目次

  1. 仏壇・仏具の卸売業を中心に小売店舗も運営 供養全般のアドバイザーとしての役割も務める
  2. 全国の仏壇メーカーと強固なネットワーク 取り扱っている仏壇は1000種類以上
  3. コロナ禍以降の葬儀や法要の簡素化で激変する供養産業 その中で取引先と深い信頼関係を築くことができるルートセールスに注力
  4. 顧客管理システムを活用して取引先の情報を一元管理 過去の履歴を確認して提案型営業を行う上で欠かせない存在
  5. ネットワークを介した顧客情報の流出を未然に防ぐために顧客管理システムとセットでUTM機器を活用している
  6. 人と人とのつながりを大切に、変わることのない仏壇の存在意義を伝えていく
中小企業応援サイト 編集部
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香川県丸亀市に本社を構える株式会社佐々木仏壇店は、仏壇・仏具の卸売を中心に、小売店舗の運営、墓石の取り扱い、仏壇・仏具の修復を手掛けている。国内の住宅事情、家族構成、生活スタイルの変化に伴って仏壇の需要が縮小し続ける状況下、設立以来大事にしている顧客視点の営業スタイルを貫くことで道を切り開いている。

アナログ式の仕事の進め方を大事にしながら、適材適所でデジタル技術を活用。顧客管理システムに保存している取引先の情報を守るために、複数の情報セキュリティ機能を一台にまとめたUTM(統合脅威管理)機器を活用している。(TOP写真:佐々木仏壇店が扱っている伝統的な金仏壇)

仏壇・仏具の卸売業を中心に小売店舗も運営 供養全般のアドバイザーとしての役割も務める

株式会社佐々木仏壇店の兼平三起也代表取締役
株式会社佐々木仏壇店の兼平三起也代表取締役

1985年に設立した佐々木仏壇店の店舗を併設した本社は、香川県丸亀市綾歌町の幹線道路沿いにある。仏壇・仏具の卸売業からスタートし、西日本を中心に全国の仏壇・仏具の小売店や葬儀会社を取引先に事業を拡大。1999年からは店舗を設けて小売業にも乗り出した。店舗では販売だけでなく、宗派別の仏壇・仏具の選び方や仏具の並べ方などをきめ細かくアドバイスしている。

「事業の8割は卸売業なのですが、地元の個人のお客様の役にも立ちたいとの思いで小売業も営んでいます。仏事、お墓を含めた供養全般のアドバイザーとしての役割を務めることも仏壇、仏具を扱う企業の責任と考えています。お困りごとがあった時は、いつでも気軽に相談していただければ」。佐々木仏壇店の本社で取材に応じた兼平三起也代表取締役は、穏やかな表情で話した。

全国の仏壇メーカーと強固なネットワーク 取り扱っている仏壇は1000種類以上

ニーズが高まっている現代的なデザインのモダン仏壇
ニーズが高まっている現代的なデザインのモダン仏壇

信仰の中心となる本尊を祀(まつ)り、先祖を供養するための仏壇は、乗用車、家電、一般の家具とは異なる特別な耐久消費財だ。佐々木仏壇店は、仕入先として全国の仏壇メーカーと強固なネットワークを構築している。取り扱っている仏壇の種類は1000を超え、様々なタイプ、サイズ、カラーの仏壇を取引先や個人の顧客に選択してもらえるようにしている。

花立てやろうそく立てなどの仏具を販売している佐々木仏壇店の店舗
花立てやろうそく立てなどの仏具を販売している佐々木仏壇店の店舗

ショールームを兼ねた佐々木仏壇店の店舗では、黒檀や紫檀といった木材の美しい木目を生かして職人が作り上げる伝統的な唐木仏壇、全体を黒塗りし、内部に金箔を貼った豪華な金仏壇、現代的なデザインのモダン仏壇など様々なタイプの仏壇。その他に花立て、香炉、ろうそく立て、数珠、線香立てといった多種多様な仏具のほか、四国八十八ヶ所、別格二十ヶ寺の「お遍路用品」、神道の祖霊舎や神具も展示販売している。

コロナ禍以降の葬儀や法要の簡素化で激変する供養産業 その中で取引先と深い信頼関係を築くことができるルートセールスに注力

三密回避が徹底されたコロナ禍以降、葬儀や法要の簡素化や参加人数の少数化が進んでいる。故人の遺骨や遺灰を寺院の墓地や納骨堂に預けずに、置物やペンダントなどに納めて偲ぶ手元供養を選択する人が増えるなど供養産業は大きく変化している。兼平社長によると、仏壇の需要は、仏壇を置く仏間がない住宅やマンションの増加や世帯の少人数化に伴って年々縮小し、市場規模は最盛期の1980年代と比較すると3分の1程度になっているという。生産される仏壇の種類も、リビングや洋間に調和したモダン仏壇が8割を占めるようになっている。

この状況下、佐々木仏壇店が力を入れているのが、仏壇の小売店や葬儀会社へのルートセールスだ。地域によってさかんな宗派や仏事にまつわる習慣は異なる。西日本を中心に個々の取引先と定期的に顔を合わせて深い信頼関係を築くことは、得意とする提案型営業に必要な「生きた情報」を集める上で必要不可欠という。

兼平社長自らが、社有のワンボックスカーにサンプルやカタログを積んで、ルートセールスに回ることも多い。「時間と手間はかかりますが、Web会議システムを使ったオンライン商談では得られない成果が期待できます」と兼平社長。スマートフォンのコミュニケーションアプリと通話機能を使うことで、本社ときめ細かい情報のやりとりができるので安心して出張に赴くことができるという。

「仏事に関する豊富な知識ときめ細かな対応を持ち味に、正直価格の商いをしています。商機をつかむ上で何より大事なのは心を込めた対応と思っています。真心でお客様に高い付加価値を提供するという設立以来の方針をこれからも貫いていきます」と兼平社長は話した。

顧客管理システムを活用して取引先の情報を一元管理 過去の履歴を確認して提案型営業を行う上で欠かせない存在

顧客管理システムを活用する様子
顧客管理システムを活用する様子

佐々木仏壇店は、20年以上前から顧客管理システムを活用し、取引のある全国100以上の仏壇・仏具の小売店や葬儀会社の情報を登録している。受注、出荷、請求までの一連の業務を効率よく行い、顧客の情報を一元管理する上で非常に重宝しているという。システムには受注データと連携することで売上動向の分析や、請求書作成を効率的に行うことができる機能も備わっている。

「これまでの取引の履歴を確認しやすいので、お客様のニーズに合わせた提案を行う上で顧客管理システムは業務に欠かせない存在です」と兼平社長は話した。デジタル技術を活用する一方、紙ベースでの帳票のやりとりを希望する取引先も多いことからアナログでの対応も大事にしているという。

ネットワークを介した顧客情報の流出を未然に防ぐために顧客管理システムとセットでUTM機器を活用している

佐々木仏壇店の店内の様子
佐々木仏壇店の店内の様子

佐々木仏壇店は顧客管理システムの導入と同時に、ネットワークを介した顧客情報の流出を未然に防ぐために外部からの不正なアクセスを遮断する機能やコンピューターウイルスへの防御機能などを備えたセキュリティ機器も導入した。セキュリティ技術の進化に伴って機器のバージョンアップを繰り返し、現在は、更に多様なセキュリティ機能を一つにまとめたUTM(統合脅威管理)機器を活用している。

現在、活用しているUTM機器は、サーバーに大量の通信を仕掛けてダウンさせるDoS攻撃や脆弱性を狙ったサイバー攻撃を遮断するネットワークファイアウォール、不正コマンドの受け取りなどを防御するIPS(不正侵入防御)、マルウェアやスパイウェアなどへの感染リスクのある悪質なサイトへのアクセスを未然に防止するWebフィルタリングを導入している。更に危険度の高いアプリケーションを識別してブロックする機能、迷惑メールの識別機能、高度な脅威検知エンジンを活用したコンピューターウイルス、スパイウェア、マルウェアからの防御機能を備えている。

これまで情報管理の面で問題が発生したことは一度もなく、UTM機器のおかげで安心してメールの送受信などの日々の業務に取り組めるという。「複雑で目に見えないサイバー攻撃に対して一台の機器で様々なセキュリティ対策を講じることができるだけでなく、管理の手間やコストもかからないので本当に助かっています」と兼平社長は話した。

人と人とのつながりを大切に、変わることのない仏壇の存在意義を伝えていく

佐々木仏壇店の本社の外観
佐々木仏壇店の本社の外観

佐々木仏壇店は、これからも人と人とのつながりを重視したビジネススタイルを大事にしながら、適材適所で業務に役立つデジタル技術を活用していきたいという。「仏壇は、亡くなった大切な人を供養したいと願う人にとって、心の支えになる特別な存在です。社会の変化が激しくなっている時代だからこそ変わることのない仏壇の存在意義を、若い人たちを中心にしっかりと伝え続けていかなければならないと考えています」と兼平社長は決意を込めた表情で話した。

企業概要

会社名株式会社佐々木仏壇店
本社香川県丸亀市綾歌町岡田下521-5
電話0877-86-6888
設立1985年10月
従業員数4人
事業内容 仏壇、仏具の卸売・小売/墓石・寺社用品の販売/仏壇、仏具、墓石、寺社用品の修復