経理
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近年、企業内でのDXが進んできました。営業やマーケティングなどの業務ではそれを実感している企業も多いでしょう。しかし、経理部門を含むバックオフィスではまだまだDXが進んでいるとはいい難い状況です。

経理部門はルーティンワークが多く、本来なら真っ先にDXが進んでもおかしくありません。しかし、経理部門でDXが進んでいないのは、「その必要性があまり感じられていない」もしくは「方法が分からないから」ではないでしょうか。

本稿では、経理にDXが必要な理由と進め方について解説します。

そもそもDXとは

経済産業省では、DXの定義を以下のように定めています。

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」
参考:「「DX 推進指標」とそのガイダンス」経済産業省

このように政府がDXという言葉を定義し指標を公開していることから、政府も日本におけるDX化が進んでいないことに危機感をもっており、推進していきたい意図が読み取れます。

DXとは、「企業の優位性を確立させるため、ITを活用して組織や仕組みを変革すること」を指します。IT化との大きな違いは、IT化は業務効率化などを目的として情報をデジタル化するものだったのに対し、DX化は業務効率化などを手段として、企業の優位性を高めるために行われるものです。

なぜ経理にDXが必要なのか

まずは自社の経理部門でDXを考える必要があるか、以下の4つを確認してみましょう。1つでも当てはまれば、経理のDXを考える余地があります。

  • 紙の契約書や請求書に押印している
  • 手形を取引で使用している
  • 歴代の経理担当者間で引き継がれた「秘伝のエクセル」がある
  • 仕事が属人化している

これらはDXを進めることで、解決できることがほとんどです。

最近では感染症拡大の影響で、テレワークに移行した企業の中でも、「経理担当者は出社しなければならない人が多かった」というデータがあらゆるところで公開されています。経理は企業の中でも、屋台骨のような役割をになっている部署。給与の振込、請求書の発行、取引先への支払など、どれか1つでもストップしてしまうと企業の信用にも関わります。

このように、普段は目立たないけれど非常に重要な業務を行なっている部署だからこそ、有事のときにも業務が止まらないように仕組みを構築しておく必要があるのです。

また、DXの意味合いは単なる業務効率化ではなく「改革」です。経理をデジタル化させることで、経営判断に必要なデータがすぐに確認できる状態にもつながります。その結果、経営判断をスピードアップさせ、企業の優位性を確立していく、という改革が起こるのです。

経理のDXを進める3つの方法

では経理のDX化にこれから着手する場合、どういった部分から取りかければよいのでしょうか。ここからは具体的な業務とその方法について解説します。

証憑類の電子化

はじめに、これまで紙で受け取っていた証憑類を電子化しましょう。

  • レシート、領収書
  • 請求書
  • 納品書
  • 伝票

ポイントは社内の業務から着手し、社外にも広げていくことです。たとえばレシートや領収書が必要な経費精算は社内で協力してもらえば済むため、比較的スムーズに移行できるでしょう。また何か問題があればすぐに対応することができ、つまずくポイントも把握できます。

その後、請求書や納品書などをPDFでのやりとりにしたい旨を取引先に伝えます。社外に依頼する場合は、取引先の都合もあるため、ある程度時間がかかると想定してスケジューリングしておくことも大切です。

データ連携を自動化

インターネットバンキングの開設はしているけれど、会計ソフトとAPI連携できていないという場合は、会計ソフトをデータ連携ができるものに変更するといいでしょう。

データ連携ができれば、会計ソフトに自動的に銀行の出入金明細が取り込まれ、勘定科目の推測まで行ってくれます。また会計ソフトに売掛金や買掛金を登録しておけば、入金・出金があった際、会計システム上で突合し推測してくれるため、消し込みも簡単です。

会計ソフトと銀行口座が連携できていれば、会計入力と債権管理にかかる工数を大幅に削減できますよ。

経営資料をシステムで確認

毎月の経営資料も、「歴代の経理担当者がエクセルで作成していたから」という理由で同じフォーマットで何十年も作成していませんか?会計システムの中には、債権管理や予実管理、昨年対比ができるものもあります。

前述の「データ連携を自動化」でお伝えした、API連携ができる会計ソフトに経営資料が確認できる機能がついたものを選べば、ほぼリアルタイムで経営状況を把握できます。
また、経理担当側では会計ソフトからデータをダウンロードし、エクセルにデータを転記して編集する必要がなくなるため、経営資料作成の工数を削減することが可能です。

まとめ

現状、多くの企業では経理のDXに手がまわっていません。「管理部門はコストだから、現状でまわっているのならそれでよい」という考え方も背景にあります。

しかし、すでに起こっている人口減による採用難、突然のリモートワーク要請などのリスクを考えると、いまこそ経理にも変革を起こすべきではないでしょうか。

まずは社内でできる経費精算などから、経理のDX化をはじめてみてださい。

(提供:税理士法人M&Tグループ