
世界の地政学的リスクを背景とした半導体のグローバルサプライチェーン再構築の流れが加速
~近年成長が著しいマレーシアでは「後工程」から先端技術が集積された「前工程」への進化を目指す動きが顕在化~
株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、東南アジア主要6カ国の半導体市場を調査し、国別の半導体政策や投資の状況、参入する有力企業の動向の視点から、東南アジアにおける半導体市場の現況と今後の展望について分析を行った。ここでは一部の分析結果を公表する。
1.調査結果概要
世界の半導体市場は、近年の米中を中心とした主要経済大国間での半導体覇権争いの激化による地政学的リスクの高まりを受け、半導体サプライチェーンの分散化、多様化が進行中である。こうした状況のなか、東南アジアは、その中立的な外交姿勢、低い人件費やエネルギーコスト、更に政府の半導体支援策に基づくインセンティブ(補助金)供与によるコストメリット、今後の経済の成長性の視点から、世界の半導体サプライチェーンの一翼を担う重要なプレーヤーとしてその存在感を拡大しつつある。東南アジアの半導体市場は、主要6カ国によって構成されており、それぞれ国の保有資源、インフラ環境、産業構造、人材の技術レベル、そして半導体政策の推進度などの影響要因によって各国の特性がある。
2.注目トピック
半導体グローバルサプライチェーンにおける東南アジア主要6カ国の役割と今後の方向性
東南アジア主要6カ国における国別の半導体市場の特性や今後の方向性は、次のとおりである。それぞれの国によって半導体のグローバルサプライチェーンにおける役割は多種多様であるが、依然として世界の半導体市場が不安定な状況のなか、各国は短期、及び中期の貿易戦略だけでなく、持続的な競争力を確保するための長期的な政策と、その実現のためのより具体的な戦略が必要であると考える。
【シンガポール】
IC(集積回路)の設計からウェハの製造、組み立て及びテスト工程など、前工程から後工程まで網羅する半導体エコシステム※1を持つ東南アジア半導体産業の先進国として市場をリードしている。
※1. 半導体エコシステムとは、半導体市場を形成する半導体製造メーカー、半導体装置メーカー、半導体材料メーカー及び半導体商社と、ITサービス等の周辺産業が連携して構築する経済圏をさす
【マレーシア】
ATP(Assembly, Testing, Packaging)の後工程において豊富な経験を持つ企業と人材を抱えており、世界の半導体需要拡大の受け皿として機能すると共に、国家戦略を土台に後工程の高度化、IC設計やウェハ製造などの高付加価値市場への進化を目指している。
【ベトナム】
半導体分野への積極的な外資誘致政策を展開している。半導体技術者の人材ハブ※2を目指すと共に、外資の新規工場の設置を促進することで、後工程の高度化を目指すマレーシアを追従する。
※2. ベトナム国内の半導体技術者の育成、および将来的な周辺国への人材供給も視野に、政府の人材育成戦略、およびベトナム国内参入の外資半導体メーカーとの協業による人材育成を行っている。
【フィリピン】
米国の貿易・経済政策主導のもと、後工程の充実と人材の育成に注力している。
【タイとインドネシア】
自動車のEV化に伴う半導体需要の増加を新たな市場機会と捉え、電池の生産から電気自動車(EV)向け半導体の供給までを網羅したサプライチェーンの構築を模索している。
調査要綱
1.調査期間: 2024年10月~2025年2月 2.調査対象: シンガポール、マレーシア、ベトナム、タイ、インドネシア、フィリピンの東南アジア6カ国の半導体製造における有力企業 3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)及び文献調査併用 |
<半導体市場とは> 本調査における東南アジア主要6カ国の半導体市場とは半導体製造メーカーで構成される市場をさし、製造工程のうち、前工程とは回路設計・パターン設計、フォトマスク作成、ウェハ製造、素子形成・電極形成/ウェハ検査までの工程をさし、後工程とはICチップの組み立て、試験/検査・マーキングの工程をさす。また対象となる半導体製造メーカーは、IDM(Integrated Device Manufacturer)、ファブレス(Fabless)、ファウンドリ(Foundry)及びOSAT(Outsourced Semiconductor Assembly and Test)とする。詳細は以下参照。 ・IDM(Integrated Device Manufacturer):日本語で垂直統合型半導体メーカーと訳され、半導体製造の前工程の設計から製造、後工程の組み立て、テスト、更に販売までを自社内で一貫して行う企業形態のことをさす。 ・ファブレス(Fabless):自社工場や生産設備を保有せず、企画・開発・設計に特化したビジネスモデルおよび、受託先であるファウンドリに半導体製造を100%委託する半導体メーカーをさす。 ・ファウンドリ(Foundry):顧客の企画・開発・設計にそって、半導体製造の前工程の受託製造に特化した企業をさす。 ・OSAT(Outsourced Semiconductor Assembly and Test):半導体の組み立てやテストといった半導体製造の後工程を専門とする企業をさす。 |
<市場に含まれる商品・サービス> IC(集積回路)の設計、ウェハの製造、組み立て及びテスト工程 |
出典資料について
資料名 | 2024年 東南アジアにおける半導体市場動向と今後の展望 |
発刊日 | 2025年02月27日 |
体裁 | A4 160ページ |
価格(税込) | 198,000円 (本体価格 180,000円) |
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