長州力,引退,プロレス業界
(写真=Bjoern Deutschmann/Shutterstock.com)

プロレスラーの長州力が2019年6月26日、後楽園ホールで引退興行を行った。現役最後の試合は、永遠のライバル・藤波辰爾とタッグ対決であった。プロレスファン歴35年の私にとって、昭和の名レスラーが一人いなくなるという現実は、寂しいが感慨深いものがある。2015年11月に引退興行をした天龍源一郎の試合は両国国技館で行われ、当時、私は水道橋にある矢野通(新日本のレスラーが経営するスポーツBAR)の店でリアルタイムで“観戦”していた。長州力は、いわゆる新日本プロレスにおける異端児で、正統派の藤波とは裏表の存在だった、気がする。長州、藤波、天龍、そして鶴田。この4人の中で私はジャンボ鶴田が一番好きだった。そして一番強かったと思う。いや、今のオカダ・カズチカや全盛期の猪木、馬場、前田、三沢、ハンセン、ブロディなどと比較しても、鶴田が一番強かったと、勝手に思っている。異論反論は受け付けません(笑)。

今のプロレス業界はというと、「新日本プロレス」の一強である。それは誰も反論できない。何を持って一強か。話題性、選手層、インパクト、大きい会場での開催、である。これらは新日本プロレスがダントツといえよう。他団体が勝る部分は何かを考えてみる。試合の面白さ、選手のキャラの濃さ、選手に対するファンの思い入れ、女性ファンの支持、である。試合運びは他団体でも見応えあるカードがたくさんある。「カウント2.9」の応酬は新日本プロレスだけのものじゃない。キャラの濃さや選手への熱い思いは、ファンそれぞれが抱くものであり、どの団体にも熱心なコアファンは存在する。ただ、その数が新日本プロレスを超えていないだけだ。女性ファンも同様で、各団体にも一眼レフカメラを持ってレスラーを撮りまくる「プ女子(プロレスファンの女子を言う)」を多く見かける。ただ、新日本プロレスほどじゃないだけの話。その、「新日本プロレスほどじゃない」レベルで語っていては結局、新日本プロレスには勝てないのだ。

長州力,引退,プロレス業界
(写真=Xビジネス編集部)

では、どうすれば新日本プロレスと双璧を成す存在になれるか。テレビ放送をすればいいという安易な考えがあるかもしれないが、その力も確かに大きい。しかし、もっと必要なのはレスラー同士の対立や、相手に牙をむく体勢、姿勢、つまりストーリーを、世間へ配信することが重要なのである。試合後のレスラーのコメントは試合と同じくらい面白いこともあるのだが、それをメディアは上手に伝えてない。では誰が伝えるか。もはや自分(レスラー自身)で伝えるしか術はない。
今は有難いことにSNSがある。今もすでにSNSで発信しているというのであれば、まだまだそのパワーが足りてないから、この結果なのだ。もっともっと発信しないと誰も気付いてくれない。正直、各団体のメインと位置付けられるレスラーは3~5人はいるはずで、そのメンバー全員がやはり発信するなり、何かアクションを起こさないといけない。一人でやみくもにやってもダメ。プロレスはひとりでできるものじゃないからだ。相手がいてこそ成り立つのである。もっと敵対していいし、攻撃(口撃)していいし、自身の団体の中心に波風立たせないと何も起きずに年だけ食って、実績もないのにベテラン扱いされて、もっと悲しいのは年だけ食っても新人扱いされるという情けないレスラーになってしまう。
個人的に思うのは、契約とか権利とか、いろいろ問題はあるかもしれないが、もっと他団体へ出陣すべきだと思う。もっと色々なところで試合をするべきだ。ただ出ればいいわけじゃない。爪痕を残す必要もある。そういう意味ではイケメン二郎はエンターテインメントである。

話は戻るが、長州力の引退試合を皆さんは見ただろうか。あのリキラリアットは60才を超えても色褪せない。天龍と長州は一般層にも認知されている貴重な(元)プロレスラーである。彼らには彼らの考えがあると思うが、もっと若手や無名に近いレスラーに日の目を見る機会を与えて欲しいと願う。それができるレスラーは非常に限られる。その中で、両者はまさにうってつけであり、プロ野球で言う所のモルツ球団(日本のプロ野球にかつて所属していた選手によって結成された野球チーム)のように、天龍軍VS長州軍の構図で定期的に興行をやってもらいたいくらいだ。そこで生まれる対立構造や争いが、自身の団体に持ち帰った時に点と点が線になることもあるし、線がつながれば両団体への橋渡しのきっかけにもなってくる。新日本プロレスに一歩でも近づくなら、色々なものを利用しないといけないと思う。自身の団体一途も大いに結構。渕正信(昔は正伸だった)は、もはや生きる伝説のようなキャリアであり別格な存在ではあるが。個人的に渕さんは好きだからここで終いとします。

プロレス、あいしてま~す。

(加藤 学)

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関連資料:
XビジネスショートレポートVol.3 プロレス市場
https://www.yano.co.jp/market_reports/R60201101
2018 クールジャパンマーケット/オタク市場の徹底研究
https://www.yano.co.jp/market_reports/C60109800

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