著作権遵守が重要であることは昔も今も変わらない。しかしドラマ脚本を巡る問題により、あらためて著作権という権利・内容に注目が集まっている。昨今は、誰もが容易に自分の考えや気持ちを公に表現できるようになったが、そこには著作権が発生しているかもしれない。しかし、どのような場合に著作権違反に該当するか判断するのは意外と難しい。

ここでは、知らないうちに著作権違反とならないように、著作権や著作物の定義、違反事例などについて解説する。著作権について正しく理解し、著作権侵害をしないための心がけの参考にして欲しい。

目次

  1. 著作権とは?
    1. 著作者人格権
    2. 著作権(財産権)
  2. 著作物とは?
    1. 法人著作
    2. 著作物とならないもの
  3. 特許権や商標権と著作権などとの違い
  4. 著作権違反(侵害)とは?
    1. 著作物は自由に使える場合も
  5. 著作権違反の事例
    1. 文章の複製
    2. 音楽の無断使用
    3. 著作物のネット配信
  6. 著作権に違反するとどうなるか?
  7. 著作権侵害をせずに著作物を正しく利用するためには
  8. 著作権侵害に関するQ&A
    1. Q1.著作権侵害とは、どのような場合か?
    2. Q2.著作権を侵害するとどうなるか?
    3. Q3.著作権侵害の対象となる著作物にはどのようなものがあるか?
著作権違反
(画像=Tero Vesalainen/Shutterstock.com)

著作権とは?

著作権とは、著作者が有する権利で、自分が創作した著作物を無断で利用されないようにする権利だ。厳密には、著作者が有する権利は「著作者人格権」および「著作権(財産権)」の2つに分けられ、一般的には後者の「著作権(財産権)」を指して著作権という。

しかし、これら2つの権利をまとめて大きく「著作権」ということもあり、どちらも著作者・著作権利者を保護する権利として法律で守られている。近年は、ネットであらゆる情報(創作物)を閲覧・視聴できるだけでなく誰もがネットを通して文章、画像、映像などを配信できる時代だ。そのため自分が創作する立場、自分が情報(創作物)を利用する立場として、それぞれの権利について確認しておきたい。

著作者人格権

著作人格権とは、著作者の精神的な利益を守る権利。わかりやすく言うと、著作物が著作者の考えと異なる利用をされることによって、著作者が精神的なダメージを受けないように著作者の感情を守るための権利である。著作人格権には、次の3つがある。

  • 公表権
    著作物を公表するかどうか、また公表する場合にはどのような方法で行うかを著作者自身が決定できる権利。

  • 氏名表示権
    著作物に自分の氏名を表示するかどうか、また表示する場合にはどのような表示方法(本名、ペンネーム<など)にするかを著作者自身が決定できる権利。

  • 同一性保持権
    著作物の題名や内容を、第三者に勝手に変えられないための権利。
    なお、著作人格権は著作者の人格を保護するものであるため、第三者に譲ることはできない。著作人格権の保護期間は、著作者の存命中となっており、当権利を親族等に相続することも不可である。ただ著作者が亡くなった後でも著作人格権を侵害する行為は禁止されている。

著作権(財産権)

著作権(財産権)は、著作者の財産的利益を守る権利で、社会で一般的に使用されている「著作権」のことである。著作物には、文芸作品や絵画、画像、映像などさまざまなものがあるが、いずれも著作者が創意工夫して創作した財産だ。

ただ著作物には多種多様な種類が存在し利用方法も多様であるため、著作権をさらに細かく次のような権利に分類している。著作物を著作者の許可なく利用することは、次の各権利を侵害することになる。

  • 複製権
    著作物を印刷したり、写真に撮ったり、複写したり、録音したり、また録画したりできるすべての著作物を対象とした権利。

  • 上演・演奏権
    音楽の演奏、演劇の上演など、著作物を多くの人々に直接聴かせたり、見せたりすることができる権利。著作物(音楽など)が収録されたレコード、CDなどを多くの人々に聞かせる権利も含まれる。

  • 上映権
    フィルム、DVDなどに収録された著作物(映画、写真、絵画など)を多くの人に見せるために、スクリーン、ディスプレイ画面などで上演できる権利。

  • 公衆送信権
    著作物をテレビ、ラジオ、有線放送、インターネットなどで送信できる権利。なお、あらかじめ著作物をホームページに掲載し、第三者からのアクセスがあればいつでも送信できる状態にすることは、「公衆送信権」ではなく「送信可能化権」に該当する。

  • 公の伝達権
    著作物をテレビ、ラジオ、有線放送、インターネットなどを使って伝達できる権利。

  • 口述権
    言語に関する著作物(小説、詩など)を朗読などの方法を使って、多くの人に伝えることができる権利。口述したものを録音し、それを再生する権利も含まれる。

  • 展示権
    美術、写真の著作物を多くの人々から見てもらうために展示できる権利。ただし、写真は未刊行のものに限る。

  • 頒布権
    上映することで、多くの人々に見せるために作られた著作物(劇場型映画など)を販売したり貸したりできる権利。

  • 譲渡権
    著作物やその複製品を、多くの人々に販売などの方法で提供できる権利。ただし、映画は除く。

  • 貸与権
    著作物やその複製品を多くの人々に貸し出しできる権利。ただし、映画は除く。

  • 翻訳権・翻案権
    自己の著作物を翻訳、編曲、変形、脚色、映画化などの方法によって、二次的著作物を作成できる権利。

  • 二次的著作物の利用権
    二次的著作物が利用される際、原著作者は二次的著作物の著作者が有する著作権と同じだけの著作権を持つことができる権利。

労働基準法違反
【こちらの記事もおすすめ】

これって労働基準法違反!?知らずに労働基準法を違反しているかも
働き方改革の施行にあたって、労働基準法の改正が順次行われている。現在設定している社内規定では、新しい改正案に対応できない企業もあるだろうが、労働基準法は遵守しなければならない。今回は、労働基準法に違反について、罰則や過去の事例について……続きを読む

著作物とは?

「著作権法」の第2条第1項では、著作権の対象となる「著作物」を次のように定義している。

著作権法第2条第1項
「著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」

つまり自分の考えや気持ちを独創的に表現した文学、学問、美術、音楽などの作品が著作物ということになる。具体的な著作物の例は、著作権法第10条に列挙されており、これを参考にすると具体的な著作物には次のようなものがある。

  1. 小説、脚本、論文、講演その他の言語
  2. 音楽
  3. 舞踊または無言劇
  4. 絵画、版画、彫刻その他の美術
  5. 建築
  6. 地図または学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形
  7. 映画
  8. 写真
  9. プログラム

9つの各著作物のなかにも、多種多様な創造物がある。例えば映画は、映画館で観るものだけでなくテレビドラマやネット配信動画、CMのフィルム、ゲームソフトなども含まれる。

また、これら9つ以外にも「二次的著作物」や「編集著作物」などといった著作物もある。二次的著作物とは、上記9つの著作物(原著作物)を翻訳、編曲、変形、翻案(映画化など)して創作したものだ。編集著作物は、新聞や雑誌、百科事典、辞書、詩集など、複数の素材からなる著作物で、素材の選択や配列に創作性があるものだ。

法人著作

著作物というと、文芸家や芸術家などの個人が自らの考えや気持ちに基づき創作したイメージを持つ人は多いだろう。しかし実際には、会社が発意し、その会社の従業員が職務として創作、法人がその創作物を公表する場合もある。

著作権法第15条では、このような場合の著作者は法人となり、法人が著作権を有する旨規定しており、このような著作物を法人(職務)著作の著作物という。ただし、「その著作物作成時において法人と当該従業員との間で契約、勤務規則などに従業者を著作者とする」などといった別段の定めがある場合はこの限りではない。

著作権法第15条(職務上作成する著作物の著作者)
「法人その他使用者(以下この条において「法人等」という。)の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成する著作物(プログラムの著作物を除く。)で、その法人等が自己の著作の名義の下に公表するものの著作者は、その作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り、その法人等とする」

著作物とならないもの

これまで説明したように、著作物は著作者の考えや気持ちを独創的に作品として表現されたものであるため、事実の伝達にすぎない雑報や時事の報道などは著作物に該当しない。また近年はAIによって作成された文章や画像、音楽などを見聞きすることも増えているが、感情を持たないAIが自律的に生成した創作物は基本的に著作物とはみなされない。

それでも人が自己の考えや感情を創作的に表現する道具としてAIを活用し、その結果生成された創作物は著作物に該当するため注意が必要だ。

特許権や商標権と著作権などとの違い

考えなどをもとに知的創作物を作り出した人に対する権利としてしては、著作権以外にも「知的財産権(知的所有権)」や「特許権」、「商標権」などといった言葉も聞いたことがあるだろう。これらの共通点や違いをしっかりと整理しておこう。共通点としては、知的な創作活動によって作り出されたものおよび、作り出した人を保護する権利であるということだ。

しかし、ご存じの人も多いと思うが創作物(製品)に特許番号や商標番号が記載されているものもある。この番号は、その製品が特許権や商標権の対象となっていること、つまり創作者の権利を保護するものであることを示すものであり、そのためには特許庁へ申請、登録されることが必要となる。なぜなら、これらの権利は特許庁に登録することによってはじめて発生するからだ。

一方、「著作権」は、創作物(著作物)を生み出した時点で権利が自然に発生し、管理機関などへの登録をする必要はない。この点が大きな違いだ。

なお著作権や特許権、商標権などの大元にある権利を知的財産権(知的所有権)という。知的財産権は、大きく「著作権」と「産業財産権(工業所有権)」の2つに分かれる。産業財産権(工業所有権)とは、先述した「特許権」や「商標権」「実用新案権」「意匠権」などをまとめたものだ。

「特許権」および「商標権」に限らずすべての「産業財産権(工業所有権)」は、対象となる特許や商標などを登録することで権利が発生することも知っておくといいだろう。

著作権違反(侵害)とは?

ここからは、著作権違反(著作権侵害)について確認していこう。法人著作については、先に説明したとおりだが、近年はSNSやブログ、オウンドメディアなどで著作物を創作・配信している企業も多い。企業経営者や担当者は、自社の著作物を侵害される場合のことだけでなく、他者の著作権侵害となる行為をしてしまう可能性も含めて注意を払うことが必要だ。

著作権違反(著作権侵害)とは、著作権で保護されている著作物を著作者の許可なく(無断で)利用することだ。例えば他のホームページに記載されている文章を自分で書いたように複製したり無断でコピーしてインターネット上でアップしたりする行為などが代表的だ。

なお著作権違反(著作権侵害)は、ライターや音楽家、芸術家といった職業だけのものとは限らない。現代では、ブログや個人サイトなどに誰もがアクセスできる状態にある。そうした場所で故意に著作権に違反することがあってはならない。意図せず著作権違反した場合でも、著作権違反で訴えられるケースも少なからず起こり得る。注意が必要だ。

著作物は自由に使える場合も

著作権法において著作物は、著作者の許可を得ることなく自由に使える場合も明記している。例えば、私的使用を目的とした複製や、営利を目的とせずに利用したり引用したりする場合などだ。私的使用とは、自分や家族、友人など限られた範囲だけで映画を観たり音楽を聴いたりすることを指す。

このような場合は、無断でコピーしたものを使用しても問題ないとされている。しかし例外も細かく規定されている。例えばコピープロテクションなどで本来コピーできない施工がされているものを回避装置などでコピーする場合は、私的使用の場合でも著作権者へ許可を得なくてはならない。

また海賊版であることを知りながらインターネット上で配信されている映像や音楽をダウンロードする行為も禁止だ。営利を目的としない利用では、家族や友人、職場の同僚など一定の限られた範囲を超えても自由に著作物を上映したり演奏したり朗読したりすることができるとしている。

ただしこの場合には、顧客から料金を取らないだけでなく出演者や運営者なども無報酬でなければならない。

営利目的で他者の著作物を利用する場合は、著作権者の利用許可を得たうえで使用する必要がある。著作物の利用には、利用料が発生する場合もあるが著作権侵害として訴えられないための必要コストとして捉えよう。なお著作権者は、著作者自身であるとは限らない。著作権者の利用許可が得られた場合でも、著作者の著作者人格権を侵害しない配慮も必要だ。

著作権違反の事例

著作権侵害(違反)の事例をいくつか紹介しよう。著作物には、さまざまな種類があるが、ここでは「文章」「音楽」「ネット配信」の3つの事例を紹介する。

文章の複製

他人が書いた文章を勝手に転用して公に発表するという行為は、著作権違反の代表的な事案である。

  • 新聞の記事を勝手に使って、あたかも自分が書いたかのように発表する
  • 他人が書いた論文を適当に順番や助詞(てにをは)を変えて、自分が書いたようにして発表する

こういった著作権違反は、たびたび発覚する不正行為である。最近ではWebライターが、クラアントからの発注に応じて記事を書く場合に、インターネットでキーワードを検索し、いくつかの記事をつなぎ合わせたり適当に編集したりして、自分の記事として作成するという著作権違反の事案が目立っている。

記事や論文を盗用された側は、自分が苦労して書いた著作物が勝手に使われたのだから、法的手段などで対抗することになる。特に論文を盗用する人は研究者などが多いため、不正によって氏名が公表された上に、解雇されるなどの社会的制裁を受けることもある。

最近では、著作物からの文章盗用率をチェックできるソフトがあるため、投稿された文章がオリジナルなのか、他人の文章を盗用したのか、簡単に調べることができるようになった。また、本来の著作者も、検索エンジンで自分が書いた文章のキーワードを入力・検索し、自分の書いた文章が盗用されていないか、容易に調べることができるようになっている。

他人の文章を著作者の許可なく使うことは、著作者の「複製権」を侵害することになる。複製権とは、自分が書いた文章を自由に複製(コピー)することができる権利である。例えば、Webライターが勝手に他人の書いた記事をコピーして自らのサイト上で公開すれば、著作者の複製権を侵害したことになる。

それでは、語順を変えたり、助詞を変えたりすれば、この複製権の侵害に当たらないのかと言えば、決してそうではない。著作者には、著作物の内容を勝手に変更されないという「同一性保持権」があるからだ。

したがって、明らかに著作物の一部に手を加えて別の著作物にした場合も、同一性保持権の侵害に当たる。ただし、過度な著作権制限を行わないという趣旨から、学校教育上などやむを得ない改変が認められる場合は、同一性保持権の侵害には当たらないことがある。

なお、複製権、同一性保持権を侵害したことで、著作権者が本来得られる利益を損なった場合には、損害賠償を請求されたり、不当利得とみなされ返還請求をされたりする。

音楽の無断使用

音楽にも著作権があることは知っていても、どのような場合に著作権違反に該当するのか正確に把握している人は少ないのではないだろうか。ここでは、自らが知らないうちに著作権違反を犯さないように、音楽の著作権で特に問題となるBGMの使用に関して、代表的な3つの事例を取り上げて説明する。

・①著作物であるCD音源を店内でBGMとして流す

BGMがかかっている喫茶店は多いが、例えばチェーン店ではなく、個人で喫茶店を経営しているような場合、自分でCDを購入してプレイヤーで音楽を流すところもあるだろう。

もちろん、店主が自分の部屋でCDを聴く限りは全く問題ない。しかし、喫茶店という不特定多数の人が集まり、しかも営利を目的とする店のなかでお客さん対象にBGMを流せば、著作権者(この場合は作曲者)に対して、「著作権使用料」の支払い義務が生じる。

店主としては、「自分がお金を出して買ってきたCDを自分の店で流すことは自由ではないか」と思うだろう。しかし、店主が購入したのはCDという商品であり、CDに収録されている音楽ではない。CDに収録されている音楽については作曲者が著作権を持っているため、音楽を使用したい人に対して、使用を許可したり禁止したりすることができる。現在ほとんどの音楽の著作権は、「一般社団法人日本音楽著作権協会」(通称「JASRAC」)が作曲者の依頼を受けて管理を行っている。

したがって、喫茶店でBGMを流す場合には、あらかじめJASRACに連絡を取って、事前に作曲者の許可を得る手続きをしなければならない。なお、CDプレイヤーを使う他に、パソコンなどを使って店内で音楽を流す場合も同様である。

著作権の対象となる音楽は、作曲者が存命中はもちろん、亡くなってから70年の間保護される。自分が使いたい音楽が著作権の対象となるかどうかは、「JASRAC」の作品データベース検索サービスなどで調べることができる。

・②著作物の音楽を生演奏する

スナックやパブなどの飲食店で、生バンドの演奏、ピアノの弾き語りなどを行う場合がある。この場合も、演奏する曲には、作曲者の著作権が存在する。使用する前に確認をして、著作権の対象である場合には、JASRACで著作音源の使用手続きを行う必要がある。

スナックなどでカラオケを使用する場合には、基本的にカラオケ機器のリース会社がJASRACの仲介者となって契約を行っている。しかし、この契約は強制ではなくあくまでも任意であるため、カラオケ機器を導入する際には、確認しておく必要がある。

・③発表会で著作権がある音楽を使用する

例えば、クラシックバレエの発表会で、BGMとして音楽を流す場合、その音楽の作曲者が亡くなって50年以上経っていないときには、著作権の対象となる。吹奏楽で演奏する曲も同様である。ただ注意したいのは、発表会で入場料を徴収する場合は、作曲者へ使用料を支払わなければならない点である。もし、入場料が無料であれば営利目的の発表会ではないとみなされ、使用料を支払う必要はない。

著作物のネット配信

漫画、アニメ、映画などを無断でネットを使って配信する行為は、まさに現代を象徴する著作権の侵害事例である。漫画、アニメ、映画などは、出版社や電子コンテンツ会社、配給元の会社が、製作者や制作会社と独占契約を締結し、出版、配信、上映することで、読者、視聴者、観客から金銭を得る仕組みになっている。

しかし、さまざまな機器の発達で、これらの成果物を勝手に撮影・録画し、インターネットを介してWebサイト上などで配信する行為が目立っている。ネット配信を通して著作権を違反した事件として有名なのが、海賊版サイト「漫画村」の事件である。これは、自ら作成したサイト「漫画村」上に、無断で多数の漫画コンテンツをアップロードして誰でも閲覧できるようにしたという著作権違反の事例である。

2019年9月24日、警視庁、栃木県警、鳥取県警、福岡県警、大分県警、熊本県警の6都県警察合同捜査本部が、違法漫画リーディングサイト「漫画村」を使って著作権者に無断で公開していたとして、男女3名とこのサイトを運営していた男を著作権法違反で逮捕した。このうち3名が起訴されている。

また、既存のサイトを使った違反行為でも、逮捕・送検されている。2019年11月8日、熊本県県警サイバー犯罪対策課と熊本県県警葦北署は、動画投稿サイト「YouTube」を使って、著作権者に無断で漫画をアップロードして、送信できる状態にしていた男(北海道在住・30代)を著作権法違反の疑いで逮捕、送検した。

この男は2019年4月に、講談社が発行する「進撃の巨人」や集英社が発行する「ONE PIECE」を、著作権者に無断で「YouTube」を使ってアップロードし、不特定多数の視聴者に送信できるようにしていた。

逮捕のきっかけは、熊本県県警がサイバーパトロールで、「YouTube」に不正にアップロードされた動画を発見し、ACCSを通じて著作権者に連絡したものである。ACCSとは、「一般社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会」のことで、「知的財産権」の保護を目的として創設された団体である。
前述したように「知的財産権」とは、著作物や工業所有権などの無体物に対して著作者が専有できる権利のことで、産業財産権(特許権など)や著作権が含まれている。

これら、漫画、アニメ、映画などを無断でネットを使って配信することは、著作権者が持っている「公衆送信権」や「出版権」を侵害する行為になる。これらの著作者の権利を第三者が侵害することは、重大な刑事事件であるとともに、莫大な損害賠償を請求される可能性がある。

著作権に違反するとどうなるか?

著作権に違反した場合には、「著作権法」に基づいて、罰則が科される。ただ著作権者は、民事上の対抗措置と刑事上の対抗措置を有しており、刑事上の罰則を科すためには、他人の著作権を侵害した行為に関して「故意だった」という条件が必要になってくる。

「故意」とは言い換えれば「わざと」という意味であるので、他人の著作物であることを知っていたにも関わらず、許可なく利用したり、自分の創作物だと偽って公表したりする行為ということになる。

そのため著作権があるものだと知らずにうっかり著作物を無断使用した場合は、刑事罪には問われないが、民事上の損害賠償責任を問わることがある。

具体的な刑罰は、個々の内容、状況、あるいは著作権に違反した者が個人か法人(会社)かによって異なる。「著作権法第119条」では、著作権、出版権、著作隣接権の侵害は、10年以下の懲役、または1,000万円以下の罰金とされている。

また、著作者人格権、実演家人格権などの侵害は、5年以下の懲役又は500万円以下の罰金とされている。さらに、法人の代表者や従業員などが著作権等(著作者人格権を除く)を侵害した場合は、行為者が罰せられる他、法人に対しても3億円以下の罰金が科せられる。著作権の侵害がかなりの重罪であることがわかる。

以上は刑事罰の話であるが、著作権を侵害した場合の民事上の責任もかなり重い。他人の著作権を侵害した場合、著作権者から差止請求、損害賠償請求、不当利得返還請求、名誉回復などを求められる可能性がある。民亊であるため、金銭的な解決になる場合が多い。

著作権者にとっては、著作権を侵害されたことによって入るはずの収入を受け取れなかったり、名誉を傷つけられたりしたことの代償を求めることになるので、金額は個々の案件によって異なるが、決して少額ではない。

著作物や著作者の想いの度合い、著作権侵害の内容などによっては侵害した者が罰金・懲役などの罰則を受けるだけでは済まなくなる可能性もある。深刻な場合には著作者自身の身体・健康に被害が及ぶこともあることは誰もが再認識しておきたい。

著作権侵害をせずに著作物を正しく利用するためには

自分自身は苦心して創作物を生み出したとしても、現実的に著作権を侵害したことになるのでは納得できないかもしれない。これは、さまざまな情報・創作物があふれている現代社会において、あらたな創作物を生み出すためにすでに公表されている情報を閲覧したり、ひらめきを得るために既存の創作物を見聞きしたりすることも必要だからだ。

そのようにならないためには、著作権についての知識を高め、細心の注意を払うしかないだろう。自分が著作物を使用する際には、利用許可の有無や範囲を確認し、許可が必要な場合は必ず著作権者の承諾を得ることに尽きる。この許可・承諾は口頭ではなく文書で行うことも大切だ。

また自分の著作物が他者に使用されることもあるだろう。その場合は「自分の著作物である」と堂々と対抗できるように、その著作物を創作した際の自分の考え・感覚等を明確に述べられるようにしておくことも大切なのではないだろうか。

著作権侵害に関するQ&A

Q1.著作権侵害とは、どのような場合か?

A. 著作権侵害は、著作権法第30条~第47条6で認められている利用法を除き著作物を著作者の許可を得ず利用することだ。例えば著作物を無断でコピーしてインターネット上でアップしたり著作物を改変したり既存の著作物と類似した作品を作成するような行為などが該当する。

また自分自身が直接手を加えたものではなくても海賊版と知っていながらコピーする行為も著作権侵害だ。

Q2.著作権を侵害するとどうなるか?

A. 著作権を侵害すると民事上および刑事上の罰則を受けることになる。民事上では、著作権者から差止請求、損害賠償請求、不当利得返還請求、名誉回復などを求められる可能性があるため、注意したい。刑事罰は、個々の内容や状況、著作権に違反した者が個人か法人(会社)かなどで具体的な罰則の内容が異なる。

例えば著作権や出版権、著作隣接権の侵害は、10年以下の懲役、または1,000万円以下の罰金。著作者人格権、実演家人格権などの侵害は、5年以下の懲役または500万円以下の罰金とされている。

Q3.著作権侵害の対象となる著作物にはどのようなものがあるか?

A.著作権侵害の対象となる著作物は、大きく9つに分類されている。列挙すると以下のようなものだ。

  • 小説、脚本、論文、講演その他の言語
  • 音楽
  • 舞踊または無言劇
  • 絵画、版画、彫刻その他の美術
  • 建築
  • 地図または学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形
  • 映画
  • 写真
  • プログラム など

一方でこれらの著作物を利用する場合でも私的使用など著作権侵害とならないケースもある。

無料の会員登録でより便利にTHE OWNERをご活用ください
他ではあまり登壇しない経営者の貴重な話が聞けるWEBセミナーなど会員限定コンテンツに参加できる、無料の会員登録をご利用ください。気になる記事のクリップや執筆者のフォローなどマイページからいつでも確認できるようになります。登録は、メールアドレスの他、AppleIDやtwitter、Facebookアカウントとの連携も可能です。 ※SNSに許可なく投稿されることはありません

無料会員登録はこちら