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(画像=tiquitaca/stock.adobe.com)

経営者が企業経営を考えるときに忘れてはならないのが、競合他社を含めた業界環境の動向である。業界環境を整理して分析するツールとしてよく使われるのが5F分析だ。今回は5F分析をテーマに、企業経営に上手く活用するポイントと事例を紹介する。

目次

  1. 5F分析とは?
    1. 分析に使う5つのFを企業経営に活用するポイント
    2. 5F分析の必要性
  2. 5Fとは?
    1. 競合他社(業界内の既存企業間競争)
    2. 新規参入の脅威
    3. 買い手の交渉力
    4. 売り手(供給業者)の交渉力
    5. 代替品の脅威
  3. 5F分析の2つの活用事例 外食業界と後発医薬品業界
    1. 1.外食業界での活用例
    2. 2.後発医薬品業界
  4. 5F分析は自社への脅威を把握する重要な手法

5F分析とは?

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※筆者作成

5F分析とは、自社の置かれている業界環境を分析するためのフレームワークである。企業が継続的に成長していくためには、市場での競合は避けられない。5F分析の5Fとは、競合における自社にとっての脅威(力、フォース)である。

5F分析では、競合他社、新規参入、買い手、売り手、代価品という5つの脅威(力、フォース)を使って分析をすすめる。5Fの力関係で優位に立てば、市場においても優位に立てる可能性が高くなる。さらに、5Fは業界の構造も表し、業界の収益度や、競争度合いを測るためにも有効に活用できる。

分析に使う5つのFを企業経営に活用するポイント

5F分析で使う5つのFは、自社にとっての脅威(力、フォース)である。つまり5Fの力が、弱いほど自社は市場で有利に経営を進めていく事ができる。逆に5Fに力が強い場合は、対策を考えるか、場合によっては市場の縮小や撤退を考えなければならない。

5F分析は、すでに自社が行っているビジネスの業界環境を分析し、企業経営に活かすことができるとともに、経営戦略上、他業界進出を考えている場合の業界環境分析としても有効である。

5F分析は自社の置かれている業界環境の分析ではあるが、分析担当者の主観的な分析に頼らず、客観的なデータを集める必要がある。

5F分析の必要性

企業経営者が5F分析を実施する際には、自社の目的に合わせて何のために5F分析を行うのかという必要性を念頭に置く。

・自社の既存ビジネスの収益性の向上
・ビジネスの新規参入の判断
・既存ビジネス撤退の判断
・経営資源の最適な配分

5Fとは?

5Fとは競合他社、新規参入、買い手、売り手、代価品という5つの脅威であると述べた。それぞれについて解説する。

競合他社(業界内の既存企業間競争)

競合他社は、自社にとって最も明白な脅威(力、フォース)である。直接的な競合関係にあり、市場のπを争うことになる。業界構造で考えれば、競合企業の数が多く、競合が激しい業界は、収益を出すのが難しい。いかに、競合他社との差別化をはかるかが重要なテーマになるであろう。

新規参入の脅威

新規参入も自社にとって大きな脅威(力、フォース)となり得る。特に注意したいのは、法的な制度などの改正に伴う、市場の拡大である。グローバル化が進む近年においては、海外企業の業界への新規参入は、大きな脅威である。さらに、他業界から異業種への新規参入も起きている。

参入を検討する場合、新規参入の壁が低い業界は、チャレンジしやすい業界であるという一面がある。言い方を変えれば、自社の属する業界の新規参入の壁が低い場合、新規参入の脅威(力、フォース)は大きいと分析すべきということである。

買い手の交渉力

買い手とは、自社の商品やサービスのクライアントである。クライアントの交渉力が強いと、価格の抑制を要求される可能性が高まる。その結果、企業の収益率は低下する。既存の買い手が、自社の商品やサービスを切り替えるコストが安い場合も、買い手の交渉力は強くなる。さらに、市場に影響力が大きいクライアントは、特に大きな交渉力を持っている。

売り手(供給業者)の交渉力

売り手とは、自社のビジネスに、原材料や部品を供給する業者や、流通を依頼する業者のことを指す。売り手の交渉力が強いと、自社の支払う代金が上昇する。売り手の交渉力は、天候や自然環境、社会情勢に影響されることが多い。たとえば、農産物、畜産物、水産物、原油などがそれにあたる。

代替品の脅威

代価品とは、自社の商品やサービスと異なるもので、購入者のニーズを満たす可能性があるものを指す。従来は自社の商品やサービスを購入しなければならなかったが、代価品の品質の向上や新商品の開発、イノベーション、購入者のライフスタイルの変化などによって、代価品購入へと消費者のアクションが変わることに対する脅威である。

5F分析の2つの活用事例 外食業界と後発医薬品業界

ここでは、5F分析の活用を外食業界と後発医薬品業界の事例で紹介する。

1.外食業界での活用例

外食産業のトレンドは、注意してみると日常でも感じ取ることができる。日本の外食産業を大規模な産業へと押し上げたファミリーレストランは、あらゆる種類の料理を数多く揃えて人気を博したが、現在はその数も減少傾向にある。一方で寿司、焼肉、うどん、パスタ、ハンバーグなどメニューを限定したり、和食、イタリアン、中華など料理のジャンルを限定したりする外食産業の数が増えていることがわかる。

ここでは多くの企業が参入しているイタリアンレストランチェーンの中でも高いシェアを誇るA社の5F分析事例を紹介する。

・競合他社(業界内の既存企業間競争)

イタリアンレストランは、パスタをメインに展開するレストランチェーンや、ピザをメインにするレストランを含めると日本国内に数多く存在し、業界内の既存企業間競争は高い。そのような中、A社は独自の戦略を取る事で、最大の店舗数を出店している。

・新規参入の脅威

外食産業で目だってきているのが、他業界からの新規参入や、産地のワイナリー、野菜などの素材をテーマにした新規参入だ。これらの新規参入企業は、顧客ニーズの多様化により多岐にわたるニーズをキャッチするために、コンセプトを構築したレストランを提案している。

しかしながら、このような新規参入は、まだ、市場シェアに占める割合は高くなくA社にとっての脅威とはなっていない。

・買い手の交渉力

顧客は、A社以外のイタリアンレストランを自由に選ぶことができるが、A社は安い価格設定と、高品質の素材の確保を同時に取ることができる戦略を取っており、業界の中でもトップレベルのコスパを達成している。A社のコスパのよさは、多くの顧客の共通認識として浸透し人気を博している。

・売り手(供給業者)の交渉力

A社は、高品質の素材をいつでも確保できるように、自社生産を行ったり、ワインの直輸入を行ったりすることで、供給力を確保できる戦略を取っている。

・代替品の脅威

イタリアンレストランにとっての代価品の脅威で、近年大きくなっているのが、冷凍食品の味の向上である。さらに、大手スーパーでは、イタリアン風の総菜を販売している。宅配ピザや、イタリアンレストランではない、ファミリーレストランのイタリアンメニューも脅威になる。

コスパと美味しさがセールスポイントであるA社にとっては、代価品の脅威がもっとも大きな脅威であるといえる。

2.後発医薬品業界

後発医薬品(ジェネリック医薬品)の普及は、日本の国民の医療費を減らし医療保険財政を改善する効果が期待できることから、2013年から厚生労働省によって推進が始まった。2018年9月の薬価調査によると後発医薬品の数量シェアは72.6%に上る。

政府によって後押しがあった後発医薬品業界は、新たな市場を手にするチャンスを得たわけだ。その際の市場を拡大していくうえで、収益性の分析をする5F分析が非常に有効な事例としてあげることができる。

・競合他社(業界内の既存企業間競争)

後発医薬品は、薬局の処方箋窓口でも薬剤師に希望すれば先発医薬品からの変更が可能であり、市場は拡大していることを実感することができる。後発医薬品業界は、政府の推進によってここ数年で急激に市場を拡大し、後発医薬品を製造する企業の数も市場の拡大とともに増加している。先発医薬品市場には外資系企業も多く、業界内の企業間競争は、年々激化している。

・新規参入の脅威

後発医薬品業界に新規参入するメリットは、研究開発にコストが安く抑えられる点だ。先発医薬品は、薬品を生みだすまで研究開発に時間と労力ともに、膨大な費用がかかる。その点、後発医薬品の製造は、研究開発にかかる時間、人手、費用などを低く抑えられる。

一方デメリットとして、医薬品業界に新規参入するためには大規模な設備投資が必要となる点と、薬事法の規制はクリアしなければならないため、臨床試験を重ねなければならない点、医薬品業界には、既存企業がつくりだした独特な流通の流れがある点があげられる。

メリットとデメリットを考慮すると、後発医薬品業界の新規参入の脅威は、大きくもなく小さくもない中程度と考えらる。

・買い手の交渉力

近年ドラックストアは乱立し、大手のドラッグストアによる、小規模保険薬局の統合が進んでいる。大手のドラッグストアの拡大によって、後発医薬品業界に対する買い手の交渉力は拡大している。

さらに、後発医薬品は、複数の企業が同じ薬品を製造しているため、買い手はどの製品でも容易に選択することができる。このことがさらに買い手の交渉力を高めている。

・売り手(供給業者)の交渉力

医薬品原材料供給業者の供給力は、業者の登録制度ができたことによって交渉力が高まるが、医薬品原材料供給業者の新規参入が進んでいることで交渉力が低下し、中程度の交渉力におさまっているのが現状だ。

・代替品の脅威

後発医薬品の視点からみると、先発医薬品が代価品となる。後発医薬品を選択した人が、先発医薬品に再び戻ることも大いに考えられる。さらに、治療から予防へと、消費者の健康管理に関する考え方が変わってきている傾向から、各種の健康食品なども後発医薬品の代価品と考えることができる。現状では中程度の脅威であろう。

5F分析は自社への脅威を把握する重要な手法

経営者が企業経営を考えるときに忘れてはならないのが、競合他社を含めた業界環境の動向である。業界環境を整理して分析するツールとしてよく使われるのが5F分析だ。この分析ですべてがわかるわけではないが、結果を活用し自社への脅威を予測しながら効果的な戦略立案を行ってほしい。

文・小塚信夫(ビジネスライター)

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