
目次
- 設備と素材の小麦粉、水に徹底的にこだわって麺づくりに取り組む 2020年に国際規格、ISO22000を取得
- 新鮮で上質な100種類の小麦粉を使い分けて、多種多様なスープに対応できるように250種類以上の生麺を生産している
- ラーメン店からスタートし、製麺に事業転換 1994年に株式会社化した
- ホームページを使って自社だけでなく取引先店舗の情報も発信
- 機動的に情報を発信するためにクラウド型のホームページ作成システムを活用
- 受発注システムを活用することで受注業務の効率化と取引先の利便性向上を実現
- 夜間に寄せられた留守番電話での注文内容はAIを活用した音声の自動文章化システムでテキスト化している
- ノーコードで業務用アプリを作成できるクラウドサービスを導入し、本格的な活用に向けて準備を進めている
- ICTとデジタル機器を使って従業員の負担を軽減 働きやすさと働き甲斐を兼ね備えた企業に
明治時代から普及し始めた外来の料理であるにもかかわらず、日本の国民食の一つとして定着し、世界中から愛されているラーメン。味や具材にこだわった多種多様なラーメンを提供する全国のラーメン専門店や中華料理店にとって必要不可欠なパートナーとなっているのが、店舗に生麺を供給する製麺会社だ。その製麺会社の一つ、大阪府枚方市のミネヤ食品工業株式会社は、名店が割拠する大阪圏で、毎月百数十万食にのぼるラーメンの生麺を約1,200店舗に供給している。
ホームページを使った情報発信に力を入れ、店舗から連日連夜寄せられる注文に迅速かつ的確に対応するために、システムを積極的に活用している。(TOP写真:小麦粉と水にこだわってミネヤ食品工業が生産しているラーメンの生麺)
設備と素材の小麦粉、水に徹底的にこだわって麺づくりに取り組む 2020年に国際規格、ISO22000を取得
ミネヤ食品工業の製麺工場を併設した本社は、京阪神地域の各地にアクセスしやすい大阪府北東部の枚方市内にある。1994年の設立以来、設備と素材の小麦粉、水に徹底的にこだわって麺づくりに取り組んできた。工場内では特注の大型ミキサー、ローラー、麺線カッター機、軟水浄水器、冷蔵庫、検査用の金属探知機などの設備をそろえる。2020年には安全な食品を製造するための国際規格、ISO22000を取得した。食品アレルゲン管理も徹底して行っている。
新鮮で上質な100種類の小麦粉を使い分けて、多種多様なスープに対応できるように250種類以上の生麺を生産している

ミネヤ食品工業は、複数のメーカーから仕入れた新鮮で上質な約100種類の小麦粉を使い分けてストレート、ちぢれ、平打ち、極細、細、中細、中太、太、極太といった多様な形、サイズ、味付けの麺を1日あたり数万食単位で生産、供給できる体制を整えている。工場では、練った後に延ばし、切り分けた麺に急速冷却加工を施した上で、徹底した温度管理下で2日間熟成している。完成した麺は自社の保冷車で取引先の店舗に配送。配送を外部委託せず、自社対応することで機動的できめ細かなサービスを実現。

1994年の設立以来、ミネヤ食品工業は、時代の流れを読み取りながら品ぞろえを増やし、現在、生産している生麺の種類は250を超える。「お客様のスープにぴったりの麺をお客様の気持ちになって作り上げています。ラーメン業界のトレンドは日々変化しているので常にアンテナをはりめぐらし、お客様の幅広い要望に対応できる多種多様な麺を生産しています」と平峯由浩代表取締役は事業に取り組む姿勢を語った。新しい麺の開発にも継続的に取り組んでいるという。
ラーメン店からスタートし、製麺に事業転換 1994年に株式会社化した

ラーメンと深い関わりを持つミネヤ食品工業の歴史は、平峯社長の父親が1982年に立ち上げた枚方市内のラーメン店から始まった。最初は大手のラーメン店チェーンの傘下に入っていたが、自らが理想とするラーメン店を作りたいという思いがしだいに強くなり、独立を決意したという。
独立後は、自家製のスープと麺を提供する運営スタイルで人気を広げ、店舗数を4店に拡大。その中で大型製麺機を購入し、外部の製麺を請け負うようになったことが、本格的に製麺事業に乗り出すきっかけになったという。製麺事業は順調に軌道に乗り、平峯社長が父親から経営権を引き継いだ後、製麺や餃子の皮づくりに専念する現在のビジネスモデルに転換し、1994年に株式会社化した。

ミネヤ食品工業とラーメンの関わりは40年以上になる。麺づくりの技術だけでなく、取引している1,200店舗とのコミュニケーションを通じて蓄積している業界の情報も大きな企業財産になっている。業界の最新動向と今後の見通しについて取引先から相談を持ち掛けられることも多いという。「お客様の視点で事業に取り組む上で20代の時に店長を務めた経験が役に立っています。麺の提供だけでなく店づくりでもお客様のお役に立てるように取り組んでいます」と平峯社長は話した
ホームページを使って自社だけでなく取引先店舗の情報も発信

ミネヤ食品工業は2008年から、ホームページを取引先との接点や情報発信のツールとして活用している。会社案内、商品案内、採用情報に加え、写真とともにラーメンの魅力を閲覧者に伝えるためのコンテンツを豊富に掲載している。その中でラーメンファンからの注目を集めているのが、取引先の店舗を紹介する「ミネヤのお客様」だ。従業員が取引先の店舗を取材し、店名、住所、営業時間、定休日、電話番号、取材担当者のコメントと共に、看板メニューを写真付きで掲載している。2025年3月時点で紹介している店舗は2015年10月から取材した45店。いずれも大阪圏では人気が高い名店ぞろいで、ラーメン店のガイドとしても活用できる内容になっている。
機動的に情報を発信するためにクラウド型のホームページ作成システムを活用

ホームページによる情報発信を強化するために2024年12月から活用しているのが、簡単な操作でコンテンツの更新を行うことができるクラウド型のホームページ作成システムだ。パソコン向けのページをスマートフォン向けにレイアウトや文字・画像の大きさを自動で最適化する機能を備えている。
以前のシステムではサーバーの保存容量の限界に合わせて過去の情報を削除する必要があったが、容量無制限のクラウド型に切り替えたことで、これまで以上に容量の大きい画像や動画を掲載しやすくなっただけでなく、蓄積し続けられるようになった。「以前よりも機動的に情報の更新ができるようになったので、新しいシステムをしっかりと活用して、より多くの人にホームページを見ていただけるようにしたい」と平峯社長。
受発注システムを活用することで受注業務の効率化と取引先の利便性向上を実現
約1,200店舗にのぼる取引先の店舗から連日連夜寄せられる受注への対応にも、デジタル技術を活用している。その中の一つが、2022年から導入している卸売業者向けに開発された受発注システムだ。わかりやすい画面設計で直感的な操作ができるようになっているので取引先にも好評という。取引先は、システムと連動しているコミュニケーションアプリを使って、商品の一覧から必要な個数を入力するだけで発注を済ませることができる。現在、約2割の取引先がこの受発注システムを活用している。受注データはリアルタイムで集計し、販売管理システムで活用できるので、業務の効率化につながっている。
夜間に寄せられた留守番電話での注文内容はAIを活用した音声の自動文章化システムでテキスト化している
受発注システムを活用していない取引先に対してはメール、電話、FAXで注文を受け付けている。年配の人が経営する小規模店舗は、注文の手段に電話やFAXを使うケースが多く、配送担当部署の毎朝の業務は、夜間に留守番電話やFAXで寄せられた注文内容を確認することから始まる。
この中で、留守番電話の音声を文字起こしする作業の効率化に、AIを活用した音声の自動文章化システムを活用している。システムのおかげで、毎朝40分から50分程度かかっていた文字の書き起こし作業が不要になり、従業員も余裕を持って配送業務に従事できるようになった。今後、FAXで寄せられた注文内容も手書きや印刷された文字をデジタル転換できるOCR(光学文字認識)技術を活用することで情報を共有しやすくしていきたいという。
ノーコードで業務用アプリを作成できるクラウドサービスを導入し、本格的な活用に向けて準備を進めている

基幹業務では、ノーコードで会社ごとの業務に合わせたアプリを作成できるクラウドサービスを2024年に導入し、本格的な活用に向けて準備を進めている。これまでに顧客管理とスケジュール管理のアプリを試作した。今後、見積、棚卸、資産管理のアプリ作成にも挑戦する方針。電子取引への対応が可能な約1割の取引先に対しては、クラウド型の電子請求書発行システムを使って請求書の作成と発送業務を効率化している。
ICTとデジタル機器を使って従業員の負担を軽減 働きやすさと働き甲斐を兼ね備えた企業に

ミネヤ食品工業は、従業員の健康に配慮している企業として経済産業省が評価する健康経営優良法人として認定されている。会社に貢献してきた勤続年数が長いベテランを大切にすると同時に、若い人材にとっても魅力的な職場環境づくりに力を入れている。「ICTとデジタル機器を使って従業員の負担を軽減することで、働きやすさと働きがいを兼ね備えた企業にしていきたい」と平峯社長は話した。

外食産業が大きなダメージを受けたコロナ禍を乗り越え、多くの観光客を見込める大阪・関西万博を迎える中で、大阪圏のラーメン業界には活性化への追い風が吹いている。「デジタル技術には大きな可能性を感じています。お客様と二人三脚でラーメン文化の活性化にこれからも貢献していきたい」と平峯社長は笑顔で話した。
企業概要
会社名 | ミネヤ食品工業株式会社 |
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本社 | 大阪府枚方市長尾家具町1丁目7-1 |
HP | https://mineyashokuhin.com |
電話 | 072-867-0039 |
設立 | 1994年3月 |
従業員数 | 77人 |
事業内容 | ラーメン、餃子の皮などの製造 |