企業が省エネ対策を実施すると補助金などがもらえる場合がある。今回は、省エネに関する補助金が注目されている背景をはじめ、各補助金の概要や申請方法などを説明する。省エネ設備の導入を検討している経営者はぜひ参考にしてほしい。
目次
省エネに関する補助金が増えている背景
昨今、省エネに関する補助金が増えている。1973年に起こった第一次オイルショックをきっかけに、エネルギー消費を抑える必要が生じたのだろう。
地球温暖化も関係している。二酸化炭素の排出を抑制するために、石油を含む化石燃料の消費を抑える動きがみられるようになった。
省エネに関する補助金1.エネルギー使用合理化等事業者支援事業
エネルギー使用合理化等事業者支援事業(平成31年度)の概要や対象、申請方法、実績などを記載する。
補助金の概要
エネルギー使用合理化等事業者支援事業は、省エネ機器の導入をサポートする補助金だ。一般社団法人環境共創イニシアチブが実施していて、補助率は最大2分の1である。
補助金の対象
工場・事業場や設備単位で、省エネルギー設備や省電力設備を導入する場合に適用される。主な対象は以下の通りだ。
・エネルギー管理を一体で行っている事業所において、省エネルギー設備への更新や改修などを行い、定められた省エネルギー目標を達成する事業(工場・事業場単位)
・国内で既に事業活動を営んでいる事業所において、使用中の設備を定められた省エネルギー設備に更新する事業(設備単位)
なお、投資回収期間が5年以上などの条件がある。
補助金の申請方法
公募期間は2019年5月20日から6月28日であり、申請の手続きは以下の通りであった。
①一般社団法人環境共創イニシアチブから様式をダウンロードする
②事業計画を策定する
③同法人にアカウント登録する
④同法人のサイトなどで申請書類を作成する
⑤必要書類をまとめて郵送する
補助金の実績
新規採択
採択率 | 採択金額 | |
工場・事業場単位 | 91.1% | 79.1億円 |
設備単位 | 90.0% | 31.4億円 |
複数年度継続事業
94件(採択率不明)
省エネに関する補助金2.「電力需要の低減に資する設備投資支援事業費補助金」
「電力需要の低減に資する設備投資支援事業費補助金(平成31年度)」の概要や対象、申請方法、実績などを記載する。
補助金の概要
「電力需要の低減に資する設備投資支援事業費補助金」は、省エネ機器の導入をサポートする補助金である。エネルギー使用合理化等事業者支援事業と同様に、一般社団法人環境共創イニシアチブが行っている、
補助率は中小企業などの場合、2分の1から3分の1である。
補助金の対象
対象となる事業は以下の通りである。
・省電力設備への更新、改修など、エネルギーマネジメントシステムの新設により電力量を一定以上削減する事業(工場・事業場単位)
・既設設備を一定以上の省電力性能の高い設備に更新することで、電力使用量を10%以上削減する事業(設備単位)
なお、投資回収年が5年以上の事業に限られる。
補助金の申請方法
募集期間は2019年5月20日から6月28日であった。申請の手続きは工場・事業場単位、設備単位で異なる。それぞれの手続きは以下の通りであった。
パターン1.工場・事業場単位
①補助対象設備を決定する
②導入予定設備の見積もりを取得する
③工場・事業場単位の省エネ量と省電力量を算出する
④一般社団法人環境共創イニシアチブにアカウント登録する
⑤同法人のサイトなどで申請書類を作成する
⑥出力して事業計画などとともに郵送する
パターン2.設備単位
①見積もり仕様書を作成する
②3者から見積もりを取得する
③一般社団法人環境共創イニシアチブにアカウント登録する
④同法人のサイトなどで申請書類を作成する
⑤出力して事業計画などとともに郵送する
補助金の実績
採択率 | 採択金額 | |
工場・事業場単位 | 54.3% | 40.5億円 |
設備単位 | 69.3% | 55.9億円 |
省エネに関する補助金3.省エネルギー設備投資に係る利子補給金
省エネルギー設備投資に係る利子補給金(平成31年)の概要や対象、申請方法、実績などを記載する。
補助金の概要
省エネルギー設備投資に係る利子補給金とは、省エネルギーのために設備投資する企業が一般社団法人環境共創イニシアチブの指定する金融機関や沖縄振興開発金融公庫から融資を受ける場合に利子を補給する制度である。
該当する金融機関は、みずほ銀行、三井住友銀行、三菱UFJ銀行、りそな銀行といったメガバンクから、一部の地方銀行、第二地銀、信用金庫、信用組合、漁協、生命保険会社などまである。
利子補給は最大で1%、補給期間は最大で10年間である。
補助金の対象
以下のうちいずれかの条件を満たす事業が融資の対象となる。
・エネルギー消費効率が高い省エネルギー設備を新設・増設する事業
・省エネルギー設備を新設・増設し、エネルギー消費原単位が1%以上改善される事業
・データセンターのクラウドサービス活用やエネルギーマネジメントシステム(EMS)の導入などによる省エネルギー取組に関する事業
補助金の申請方法
申請の受付は2019年6月、7~8月、9~10月、10~12月の4回に分けて行われた。手続きは以下の通りであった。
①金融機関に融資について相談する
②融資計画表などの必要書類を作成する
③金融機関が申し込みをする事業者と連名で一般社団法人環境共創イニシアチブに申し込む
補助金の実績
新規融資について114件が選ばれた。
補助金の申請に役立つ省エネルギーに関する事業
省エネ対策をする前に自社のエネルギー事情を正確に把握しなければならない。そこで役立つのが診断事業だ。診断結果は補助金の申請にも役立つ。
省エネルギー相談地域プラットフォーム
省エネルギー相談地域プラットフォームは、省エネ支援の連携体である。省エネに関する補助金の申請や計画策定、実行、検証などについて相談を受け付けている。
東京都地球温暖化防止活動推進センター
東京都地球温暖化防止活動推進センターでは、中小規模事業所に対し、光熱水費削減を含め省エネに関する提案や技術的な助言を行っている。技術専門員が直接訪問して、エネルギーの使用状況を無料で診断してくれる。
東京都内の事業所を対象にしており、前年度の原油換算エネルギー使用量が1,500kL未満であることも条件である。
複数回診断を受けられるが、一度受けたら3年間は受けられない。同一年度内では、同一申込者につき5事業所までしか受診できない制約もある。
東京都が実施する省エネに関する補助金・助成金
省エネの助成金は国のみならず、東京都も独自の補助金や助成金を交付している。
LED照明等節電促進助成金
LED照明やデマンド監視装置などの節電対策設備を購入した場合に、取得金額の一部を助成する制度である。助成率は対象経費の2分の1以内で、助成上限額は1,500万円だ。
東京都中小企業振興公社が、東京都内で製造業を営む中小企業などを対象に実施している。助成を受けるためには節電診断を受けなければならない。その後に申請するので早めに申し込む必要がある。
令和2年度の募集は、5月、6月、9月、12月の4回にわたって行われる。
事業所用自然エネルギー・省エネルギー機器等導入費助成(中央区)
中央区では、省エネルギー機器類を導入した場合、一定額の助成金を交付する制度がある。対象となる機器類は以下の通りである。
・エアコンディショナー
・LEDランプ
・高反射率塗料等
ただし、いずれも新品である必要があり、中古品やリースは助成の対象外となる。
また、中央区が定めている中央エコアクトに参加している事業所は、助成金の額が加算される。例えば、エアコンディショナーについては上限20万円が50万円まで増額される。
集合住宅・事業所等LED照明設置費補助金(足立区)
足立区では、区内の中小規模事業所などがLED照明を導入する際、経費の3分の1について上限30万円まで助成する制度がある。
令和2年度の申請期間は、令和2年4月13日から令和3年1月29日までだが、件数が上限に達した場合は終了となる。なお、工事着工予定日の前日までに申請しなければならない。
創エネルギー・省エネルギー機器等設置費助成制度(港区)
港区では、省エネルギー機器などを設置する中小企業などに対して、経費の一部を助成する制度がある。事業者向けの代表的な制度は以下の2つだ。
制度1.事業所用高効率空調機器設置費助成
既存の空調施設からエネルギー消費効率の高い空調機器に入れ替える場合、設置費用の4分の1について上限50万円まで助成金を支払ってくれる。
令和2年度の申請期間は、令和2年4月1日から令和3年2月26日までとなっている。
制度2.省エネルギー診断結果に基づく設備改修助成
省エネルギー診断の結果に応じて改修工事を行った中小企業などに対し、設置費用の4分の1について上限100万円まで助成金を支払ってくれる。
令和2年度の申請期間は、令和2年4月1日から令和3年2月26日まで申請を受け付けている。ただし、期限が令和2年9月30日までとなっている場合もある。
なお、診断結果の受領後でないと申請できないので、余裕をもって改修工事などの計画を立てる必要がある。
導入する機器は、省エネルギー診断で提案された機器と比較し、省エネ効果の高い機器でなければならない。導入する機器に迷ったら、診断や設備導入の担当者と相談してから決定するとよい。
会社の省エネ実現のために補助金は有効に使おう!
水道光熱費削減などを目的に省エネルギー機器の導入を考えている方は多いだろう。国や市区町村がさまざまな補助金制度を実施しているが、金額にはばらつきがみられる。
省エネを実現するためには、自社に適した制度を利用することが大切だ。自社のエネルギー事情を診断してもらい、その結果に応じた省エネ機器や補助金を検討してはいかがだろう。
文・中川崇(公認会計士・税理士)