ペット
(画像=税理士が教える相続税の知識)

ペットを飼っているあなたがもし亡くなったとき、

 ・かわいいペットに遺産を相続させることはできないだろうか
 ・家族や親しい人にペットの世話を頼めないだろうか

といったことが気がかりではないでしょうか。

今の日本の制度では「ペットに遺産を相続させる」ことはできません。
しかし、ペットとペットの飼育に必要な財産を信頼できる誰かに託すことで、遺産をペットに継がせたいという思いを生かすことができます

この記事では、ペットを飼っているあなたが亡くなったときに安心して誰かにペットを託すための方法をご紹介します。ペットを託された人に相続税がかかるかどうかもご紹介して、ペットと相続に関する疑問をまとめて解決します。

1.ペットに遺産を相続させることはできない

いまではペットを家族と同じようにかわいがっている人も少なくありません。
一般社団法人ペットフード協会の「平成29年 全国犬猫飼育実態調査」によると、全国で飼われている犬と猫の数は約1,845万頭と推計されています。 これは15歳未満の子供の数(2018年4月現在1,553万人) を上回り、ペットとともに暮らすライフスタイルが広まっていることを裏付けています。

ペットを家族同然にかわいがっていれば、遺産をペットに継がせたいと思う人もいるでしょう。しかし、今の日本の制度ではペットに遺産を相続させることはできません。

法律ではペットは「物」として扱われ、遺産相続など法律にもとづく行為はできないことになっています。たとえ遺言書に「愛犬○○に全財産を相続させる」と書いたとしてもペットに遺産を相続させることはできず、その内容は無効になってしまいます。

2.亡くなったあとで安心してペットを託す方法

遺産をペットに継がせたいという思いを生かすためには、ペットとペットの飼育に必要な財産を信頼できる誰かに託すことが現実的な方法です。

ペットとペットの飼育に必要な財産を家族や親しい人に託すときは、こうしなければならないという決まりはありません。お互いに合意すれば口約束でも構いませんが、あなたが亡くなったあとで安心してペットを託すためには、これからご紹介する3つの方法をおすすめします。

2-1.負担付遺贈

負担付遺贈とは、ある条件を定めて遺言で特定の人に財産を譲る行為です。
ペットを託す場合は、「ペットを飼育することを条件に飼育に必要な財産を譲る」ことを遺言書に書いておきます。

具体的には次のような内容を遺言書に記載しておくとよいでしょう。

 ・誰に何を遺贈するか
 ・どのようにしてペットを飼育するか
 ・遺言執行者を誰にするか

負担付遺贈は、形式上は遺言で一方的にペットの飼育を依頼することになります。
依頼された人が相続を放棄する、つまりペットと財産の引き受けを断ることができる点には注意が必要です。

ペットを託すために遺言書に負担付遺贈することを書いても、引き受けるはずの人に相続放棄されてしまえばペットを託す思いはかなえられません。義務ではありませんが、ペットを託したい人とは遺贈の内容について合意をしておくことをおすすめします。

また、ペットの飼育を託された人が遺言で定めたとおりにペットを飼育するかどうかを監視するために、遺言執行者を決めておくとよいでしょう。

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(画像=税理士が教える相続税の知識)

2-2.負担付死因贈与

負担付死因贈与は、贈与する人が亡くなったときに、ある条件のもとで贈与が行われるというものです。ペットを託す場合は、「現在の飼い主が死亡すれば、ペットを飼育することを条件に飼育に必要な財産を譲る」ことを決めておきます。

内容は負担付遺贈と似ていますが、負担付死因贈与は贈与する人と贈与される人の双方の合意が前提であるため、ペットと財産の引き受けを拒否される心配はありません。

贈与の契約は口頭での約束でも成立しますが、口頭での約束は撤回することもできます。安心してペットを託すためには書面で契約することが重要です。贈与契約書では次のような内容を定めておきます。

 ・誰に何を贈与するか
 ・どのようにしてペットを飼育するか

負担付遺贈と同様に、贈与された人が契約で定めたとおりにペットを飼育するかどうかを監視するため、死因贈与執行者を決めておくこともできます。

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2-3.ペットのための信託

信託とは、ある目的のために第三者に財産を託して、その財産の管理を任せるしくみです。ペットを託す場合では、「ペットを飼育してもらうために信託機関に財産を託して、信託機関が新しい飼い主に財産を渡す」という形態の契約を結びます。

ペットを託すために信託を利用するという考え方はまだ新しく、対応できる専門家が少ない状況です。現在、次のような機関がペットのための信託に関する相談を受け付けています。

ペットのための信託について相談できる機関
[NPO法人ペットライフネット「わんにゃお信託®」] (http://petlifenet.org/wannyao-trust/)
NPO法人サンタの家(行政書士もんりつ事務所)「ペット見守り信託契約」
一般社団法人ファミリーアニマル支援協会(相談のみ受付)

このほか自分で信託の受け皿となる会社を設立する方法もありますが、会社の運営ノウハウが必要であまり実用的ではないためここでは割愛します。

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(飼い主を探す「NPO法人など」と「信託機関」は同一の場合もあります。)

3.譲り受けたペットに相続税はかかる?

最後に、亡くなった人から遺贈や死因贈与でペットを託された場合に相続税がかかるかどうかについて解説します。

3-1.ペット自体に相続税はかからない

亡くなった人から譲り受けたペット自体が相続税の課税対象になることはほぼありません。

相続税を申告するときは、国税庁が定める「財産評価基本通達」に従って相続した財産の金銭的な価値を評価します。財産評価基本通達134項では動物について評価方法を定めていて、ペットは実際の売買価格や専門家による鑑定結果によって評価することになります。

このように税法では評価方法が定められていますが、多くの場合はペットに売買価格はつかず、相続税の課税対象になることはないと考えられます。

財産評価基本通達
(牛馬等の評価)
134 牛、馬、犬、鳥、魚等(以下「牛馬等」という。)の評価は、次に掲げる区分に従い、それぞれ次に掲げるところによる。(昭41直資3-19・平20課評2-5外改正)
(1) 牛馬等の販売業者が販売の目的をもって有するものの価額は、前項の定めによって評価する。
(2) (1)に掲げるもの以外のものの価額は、売買実例価額、精通者意見価格等を参酌して評価する。

3-2.ペットの飼育に必要な財産は相続税の対象

亡くなった人からペットの飼育に必要な財産を譲り受けたときは相続税がかかります。(負担付死因贈与は贈与者が亡くなったことをきっかけに実行されるため、贈与税ではなく相続税の対象です。)

ペットの飼育に必要な財産としては、現金や預金のほか、換金することを目的に有価証券や不動産などを譲り受ける場合もあります。相続税の計算のための財産評価はそれぞれ次のとおり行います。

 ・現金や預金:もとの飼い主が亡くなった時点の金額で評価します。
 ・有価証券や不動産など:換金する前の状態(もとの飼い主が亡くなった時点)で財産の価値を評価します。

有価証券や不動産の詳しい評価方法については、下記の記事を参照してください。

相続税の計算で株式はどのように評価する? 上場株式と非上場株式の評価方法を解説
初心者でも分かる! 税理士が教える相続税の土地評価の方法
相続税・贈与税における家屋の評価計算の方法

亡くなった人の遺産総額が基礎控除額(3,000万円+600万円×相続人の数)を下回るときは相続税は課税されず、税務署に申告する必要はありません。

4.まとめ

ここまで、あなたが亡くなったときに安心して誰かにペットを託す方法と、ペットを託された人に相続税がかかるかどうかについてお伝えしました。

亡くなったあとで安心してペットを託すためには、信頼できる人と合意しておくなど生前の準備が重要です。具体的には、負担付遺贈、負担付死因贈与、ペットのための信託といった方法があります。専門家のアドバイスを受けて準備を進めましょう。

相続税は、ペット自体に課税されることはほとんどありません。
飼育費用に充てるための財産には課税されますが、遺産総額が少なければ課税されません。不明な点については、相続税専門の税理士に相談するとよいでしょう。