巷には様々なカード発行会社があり、それぞれにユニークな強みがある。三井住友の法人カードは、経費管理と資金運用にスポットを当てた、主に中小企業向けのカードだ。これを導入することによって、経理事務を効率化し、よりフレキシブルな組織を目指すことができる。今回は、三井住友の法人カードの基礎から付帯サービスまでを解説していく。
目次
設立間もない企業でも申し込める
クレジットカードを作るためには、発行会社の審査を通過しなければならない。特に法人カードの審査に関しては、業界に暗黙の審査ルールがあり、「法人設立から3年」「黒字経営が2~3年続いている」などの条件があると言われている。これが正しいとすると、新設法人は審査に通らないことになる。
しかし三井住友の公式サイトによれば、設立間もない法人であっても審査を受けられ、カードを作ることができるという。もちろん審査に通らなければならないが、厳しい審査基準を設けている発行会社が多い中、設立したばかりの法人でも申し込めるというのはありがたい。
審査では、業績などが見られる。「なるべく黒字経営を維持している、信用できる法人に入会してほしい」というのは、どのカード発行会社も同じだ。あらかじめインターネットなどを使って、カードの審査基準に関する口コミなどを調べておくといいだろう。もちろんネットの情報が正しいとは限らないが、参考にはなるはずだ。
三井住友の法人カードにはどのようなものがある?
まず、三井住友の法人カードにどのような種類があるか確認しよう。
1.三井住友ビジネスカードfor owners
「三井住友ビジネスカードfor owners」は、その名のとおり個人事業主を対象としたカードだ。通常のビジネスカードに比べて、ビジネスシーンで便利に使えるようにカスタマイズされている。申し込む際、登記簿謄本や決算書などが不要で、手間がかからないのも魅力だ。申し込めるのは、満20歳以上の個人事業主、もしくは法人代表者だ。(プラチナランクに限り満30歳以上)
2.三井住友ビジネスカード
「三井住友ビジネスカードfor owners」が個人事業主・法人代表者向けであるの対し、「三井住友ビジネスカード」は法人のみを対象としている。公式サイトによれば、カード使用者は20名以下が目安になっており、小規模企業に最適と言えるだろう。
2つのビジネスカードの相違点をまとめてみよう。やはり「for owners」のほうが、より多様なビジネスシーンで役立つカードと言える。
・「for owners」はリボ払い、分割払いなど、支払い方法が複数あるが、通常のビジネスカードは1回払いのみ。
・「for owners」はキャッシングリボがついているが、通常のビジネスカードにはない。
・「for owners」の決済口座は、法人口座や個人口座などを指定できるが、通常のビジネスカードは法人口座でしか決済ができない。
・「for owners」のほうが、多くの電子マネーを追加できる。
・「for owners」のほうが、ポイント制度において優遇されている。
3.三井住友コーポレートカード
一般的に「コーポレートカード」は、中堅・大企業を想定したものだ。三井住友コーポレートカードも、大企業向けのカードである。カード使用者は20名以上を目安としており、出張費や交際費などのコストを簡素化し、企業の流通・購買活動をスムーズにすることができる。
4.三井住友パーチェシングカード
三井住友パーチェシングカードは、購買活動専用のカードだ。特定の加盟店との取引に特化しており、企業の仕入れやシステム利用料の支払いなど、様々な購買シーンで利用できる。またディストリビューションスキームという、中小企業を顧客に持つ場合の売掛金や代金などの回収を効率良く行えるサービスがある。
カードのランクは3種類
次にカードのタイプだ。カードのランクは3種類ある。
1.ビジネスクラシック
スタンダードタイプが、ビジネスクラシックだ。「三井住友ビジネスカード」「三井住友ビジネスカード for owners」「三井住友コーポレートカード」のいずれも年会費は1,375円(税込)で、追加分1名につき440円(税込)がかかる。カード利用枠は150万円まで。最低限のスペックを備えながら、1,375円という年会費の安さが魅力だ。
2.ゴールド
ビジネスクラシックの1つ上のランクが、ゴールドカードである。年会費は1万1,000円(税込)で、追加分1名につき2,200円(税込)がかかる。やはりゴールドカードだけあって、ビジネスクラシックと比べれば年会費がかなり高い。しかし、それに応じたスペックを備えていることは言うまでもない。
利用限度額は300万円で、ビジネスクラシックの2倍だ。また旅行傷害保険は、ビジネスクラシックが最高2,000万円の補償(海外旅行のみ)であるに対して、ゴールドは国内外問わず最高5,000万円の補償が受けられる。ショッピング補償についても、ビジネスクラシックが年間100万円まで(海外のみ)であるのに対して、ゴールドでは国内外問わず年間300万円まで補償される。
ビジネスクラシックと比べると、カード自体のスペックが格段に上がっていることがわかる。
ビジネスクラシックとゴールドでは、受けられるサービスにも大きな違いがある。付帯サービスについては後述するが、やはりゴールドでは相応のサービスを受けられる。
3.プラチナ
ゴールドの上が、プラチナカードだ。年会費は5万5,000円(税込)、追加分1名につき5,500円(税込)がかかる。ビジネスクラシックと比べると雲泥の差だ。
経営者にとって、所有しているカードのランクは重要である。自分のステータスを表現するものと考えられているからだ。プラチナカードは値が張るが、素晴らしいサービスを備えたアイテムとしても、自己表現の手段としても使えるので人気がある。
利用限度額は最高500万円、旅行傷害保険の補償額は最高1億円、ショッピング補償も年間500万円というハイスペックを誇る。
注目すべき付帯サービス
「カードによってまったくサービスが違う」と言われるほど、法人カードの付帯サービスは多種多様である。三井住友の法人サービスのコンセプトは、「業務効率化、経費削減」と「国内外で使える充実のサービス」だ。ここでは、三井住友法人カードの代表的なサービスを見ていく。
まず追加カードに関しては、ビジネスカード、コーポレートカードを問わず、ETCカードを発行できる。これによってETCマークのある料金所をキャッシュレスで通過でき、快適なドライブを楽しむことができる。
「JR東海エクスプレス予約サービス」も魅力的だ。これによって、東海道・山陽新幹線のネット予約やチケットレスサービスを利用できる。煩わしいチケットの手配や予約などが、すべてオンラインで完結できるのだ。
海外旅行・海外出張関連のサービスも充実している。海外旅行傷害保険があるので、渡航先で病気やケガをした場合は一定の金額が補償される。日本の常識が通用せず、何が起こるかわからない海外では、海外旅行傷害保険の有無で精神的余裕が変わってくる。
この他にも、現地通貨をATMで下ろすことができる「海外キャッシュサービス」や、世界各地のホテルの予約ができる「エアライン&ホテルデスク」、海外レンタカーの優待サービス、世界各地の役立つ情報を教えてくれる「VJデスク」など、サービス内容はバラエティに富んでいる。
国内旅行・国内出張関連の代表的なサービスが、「ビジネス用じゃらんnetホテル予約」だ。三井住友カードはじゃらんと提携しているため、法人カード会員限定でこのサービスを利用できる。また、JALとANAのチケットレスサービスや、国内旅行傷害保険(ゴールドカード、プラチナカードのみ)なども利用できる。
ビジネスサポートサービスには、オフィスの必需品をスピーディーに調達できる「アスクルサービス」、日産レンタカー・タイムズカーのレンタルサービスなどがある。またユニークなものに、アート引越センターのサービスがある。これは、社員の引越しやオフィスの移転をお得にバックアップをしてくれるもので、引越しの基本料金が30%オフになる。国内の引越しに限り、繁忙期には利用できないこともあるが、多額の費用がかかる引越しや移転を支援してもらえるのはありがたい。
他にも、以下のようなサービスがある。
・AmazonビジネスVisaセルフ登録ポータル
・Visaビジネスオファー(ビジネスに関する優待)
・Visaビジネスグルメオファー(レストランに関する優待)
・VJタクシーチケット(サインでタクシー利用)
・福利厚生代行サービス
・国内ゴルフエントリーサービス
・財務会計システムデータ連携サービス
それぞれのカードやランクの特色を理解する
法人カードには様々な種類があり、それぞれのカードにもいくつかのランクがある。カードを作る際は、それらの特色を理解し、比較検討をしなければならない。たとえば、ビジネスクラシックからゴールドに格上げするだけでも、サービスの質やコストが大きく変わる。「何となくカッコいいからプラチナ」というように、詳細を確認しないままカードを作ることはおすすめできない。
もちろん、三井住友以外のカードを見てみることも重要だ。様々なカードと比較することによって、「三井住友カードがどういうものなのか」を、より客観的に理解することができるようになるからだ。
文・小西拓登(ダリコーポレーション ライター)