保育園・託児所市場,2019年
(画像=Oksana Kuzmina/Shutterstock.com)

2018年度の保育園・託児所市場規模は前年度比6.0%増の3兆3,500億円(見込)

2019年度も待機児童解消に向けた施設開設や利用児童数増加により拡大を予測

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内の子供に関連する様々な市場について調査を実施し、各分野ごとに市場動向、将来展望をまとめた。ここでは保育園・託児所市場に関する分析結果を公表する。

保育園・託児所市場規模推移

保育園・託児所市場規模推移

1.市場概況

保育園・託児所市場は待機児童対策を中心に、整備関連の補助金(開設費用等)や運営関連の補助金(保育士の処遇改善等)などの公的資金がここ数年投入されており、好調に推移している。

2018年度の保育園・託児所市場規模は前年度比6.0%増の3兆3,500億円の見込みである。2019年度も待機児童解消に向けた国・自治体の施策のもと、施設開設や利用児童数の増加が見込めることから、3兆5,500億円と拡大基調を予測する。

2.注目トピック

施設運営ノウハウやコンテンツを提供するコンサルティングサービス事業者も

子どもの預かり需要の多様化に対応したサービスを提供していくため、企業主導型保育事業や事業所内保育事業、小規模保育事業、ベビーシッター事業などに取り組むところも増えているほか、施設を自前でつくらずに、自社の施設運営ノウハウやサービスコンテンツをコンサルティングサービスとして提供(販売)する動きも活発化している。

女性の多い企業では、保育施設が仕事と家庭(育児)の両立支援に欠かせない福利厚生サービスと位置づけられるようになっており、人材確保の観点からも導入する企業が増えている。こうした企業をターゲットにコンサルティングサービスを提供する保育事業者が増加しており、なかには補助金に依存しないビジネスモデルの構築を目指す保育事業者も出てきている。

3.将来展望

保育士不足のため、開園するたびに人材確保などの労働負荷がかかることから、施設数拡大路線ではなく、より安定的な運営を見据えて慎重に開園を進める方針の保育事業者は増えている。なかには施設数ではなく、施設そのものの大きさや稼働率に着目する保育事業者も出始めている。

また、少子化のなか、保育士不足などから2015年頃からは新設ペースを減速、あるいは施設の開設そのものを行わない事業者も現れている。現在は新規開設を強化する事業者が多いが、保育士不足への対応に加え、いずれは待機児童問題も解消に向かうとみられることから、今後は、徐々に新規開設数を減らす大手保育事業者が増加し、市場成長率は鈍化するものと考える。