログラム更新ビジネス」を普及させているOEMはない。他のOEMではほぼリコール対応OTAだけであり、2020年9月時点での世界OTA市場全体の95%がリコール対応OTAである。

だが、2020年冬からトヨタはレクサスLSで、高速レベル3自動運転用ソフトウェアのバージョンアップを有料OTAで実施する。これは、高速道路の入り口から出口まで「ハンズオフ(手放し)」で走れることを狙うもので、こうした「遠隔更新」こそがOTAの本来の姿である。この有料OTAの動きは、2019年に道路運送車両法の一部を改正する法律案が閣議決定されたことに基づいている。それまでの法律は自動運転車を想定したものになっていなかったが、「高速道路でのレベル3の自動運転や、限定された地域での無人運転車走行」にも対応すべく法案改正が行われた。トヨタだけでなく世界のOEMは、有料OTA事業においてテスラに追随していくものと思われる。どうやら2020年はOTA元年ともいえる年になりそうだ。

3.将来展望

今後、OTA(Over The Air)サービスでは、カーナビ用地図更新のような情報系ソフトウェアだけでなく、シャシー/ボディ系ソフトウェア、パワトレ系ソフトウェア、モーター電池制御ソフトウェアなども遠隔更新されるようになり、さらに将来的にはそれらが融合・解析されたデータで提供されるようになる見込みである。2030年頃になると、OTAサービスが一般的に普及し、車両のソフトウェアが遠隔更新されるばかりではなく、逆に車両から収集したデータがコネクテッドサービスや車両のデザイン工程にまで反映されるようになり、データの双方向化が進んでいく見通しである。

調査要綱

1.調査期間: 2020年4月~9月
2.調査対象: 国内外のOEM(自動車メーカ)、Tier1などのサプライヤ、車載ソフトウェア開発ツールベンダ、CAD/CAM/CAE/PLMベンダ他
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談、電話・eメールによる取材、ならびに当社データベース・各種文献の調査併用
車載ソフトウェアは、高級車には百数十個以上搭載されている組込み型コンピュータであるECU(Electronic Control Unit)に組み込まれているソフトウェアである。

本調査における車載ソフトウェア市場とは、①OEMの車載ソフトウェアに関わる設備投資・研究開発投資費用、②OEM・Tier1の車載ソフトウェア開発費(人件費含)、③車載ソフトウェア開発ツールベンダ売上高(ツールに加え、開発・コーティング、テストなどの請負業務含む)、④自動車産業向けのCAD/CAM/CAE/PLMベンダ売上高を対象として、市場規模を算出した。
<市場に含まれる商品・サービス>
(1)自動車用組込みソフトウェア、(2)開発ツール / プラットフォーム、(3)AUTOSAR関連、(4)車載サイバーセキュリティ関連、(5)MBD関連ツール、(6)OTA関連、(7)セントラルコンピュータ関連、(8)自動運転・AI関連ソフトウェアなど

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