矢野経済研究所
(画像=PIXTA)

5G対応製品やIoT関連機器の開発加速で、マイクロ波・ミリ波帯域の電子機器への新たな需要が増大する見通し

〜2019年のEMC・ノイズ対策関連世界市場規模は3兆7,599億円と推計〜

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、EMC・ノイズ対策関連世界市場を調査し、5市場16製品別や参入企業各社の動向、将来展望などを明らかにした。

EMC・ノイズ対策関連世界市場規模予測

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1.市場概況

EMC(Electro-Magnetic Compatibility:電磁的両立性)とは、電子機器から電磁ノイズ(妨害波)が放射されるのを抑えるだけでなく、ノイズにより性能低下や誤作動を起こさないように電子機器の耐性を強化することも含む。日本では1980年代に誤作動を起こすケースが多発し、重大な環境問題として注目され、規制が強化されてきた。近年、デジタル回路の高密度化やそれに伴うIC電源の低電圧化、動作速度の高速化に加え、5G(第5世代移動体通信システム)対応製品やミリ波レーダー、IoT関連機器など従来より高周波帯のマイクロ波やミリ波を使う電子機器の開発が活発化し、EMC・ノイズ対策の必要性が高まっている。

5市場16製品を対象とした、2019年のEMC・ノイズ対策関連世界市場規模(メーカー出荷金額ベース)は3兆7,599億円であった。市場は大きな伸び率とはなっていないものの、安定的な成長が続いている。内訳をみると主要コンデンサ市場のウエイトが高く、2019年では55.6%を占めている。コンデンサに次ぐのが、フィルタリングデバイス市場(22.4%)になる。従来、採用された電子機器の生産台数と連動した市場であったが、生産数量が突出したスマートフォン向けが頭打ちになる中で、5G関連デバイスが登場し、強力なけん引役になりつつある。
5G関連デバイスへの採用増は近傍界関連市場でも顕著であり、現時点ではまだ少ないものの、半導体やモジュールのパッケージレベルの高性能電磁波シールドや、技術的難易度が特に高いとされる流体系磁気シールド材の新規需要が立ち上がっている。

2.注目トピック

車載機器用の小型暗室の需要が増加し、遠方界関連市場が成長と予測

2019年以降、2023年までのEMC・ノイズ対策関連世界市場において、最も成長率が高いのが遠方界関連市場で、2023年には2019年比147.8%の予測となる。遠方界関連市場では、電波暗室のうち、特に車載機器用の小型暗室の需要が増加している。

遠方界関連市場は、2010年以降、モバイル端末や液晶TVなどの民生用電子機器の国内生産量が急速に減少したため、国内の電波暗室市場は縮小傾向に転じていた。その一方で、中国などのアジア諸国で電子機器の開発と生産量が急激に拡大したため、電波暗室需要も急増した。特に中国市場では、日本での需要が限られていたOTA(Over The Air)試験専用の高付加価値型暗室需要が、LTEスマートフォンの普及と連動して電波暗室市場の牽引役になったため、市場規模が大幅に拡大した。その結果、現在、中国の電波暗室市場は世界の50%以上を占めるようになっており、OTA試験専用暗室で先行した米大手企業をはじめ、フランスやドイツなどの有力メーカーが中国市場で売上を伸ばしている。

3.将来展望

2023年のEMC・ノイズ対策関連世界市場規模(メーカー出荷金額ベース)は2019年比で116.1%となり、4兆3,645億円に拡大と予測する。引き続き、安定的な成長が続く見通しとなり、各市場とも成長要因としては5G対応製品やIoT関連機器、電装化が進む車載向けの開発加速が挙げられ、特にマイクロ波やミリ波帯域の電子機器への新たな需要が増大する見込みである。