矢野経済研究所
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2019年の呉服小売市場規模は前年比97.2%の2,605億円

〜2020年は“着物離れ”に加えて新型コロナウイルスの影響が懸念される~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越 孝)は、国内呉服(きもの)市場を調査し、現況、参入企業の動向、および将来展望を明らかにした。

呉服小売市場規模推移

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2019年販売チャネル別呉服小売市場構成比

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1.市場概況

2019年の呉服小売市場規模は前年比97.2%の2,605億円と推計した。

着物に対する外国人からの関心は高く、訪日外国人客を中心にレンタル着物を着用した体験型観光やイベントなどが人気を集めているが、日本人の着物離れは加速している。着物の主要顧客であるシニア層の高齢化に加え、依然として着物の着用やその機会に対する心理的なハードルから若年層を取り込めていないのが実状である。

一方で、近年は従来の様式に囚われない画期的な着物がデザインされることも増えてきた。「非日常の特別な衣装」としての着物から「非日常を楽しめる衣装」へと変化し、SNSを中心に情報発信されることで、国内外の人々に受け入れられるようになってきている。カジュアルに楽しく着物を着こなす人が増えることで、一般消費者の関心につながるものとみており、こうした連鎖は再び日本人の着物への関心を想起させ、慶弔用の着物や普段使いの和装の着用機会拡大につながるものと期待される。

2.注目トピック

浴衣(ゆかた)を夏着物とする2シーズン着用の訴求が進む

浴衣(ゆかた)の着用シーズン以外にも、浴衣を着物風にして、長く楽しむことが提案されている。本来、浴衣は部屋着や寝間着であるのだが、浴衣として販売されているものでも、色柄や素材によっては、襦袢を着用して伊達襟をつけて「着物風」にすることで浴衣を上品に着用することができ、花火大会や夏祭りだけでなく、カジュアルな食事会や観劇・美術館など、着用機会の幅も広がっている。夏着物自体を購入するハードルは高いものの、夏着物としても着られることを想定し、浴衣を2枚、3枚と色柄を増やしたくなる消費者の潜在需要に訴求することで、浴衣の購入機会を促している。また、浴衣を夏着物として着用する機会とともに、夏着物という概念に親しむことで、正式な夏着物の購入にもつながるものと期待されている。

3.将来展望

2020年の呉服小売市場規模は前年比91.4%の2,380億円を予測する。

2020年は着物離れに代表される消費者動向やこれまでの市場環境に加え、新型コロナウイルスの影響が大きいものとみる。全国の大学などで卒業式を中止する動きの広がりで、卒業生向けの着物や袴のレンタルのキャンセルが相次いだり、卒園式・卒業式、入園式・入学式、園遊会などのイベントも軒並み中止になったことで、この時期ならではの着物の購買機会も消滅した。新型コロナウイルスの影響が長期化すれば、さらなる打撃は避けられないものと考える。