明治創業の貼り薬のパイオニア 電子黒板で会議の生産性向上 人材育成、海外戦略、DXを進める 大石膏盛堂(佐賀県)

目次

  1. 「九州からActive Lifeのためにちょっとイイものを世界へ」をパーパスとして掲げる
  2. 戦後に株式会社化して成長。時代の変化に柔軟に対応して120年近い歴史を積み重ねた
  3. 将来を見据え2010年代から海外進出に取り組む 2018年には米国FDAから承認を取得
  4. 四つの工場棟を構え、多品目小ロットの生産に対応
  5. 成長の鍵を握るのは人材力 キャリアパス制度や人材マネジメントシステムを導入して能力向上を図る
  6. 30代を中心に1年間の研修を通じて経営視点を育む「ジュニアボード制度」を導入 全体最適の視点を持った人材を育てる
  7. 会議は一人ひとりの人材が持つ知識、経験、アイデアを結び付け、相乗効果を生み出す重要な場 活性化を狙ってタッチセンサーを備えた電子黒板を導入
  8. 画像が鮮明な電子黒板により、参加者の視線が目の前の資料ではなく電子黒板に向き、アイデアや意見を出しやすくなった
  9. Web会議の充実に360度カメラを搭載したWeb会議用マイク&スピーカーを活用 発言者を自動で検知しクローズアップ表示
  10. 新規事業として男性向け化粧品ブランド「Satta(サッタ)」を展開 収益源の多様化を図る
  11. 自社製品の販売にはECを活用 販売実績データを開発にフィードバックしながら情報発信、販路開拓を行う
  12. 地域のプロスポーツチームの支援に積極的に取り組む 2024年5月には佐賀県の「佐賀さいこう企業」の表彰を受けた
  13. 生産管理システムのデータを分析、可視化して経営や業務への活用を図る 信頼の医薬品づくりにゴールはない
中小企業応援サイト 編集部
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佐賀県鳥栖市に本社を構える株式会社大石膏盛堂は、貼り薬のパイオニアとして知られる120年近い歴史を持つ企業だ。薬局やドラッグストアで購入できるOTC薬(市販薬)や医師から処方される医療用医薬品を製造。貼り薬に特化したOEM(受託製造)メーカーとして国内トップクラスの実績を誇る。2019年には年間売上高100億円を達成。次の成長ステージに向けて力を入れる人材育成と社内の連携強化に、電子黒板をはじめとするデジタル機器やICTを積極活用している。(TOP写真:貼り薬に特化したOEM(受託製造)メーカーとして国内トップクラスの実績を誇る大石膏盛堂の製造現場)

「九州からActive Lifeのためにちょっとイイものを世界へ」をパーパスとして掲げる

明治創業の貼り薬のパイオニア 電子黒板で会議の生産性向上 人材育成、海外戦略、DXを進める 大石膏盛堂(佐賀県)
市販薬から医療用医薬品まで幅広い貼り薬を社会に提供している

大石膏盛堂は、医薬品の処方や品質管理の技術を国際基準に準拠するレベルに引き上げ、現在、パップ剤、プラスター剤、テープ剤といった様々なタイプの貼り薬約40品目を生産している。国内外を合わせた取引先は約150社を数える。

明治創業の貼り薬のパイオニア 電子黒板で会議の生産性向上 人材育成、海外戦略、DXを進める 大石膏盛堂(佐賀県)
大石膏盛堂の伊藤健一代表取締役

「信頼できる医薬品を社会に提供し、健康づくりに貢献することによって社会的価値を創造し続けると共に、長年にわたって培ってきた知識、技術をもとに更に高品質な製品を社会に送り出すことを目指して事業に取り組んでいます。新規事業に積極的に乗り出していくために、常にチャレンジする姿勢を大事にしています」。2021年9月に就任した伊藤健一代表取締役は、自らの経営への思いを熱く語った。

2024年には新たなパーパスとして「九州からActive Lifeのためにちょっとイイものを世界へ」を打ち出した。「九州から世界の健康づくりに役立つ貼り薬を提供していきたいという思いを込めています」と伊藤社長。

戦後に株式会社化して成長。時代の変化に柔軟に対応して120年近い歴史を積み重ねた

明治創業の貼り薬のパイオニア 電子黒板で会議の生産性向上 人材育成、海外戦略、DXを進める 大石膏盛堂(佐賀県)
大石膏盛堂の創業当時の製品

大石膏盛堂は常に時代の変化に柔軟に対応し、改革を続けながら歴史を積み重ねてきた。その始まりは、配置薬が主流だった1907(明治40)年にさかのぼる。あんま膏「朝日万金膏」と呼ばれる膏薬の製造で事業の基盤を築いた。戦後、1950年3月に株式会社として新たなスタートを切り、プラスター剤の新製品を開発したところ大きな反響を呼んだ。全国の配置薬メーカーから引き合いがあり、200種類以上のデザインで全国に広がったという。1987年からは医薬品業界に参入し、医療用パップ剤の製造販売を開始。1990年代に入るとドラッグストアチェーンの要望を受けたプライベートブランド商品を開発し、ドラッグストア市場が拡大する波に乗った。

将来を見据え2010年代から海外進出に取り組む 2018年には米国FDAから承認を取得

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帯状疱疹を発症した後の神経痛に対する医療用貼付剤として米国FDAから承認を受けた「ZTlido」

2010年代からは海外進出に取り組んでいる。「医薬品の国内市場は飽和状態です。海外事業を新しい柱とするために、今後グローバル展開を加速していきたい」と伊藤社長は先を見据える。

2018年2月には、帯状疱疹を発症した後の神経痛に対する医療用貼付剤として同社の製品「ZTlido」が米国FDA(食品医薬品局)から承認を受けた。「ZTlido」は、従来の医薬品と比較して約20分の1の薬物含有量で同等の効果を得られることを米国の医師や患者に訴求している。2019年からはイタリアをはじめとする欧州でも現地のパートナー企業を通じて貼り薬の販売を展開。今後、九州の地の利を生かしやすいアジアへの展開も検討している。「日本の貼り薬は安心・安全な消炎鎮痛剤として需要が見込めます。日本が誇る貼り薬文化を海外にも根付かせていきたい」と伊藤社長。現在、15%の海外売上高比率を近い将来、25%に高めていきたいという。

四つの工場棟を構え、多品目小ロットの生産に対応

明治創業の貼り薬のパイオニア 電子黒板で会議の生産性向上 人材育成、海外戦略、DXを進める 大石膏盛堂(佐賀県)
製造現場で医薬品を包装する様子

大石膏盛堂は、本社から数キロ離れた九州新幹線の線路沿いに広がる約2万4000平方メートルの敷地に四つの工場棟を構え、多品目小ロットの生産に対応している。製造する全ての製品において世界水準の世界水準のGMPレベルの品質を担保しており、品質保証部門全体の8割の人員を品質管理にあてている。

成長の鍵を握るのは人材力 キャリアパス制度や人材マネジメントシステムを導入して能力向上を図る

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大石膏盛堂本社のオフィスの様子

新規事業の開拓や海外展開を加速する上で、これまで以上に重視しているのが、約330人の従業員一人ひとりの人材力強化だ。2018年1月には昇進や昇格に関する基準や条件を明確に定めたキャリアパス制度を整備。2020年からは、従業員の能力を伸ばして適材適所で活躍できるように、eラーニングを活用した教育制度や従業員に関する情報を一元管理して人事業務を効率化するマネジメントシステムを導入している。新卒採用を重視し、若手従業員によるSNSを活用した情報発信にも力を入れている。「若手が生き生きと働くことができる組織にしていきたい」と伊藤社長は話す。

30代を中心に1年間の研修を通じて経営視点を育む「ジュニアボード制度」を導入 全体最適の視点を持った人材を育てる

2020年からは毎年、次世代を担う従業員を10人程度選抜し、1年間の研修を通じて経営視点を育む「ジュニアボード制度」を導入している。前半の半年間は会社の現状を知るための座学、後半は長期ビジョンに基づく中期経営計画とアクションプランの策定に取り組み、締めくくりに全ての従業員にプレゼンテーションを行うようにしている。「部門横断型の研修を行うことで、参加者同士の交流が深まり、様々な社内プロジェクトを考案する上で効果が生まれています。自らのアイデアを具現化するための方策や会社の未来について真剣に考える経験を与えることで、全体最適の視点を持った人材を育てていきたい」と伊藤社長は話す。

会議は一人ひとりの人材が持つ知識、経験、アイデアを結び付け、相乗効果を生み出す重要な場 活性化を狙ってタッチセンサーを備えた電子黒板を導入

明治創業の貼り薬のパイオニア 電子黒板で会議の生産性向上 人材育成、海外戦略、DXを進める 大石膏盛堂(佐賀県)
電子黒板を活用して会議を行う様子

大石膏盛堂は、一人ひとりの従業員が持つ知識、経験、アイデアを結び付け、相乗効果を生み出すために一つひとつの会議を大事にしている。会議の生産性を高めるために2024年8月に導入したのが、タッチセンサーを備えた電子黒板だ。定期的に開催される会社の経営や製品開発に関する会議だけでなく、ジュニアボードをはじめとする従業員の研修でも活用している。

画像が鮮明な電子黒板により、参加者の視線が目の前の資料ではなく電子黒板に向き、アイデアや意見を出しやすくなった

導入した電子黒板はパソコンなどの端末に保存している資料や画像を表示したり、タッチセンサーを通じて直接書き込みができるほか、書き込んだ内容をデータとして保存できる機能を備えている。

導入以前は会議の際、プロジェクターを使ってスクリーンに資料を投影していたため、画像が粗く、細かい文字や数字が読みにくかった。そのため、補足用に紙の資料を配布していたという。画像が鮮明な電子黒板を使うことで紙の資料は不要になり、会議前に資料を印刷し、配布する手間と時間を省けるようになった。それだけではない。以前は、会議中、紙の資料を見るために参加者の視線は下に向きがちだったが、電子黒板を使うことで、視線が上がるようになった。その結果、思いついたアイデアや意見を出しやすくなり、会議がより活性化するようになったという。

「ストレスなく会議を進めて中身を充実させることができるので、本当に助かっています。会議中に画面に書き込んだ内容をデータとして残すことで、会議後の情報共有も簡単にできるようになりました。工場の生産ラインのレイアウトを検討する時も非常に役に立ちました」と伊藤社長はうれしそうに話した。

Web会議の充実に360度カメラを搭載したWeb会議用マイク&スピーカーを活用 発言者を自動で検知しクローズアップ表示

明治創業の貼り薬のパイオニア 電子黒板で会議の生産性向上 人材育成、海外戦略、DXを進める 大石膏盛堂(佐賀県)
360度カメラを搭載したWeb会議用マイクスピーカー
明治創業の貼り薬のパイオニア 電子黒板で会議の生産性向上 人材育成、海外戦略、DXを進める 大石膏盛堂(佐賀県)
マイクスピーカーは自動で発言者を画面にクローズアップ表示する機能を備えている

電子黒板の導入と併せて、コロナ禍以降に増えたWeb会議を充実させるために活用しているのが、360度カメラを搭載したWeb会議用マイクスピーカーだ。マイクスピーカーは自動で会議参加者の発言や動きを認識し、連動した端末の画面に発言者をクローズアップ表示する機能を備えている。以前はリモートでの参加者は、発言者を確認しにくいこともあって会議に加わりにくかったが、導入後は改善された。USBケーブルをパソコンに接続するだけで設置が完了するので、準備の時間がかからない点も重宝しているという。

新規事業として男性向け化粧品ブランド「Satta(サッタ)」を展開 収益源の多様化を図る

明治創業の貼り薬のパイオニア 電子黒板で会議の生産性向上 人材育成、海外戦略、DXを進める 大石膏盛堂(佐賀県)
男性向け化粧品ブランド「Satta(サッタ)」の化粧水

大石膏盛堂は2021年秋、新規事業として男性向け化粧品ブランド「Satta(サッタ)」を立ち上げ、自社開発した化粧水などを販売するなどメンズコスメ分野の開拓に力を入れている。これまで培ってきた企業間取引だけでなく、一般消費者向けの製品を充実させることで収益源の多様化を図る狙いがある。

化粧水には医薬品メーカーの強みを生かして保湿性の向上や肌質の改善をもたらす成分を配合している。「ブランド名は、肌の悩みが『去った』と実感してもらいたいという思いを込めて名付けました。研究開発体制を強化して、皮膚科学と製剤工学に基づいた高品質の化粧品をこれからも提供していきたい」と伊藤社長は話した。

自社製品の販売にはECを活用 販売実績データを開発にフィードバックしながら情報発信、販路開拓を行う

Sattaブランドの製品販売は、2020年に開設した会員制オンラインショップ「OK本舗」や大手のEC(電子商取引)モールを通じて行っている。ECを通じた販売実績の分析を行って開発にフィードバックした上で今後、商品ラインナップを増やし、県内外への情報発信や販路の開拓を進めていきたいという。

地域のプロスポーツチームの支援に積極的に取り組む 2024年5月には佐賀県の「佐賀さいこう企業」の表彰を受けた

明治創業の貼り薬のパイオニア 電子黒板で会議の生産性向上 人材育成、海外戦略、DXを進める 大石膏盛堂(佐賀県)
山浦工場に飾られているサガン鳥栖の選手のサインが入ったユニフォームなど

大石膏盛堂はプロスポーツチームの支援に積極的に取り組んでいる。佐賀県を本拠地とするサッカーのサガン鳥栖、バスケットボールの佐賀バルーナーズなどのオフィシャルスポンサーを務める。サガン鳥栖については1994年に前身の鳥栖フューチャーズが発足した時から支え続けている。プロスポーツチームの支援を通じて地域の経済活性化や健康づくりの意識醸成に貢献すると共に、応援活動を通じた社内の一体感の育みにもつなげている。事業活動や地域貢献に関する様々な取り組みは高い評価を受け、2024年5月には佐賀県による県内の経済や地域社会の活力を支える企業を顕彰する「佐賀さいこう企業」の表彰を受けた。

生産管理システムのデータを分析、可視化して経営や業務への活用を図る 信頼の医薬品づくりにゴールはない

明治創業の貼り薬のパイオニア 電子黒板で会議の生産性向上 人材育成、海外戦略、DXを進める 大石膏盛堂(佐賀県)
大石膏盛堂の本社の外観

伊藤社長は今後、自社の製薬業界専用の生産管理システムのデータを分析、可視化して経営や業務に活用することにも力を入れていきたいと考えている。「デジタル技術を使って間接部門の業務を効率化することで生み出した従業員の時間をマーケティング、研究開発、新規事業の立案、新規市場の開拓に向けるようにしていきたい」と伊藤社長。生成AIの活用も検討していきたいという。

次の100年に向けて人材育成、海外戦略、DXを三位一体で推進している大石膏盛堂。「信頼していただける医薬品づくりにゴールはありません。挑戦に寛容な社風を大事にしながら、これからも世の中に役立つ医薬品づくりに取り組んでいきます」と伊藤社長は力強く話した。

企業概要

会社名株式会社大石膏盛堂
本社佐賀県鳥栖市本町1丁目933番地
HPhttps://www.o-koseido.co.jp
電話0942-83-2019
設立1950年3月(創業1907年)
従業員数約330人
事業内容  一般用医薬品(パップ剤、プラスター剤、テープ剤)、医療用医薬品(パップ剤、テープ剤)、化粧品の製造および販売