著作権違反
(画像=Tero Vesalainen/Shutterstock.com)

他人が書いた文章を本人の了解なしに公表すれば「著作権違反」になることは、多くの人が理解できるだろう。しかし、どのような場合に著作権違反に該当するか判断するのは意外と難しい。ここでは、知らない内に著作権に違反しないために、著作権の定義と違反事例について紹介する。

目次

  1. 著作権とは何か?
  2. 著作権違反の事例:文章の複製
  3. 著作権違反の事例:音楽の無断使用
  4. 著作権違反の事例:著作物のネット配信
  5. 著作権に違反した場合の罰則

著作権とは何か?

著作権を規定している法律は「著作権法」であるが、この法律の第2条に、著作権に関する定義が記載されている。その中で、著作権の対象となる「著作物」を次のように定義している。

著作権法第2条第1項第1号
「著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属する
もの」

つまり、自分の考えや気持ちを独創的に表現した文学、学問、美術、音楽などの作品が著作物ということになる。一般的に著作権には、著作物によって表現されている著作者の人格を保護するための「著作者人格権」と、著作者が第三者に対して著作物の利用を許可することにより使用料を受け取ることができる「著作権(財産権)」の2つがある。

著作人格権とは、著作者の感情を守り精神的なダメージを受けないための権利である。著作権は、著作者の意思で他人に譲ることができるが、著作人格権は著作者の人格を保護するものであるため、譲ることはできない。著作人格権には、次の3つがある。

・公表権
著作物を公表するかどうか、また公表する場合にはどのような方法で行うかを著作者自身が決定できる権利。

・氏名表示権
著作物に自分の氏名を表示するかどうか、また表示する場合にはどのような表示方法(本名、ペンネーム<など)にするかを著作者自身が決定できる権利。

・同一性保持権
著作物の題名や内容を、第三者に勝手に変えられないための権利。

なお、著作人格権の保護期間は、著作者の存命中となっている。ただ、著作者が亡くなった後でも著作人格権を侵害する行為は禁止されている。

著作権(財産権)は、社会で一般的に使用されている「著作権」のことである。著作物には、多種多様な種類が存在し利用方法も様々であるため、著作権をさらに細かく次のような権利に分類している。著作物を著作者の許可なく利用することは、次の各権利を侵害することになる。

・複製権
著作物を印刷したり、写真に撮ったり、コピー機で複写したり、録音したり、また録画したりできる全ての著作物を対象とした権利。

・上演・演奏権
音楽の演奏、演劇の上演など、著作物を多くの人々に直接聴かせたり、見せたりすることができる権利。
著作物(音楽など)が収録されたレコード、CDなどを多くの人々に聞かせる権利も含まれる。

・上映権
フィルム、DVDなどに収録された著作物(映画、写真、絵画など)を多くの人に見せるために、スクリーン、ディスプレイ画面などで上演できる権利。

・公衆送信権
著作物をテレビ、ラジオ、有線放送、インターネットなどで送信できる権利。なお、あらかじめ著作物をホームページに掲載し、第三者からのアクセスがあればいつでも送信できる状態にすることは、「公衆送信権」ではなく「送信可能化権」に該当する。

・公の伝達権
著作物をテレビ、ラジオ、有線放送、インターネットなどを使って伝達できる権利。

・口述権
言語に関する著作物(小説、詩など)を朗読などの方法を使って、多くの人に伝えることができる権利。

・展示権
美術、写真の著作物を多くの人々から見てもらうために展示できる権利。ただし、写真は未刊行のものに限る。

・頒布権
上映することで、多くの人々に見せるために作られた著作物(劇場型映画など)を販売したり貸したりできる権利。

・譲渡権
著作物やその複製品を、多くの人々に販売などの方法で提供できる権利。ただし、映画は除く。

・貸与権
著作物やその複製品を多くの人々に貸し出しできる権利。ただし、映画は除く。

・翻訳権・翻案権
著作権を翻訳、編曲、変形、脚色、映画化などの方法によって、二次的著作物を作成できる権利。

・二次的著作物の利用権
二次的著作物が利用される際、原著作者は二次的著作物の著作者が有する著作権と同じだけの著作権を持つことができる権利。

著作権違反の事例:文章の複製

著作権違反
(画像=fizkes/Shutterstock.com)

他人が書いた文章を勝手に転用して公に発表するという行為は、著作権違反の代表的な事案である。

・新聞の記事を勝手に使って、あたかも自分が書いたかのように発表する。
・他人が書いた論文を適当に順番や助詞(てにをは)を変えて、自分が書いたようにして発表する。

こういった著作権違反は、度々発覚する不正行為である。

最近ではWebライターが、クラアントからの発注に応じて記事を書く場合に、インターネットでキーワードを検索し、いくつかの記事をつなぎ合わせたり適当に編集したりして、自分の記事として作成するという著作権違反の事案が目立っている。

記事や論文を盗用された側は、自分が苦労して書いた著作物が勝手に使われたのだから、法的手段などで対抗することになる。特に論文を盗用する人は研究者などが多いため、不正によって氏名が公表された上に、解雇されるなどの社会的制裁を受けることもある。

最近では、著作物からの文章盗用率をチェックできるソフトがあるため、投稿された文章がオリジナルなのか、他人の文章を盗用したのか、簡単に調べることができるようになった。また、本来の著作者も、検索エンジンで自分が書いた文章のキーワードを入力・検索し、自分の書いた文章が盗用されていないか、容易に調べることができるようになっている。

他人の文章を著作者の許可なく使うことは、著作者の「複製権」を侵害することになる。複製権とは、自分が書いた文章を自由に複製(コピー)することができる権利である。例えば、Webライターが勝手に他人が書いた記事をコピーして自らのサイト上で公開すれば、著作者の複製権を侵害したことになる。

それでは、語順を変えたり、助詞を変えたりすれば、この複製権の侵害に当たらないのかと言えば、決してそうではない。著作者には、著作物の内容を勝手に変更されないという「同一性保持権」があるからだ。

したがって、明らかに著作物の一部に手を加えて別の著作物にした場合も、同一性保持権の侵害に当たる。ただし、過度な著作権制限を行わないという趣旨から、学校教育上などやむを得ない改変が認められる場合は、同一性保持権の侵害には当たらないことがある。

なお、複製権、同一性保持権を侵害したことで、著作権者が本来得られる利益を損なった場合には、損害賠償を請求されたり、不当利得とみなされ返還請求をされたりする。

著作権違反の事例:音楽の無断使用

著作権違反
(画像=Africa Studio/Shutterstock.com)

音楽にも著作権があることは、ほとんどの人がご存知だろう。ただ、どのような場合に著作権違反に該当するのか正確に把握している人は少ないのではないだろうか。ここでは、自らが知らないうちに著作権違反を犯さないように、音楽の著作権で特に問題となるBGMの使用に関して、代表的な3つの事例を取り上げて説明する。

・①著作物であるCD音源を店内でBGMとして流す
BGMがかかっている喫茶店は多いが、例えばチェーン店ではなく、個人で喫茶店を経営しているような場合、自分でCDを購入してプレイヤーで音楽を流すところもあるだろう。

もちろん、店主が自分の部屋でCDを聴く限りは全く問題ない。しかし、喫茶店という不特定多数の人が集まり、しかも営利を目的とする店の中でお客さん対象にBGMを流せば、著作権者(この場合は作曲者)に対して、「著作権使用料」の支払い義務が生じる。

店主としては、「自分がお金を出して買ってきたCDを自分の店で流すことは自由ではないか」と思うだろう。しかし、店主が購入したのはCDという商品であり、CDに収録されている音楽ではない。

CDに収録されている音楽については作曲者が著作権を持っているため、音楽を使用したい人に対して、使用を許可したり禁止したりすることができる。現在ほとんどの音楽の著作権は、「一般社団法人日本音楽著作権協会」(通称「JASRAC」)が作曲者の依頼を受けて管理を行っている。

したがって、喫茶店でBGMを流す場合には、あらかじめJASRACに連絡を取って、事前に作曲者の許可を得る手続きをしなければならない。なお、CDプレイヤーを使う他に、パソコンなどを使って店内で音楽を流す場合も同様である。

著作権の対象となる音楽は、作曲者が存命中はもちろん、亡くなってから70年の間保護される。自分が使いたい音楽が著作権の対象となるかどうかは、「JASRAC」の作品データベース検索サービスなどで調べることができる。

・②著作物の音楽を生演奏する
スナックやパブなどの飲食店で、生バンドの演奏、ピアノの弾き語りなどを行う場合がある。この場合も、演奏する曲には、作曲者の著作権が存在する。使用する前に確認をして、著作権の対象である場合には、JASRACで著作音源の使用手続きを行う必要がある。

スナックなどでカラオケを使用する場合には、基本的にカラオケ機器のリース会社がJASRACの仲介者となって契約を行っている。しかし、この契約は強制ではなくあくまでも任意であるため、カラオケ機器を導入する際には、確認しておく必要がある。

・③発表会で著作権がある音楽を使用する
例えば、クラシックバレエの発表会で、BGMとして音楽を流す場合、その音楽の作曲者が亡くなって50年以上経っていないときには、著作権の対象となる。吹奏楽で演奏する曲も同様である。

ただ注意したいのは、発表会で入場料を徴収する場合は、作曲者へ使用料を支払わなければならない点である。もし、入場料が無料であれば営利目的の発表会ではないとみなされ、使用料を支払う必要はない。

著作権違反の事例:著作物のネット配信

漫画、アニメ、映画などを無断でネットを使って配信する行為は、まさに現代を象徴する著作権の侵害事例である。漫画、アニメ、映画などは、出版社や電子コンテンツ会社、配給元の会社が、製作者や制作会社と独占契約を締結し、出版、配信、上映することで、読者、視聴者、観客から金銭を得る仕組みになっている。

しかし、様々な機器の発達で、これらの成果物を勝手に撮影・録画し、インターネットを介してWebサイト上などで配信する行為が目立っている。

ネット配信を通して著作権を違反した事件として有名なのが、海賊版サイト「漫画村」の事件である。これは、自ら作成したサイト「漫画村」上に、無断で多数の漫画コンテンツをアップロードして誰でも閲覧できるようにしたという著作権違反の事例である。

2019年9月24日、警視庁、栃木県警、鳥取県警、福岡県警、大分県警、熊本県警の6都県警察合同捜査本部が、違法漫画リーディングサイト「漫画村」を使って著作権者に無断で公開していたとして、男女3名とこのサイトを運営していた男を著作権法違反で逮捕した。このうち3名が起訴されている。

また、既存のサイトを使った違反行為でも、逮捕・送検されている。2019年11月8日、熊本県県警サイバー犯罪対策課と熊本県県警葦北署は、動画投稿サイト「YouTube」を使って、著作権者に無断で漫画をアップロードして、送信できる状態にしていた男(北海道在住・30代)を著作権法違反の疑いで逮捕、送検した。

この男は2019年4月に、講談社が発行する「進撃の巨人」や集英社が発行する「ONE PIECE」を、著作権者に無断で「YouTube」を使ってアップロードし、不特定多数の視聴者に送信できるようにしていた。

逮捕のきっかけは、熊本県県警がサイバーパトロールで、「YouTube」に不正にアップロードされた動画を発見し、ACCSを通じて著作権者に連絡したものである。ACCSとは、「一般社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会」のことで、「知的財産権」の保護を目的として創設された団体である。

「知的財産権」とは、著作物や工業所有権などの無体物に対して著作者が専有できる権利のことで、産業財産権(特許権など)や著作権が含まれている。

これら、漫画、アニメ、映画などを無断でネットを使って配信することは、著作権者が持っている「公衆送信権」や「出版権」を侵害する行為になる。「公衆送信権」は、著作権者が著作物をテレビ、ラジオ、有線放送、インターネットなどで送信できる権利であり、「出版権」とは著作権者が著作物を出版できる権利である。

これらの著作者の権利を第三者が侵害することは、重大な刑事事件であるとともに、莫大な損害賠償を請求される可能性がある。

著作権に違反した場合の罰則

著作権に違反した場合には、「著作権法」に基づいて、罰則が科される。ただ、罰則が科されるのは、他人の著作権を侵害した行為に関して、「故意だった」とう条件が必要になってくる。「故意」とは言い換えれば「わざと」という意味であるので、他人の著作物であることを知っていたにも関わらず、あえて著作権に違反する意図があったということになる。

「故意」の対義語は「過失(うっかり)」であるが、著作権があるものだと知らずにうっかり著作物を無断使用した場合は、罪には問われないことになる。

ただ、他人の著作物を勝手に引用した人が、「全く知らなかった。引用した行為は自分の過失だ。」という主張をするのには、かなり無理がある。例えば、ある人が第三者の論文とほぼ同じ文章を書くという確率はかなり低いだろう。

仮に、著作権法違反で訴えられた場合には、被告側は裁判で「知らなかった」ということを立証しなければならない。「○○を知っていた」ということを立証するのは比較的容易だが、「○○を知らなかった」ということを立証するのはかなり難しい。いわゆる「悪魔の証明」と言われるものである。

具体的な刑罰は、個々の内容、状況、あるいは著作権に違反した者が個人か法人(会社)かによって異なる。「著作権法第119条」では、著作権、出版権、著作隣接権の侵害は、10年以下の懲役、または1,000万円以下の罰金とされている。

また、著作者人格権、実演家人格権などの侵害は、5年以下の懲役又は500万円以下の罰金とされている。さらに、法人の代表者や従業員などが著作権等(著作者人格権を除く)を侵害した場合は、行為者が罰せられる他、法人に対しても3億円以下の罰金が科せられる。著作権の侵害がかなりの重罪であることがわかる。

以上は刑事罰の話であるが、著作権を侵害した場合の民事上の責任もかなり重い。他人の著作権を侵害した場合、著作権者から差止請求、損害賠償請求、不当利得返還請求、名誉回復などを求められる可能性がある。民亊であるため、金銭的な解決になる場合が多い。

著作権者にとっては、著作権を侵害されたことによって入るはずの収入を受け取れなかったり、名誉を傷つけられたりしたことの代償を求めることになるので、金額は個々の案件によって異なるが、決して少額ではない。なお、著作権者に対して民事的な責任を果たした(金銭で償った)としても、刑事的な責任から免れることはできない。

著作権を違反する行為に対しては、刑事、民事ともに厳しいペナルティが科される。どのような場合が著作権違反に該当するのか、慎重に検討することで自らの身を守るしかないのである。

文・井上通夫(行政書士・行政書士井上法務事務所代表)

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