特許権
(画像=Olivier Le Moal/Shutterstock.com)

特許権と聞くと、難しくて素人には関係のない話しと感じるかもしれない。しかし、一般の主婦の中でも自分でアイデアを考えて特許権を取る人もおり、決して非現実的な話ではない。ここでは、特許権の定義、特許権を取るための手続きなど、特許に関する情報をご紹介する。

目次

  1. 特許権とは何か?
  2. 特許を申請する前に抵触しないか検索しよう
  3. 特許の申請方法は?
  4. 特許の出願に必要な書類は?作成方法もわかりやすく解説
    1. 特許願(願書)の作成方法
    2. 特許請求の範囲(請求項)の作成方法
    3. 明細書の作成方法
    4. 特許を視覚化する図面の作成方法
    5. 要約書の作成方法
  5. 特許申請から取得までの流れ
    1. 1.特許庁へ申請
    2. 2.特許庁で二段階の審査
    3. 3.特許料を納付
  6. 特許を個人で取る?弁理士に頼む?

特許権とは何か?

特許権という言葉はよく耳にすると思うが、その正しい意味を理解している人は意外と少ない。まず、特許権とは何かを説明しよう。

特許権とは、有用と認められる「発明」を行った本人(発明者)、あるいはそれを受け継ぐ人(相続人など)に対して、その発明を公にすることの代償として、一定の期間その発明を独占的に使用することができる権利のことである。

日本のみならず多くの国で特許権は存在するが、手続きの方法や基準は各国の法律で規定されている。日本では、「特許法」という法律によって細かく規定されており、一定の期間が過ぎれば、発明の実施が自由に解放される仕組みになっている。

日本の特許法では、特許権は無体物(形のないもの)である発明品に対して、排他的な支配権を認める旨が記載されている。また、「知的財産権」の一つとされ、日本の特許制度では、特許権で発明の保護と利用を図り、それによって発明を奨励するとしている。さらに、特許権を国が与える目的としては、産業の発達に寄与するためである。

手続きの手順の概略であるが、まず発明者は、以下のような要件をクリアした発明について、その発明に関する出願書類などを特許庁長官に提出する。

  • 産業上利用可能である
  • 新規性がある
  • 進歩性がある

提出した後に、書類に記載された内容が審査され、特許権が与えられることになる。

なお、特許要件を備えていたとしても、公序良俗に反する、公衆衛生を害するなどの恐れがある発明は特許権が与えられない。

特許権の存続期間は出願の日から20年であり、特許権が認められれば、特許権者は独占的に使用できるだけでなく、他人に譲渡したり、質に入れたり、実施料を徴収して他人に利用させたりすることができる。

特許を申請する前に抵触しないか検索しよう

新しいアイデアが浮かび、新規性や進歩性の点からも特許を取れると思っても、まずやるべきことがある。それは、類似した特許に抵触しないか、または既に公知でないかを検索することである。

今自分が思い浮かんだアイデアは、誰かが先に考案して特許申請をしているかもしれない。既存の特許や公知文献と類似性が高いと、特許に抵触していると判断されるため、特許権を取ることができない。具体的には、無料のデータベース「特許情報プラットフォーム」を利用して検索を行うことになる。

検索方法は次のとおりである。

まず、検索エンジンで「特許情報プラットフォーム」と検索する。そうすると、画面にいくつか「特許情報プラットフォーム」が出てくるので、「J-PlatPat」をクリックする。なお、検索する際に初めから「https://www.j-platpat.inpit.go.jp/」と入力すれば、「J-PlatPat」の特許検索画面が出てくる。

「J-PlatPat」の特許検索画面に「簡易検索」という項目があり、「特許・実用新案、意匠、商標について、キーワードや番号を入力してください。」という記載がある。検索方法は、普段利用する検索エンジンと同じである。

「特許・実用新案」にチェックを入れて、検索窓に調べたい特許権の関連するキーワードを入力し、検索ボタンをクリックする。キーワードは、一語でも二語以上でもいいが、より絞り込みたいときには二語以上を入力した方が良い。

検索結果の一覧が表示され、今まで特許申請されたものが列記される。この中から、自分が思い浮かんだアイデアと類似するものを探し、詳しく比較検討することになる。以上が最も簡易な検索方法である。

もっと詳細に調べたい場合には、同じく「J-PlatPat」のトップ画面から検索を行う。青色のバーの左「特許・実用新案」にカーソルを合わせると、上から「特許・実用新案番号照会/OPD」、「特許・実用新案検索」、「特許・実用新案分類照会(PMGS)」が表示される。

真ん中の「特許・実用新案検索」をクリックすると、詳細に検索するための特許・実用新案検索画面が表示される。特許だけを検索したい場合には、「文献種別」の右にある「詳細設定」をクリックする。

詳細設定画面が出たら、「実用新案(実開・実表・登実(U)、実全(U1)、再公表(A1)、実公・実登(Y))」と「登録実用新案明細書(Z)」のチェックを外し、「特許(特開・特表(A)、再公表(A1)、特公・特許(B))」と「特許発明明細書(C)」のチェックを残す

その後、検索キーワードの「検索項目」にある、「全文」、「書誌的事項」、「発明・考案の名称/タイトル」、「要約/抄録」の中から、自分が調べたい項目の「キーワード」欄に、キーワードを入力すればよい。

「検索項目」は、さまざまな項目に絞り込んで検索することができるため、足りない場合には、左下の「追加」をクリックすれば、「検索項目」を増やすことができる。

「検索項目」を選択し、「検索キーワード」に調べたい語句を入力し、クリックすると検索結果が表示される。かなり詳細に調べることができるので、できるだけ複数のキーワードを入力した方が、自分の調べたい発明について絞り込むことができる。

特許の申請方法は?

それでは、実際に特許を申請する際の方法について説明する。

まず、前述のように、自分が思い浮かべたアイデアについて、先に誰かが考案して特許の申請をしていないかどうか確認する必要がある。せっかく、申請をしても、自分と類似性の高いアイデアが先に申請されていたら、特許権の審査は通らず、申請のために作成した書類や申請費用が全て無駄になってしまう。

特許の確認の方法としては、先程ご紹介した無料のデータベース「特許情報プラットフォーム」を使って、詳細に確かめることになる。毎年多くの特許が申請されているので、この確認作業は、特許申請の流れの中でもかなり重要な作業である。

そして、自分が考えたアイデアが、まだ特許申請されていないとわかれば、必要書類の作成を行う。どのような書類が必要になるかは、次の項目でご説明する。

申請後に、特許庁から審査結果が通知される。もし申請が通らなければ、申請書類の修正や補正などを行い、再度審査してもらうことになる。その後、申請が通れば、登録料を納付し、正式に特許権を取得することができる。

特許の出願に必要な書類は?作成方法もわかりやすく解説

特許権を得るために必要な出願書類とその内容は、次のとおりである。

特許願(願書)の作成方法

まず初めに作成しなければならないのは、「特許願」である。自分が考案したアイデアについて、特許権を得るために特許庁長官宛にお願いをするという趣旨の書類である。

この「特許願」には、書類名(特許願)、提出日、発明者の住所・氏名、特許出願人の住所・氏名、電話番号などを記載する。また左上には、1万4,000円の「特許印紙」を貼付する。なお、割り印はせずにそのまま貼付する。

この特許印紙は、通常使用されている収入印紙とは異なるので、注意が必要である。収入印紙は政府が発行する証票で、費用は国庫に入ることになるため政府の税収となる。一方、特許印紙は、費用が特許庁の運営費に当てられる。

これは、特許庁が経済産業省の外郭団体であり、独立採算制を取っているためである。特許印紙は、郵便局、発明推進協会、特許庁で購入することができる。

特許請求の範囲(請求項)の作成方法

次に、「特許請求の範囲」を作成する必要がある。これは、自分の考えたアイデアの概略を簡潔にわかりやすく書いたものである。全て文字で表現しなければならないため、読む人にとっては特許の請求項の意味がわかりにくい。そのため、「図面(詳細は後述)」に番号などを記載して、その番号とリンクさせながら説明することも可能である。

簡潔に表現することに主眼をおく必要があるため、一文が長くなりそうな場合には、複数の項目に分けても構わない。この際には、【請求項1】、【請求項2】…、と記載する。もし、一項目で説明できる場合でも、【請求項1】としておく。

明細書の作成方法

三つ目は、「明細書」の作成である。先ほどの「特許請求の範囲」をより詳細に説明した文書であり、特許権を得るための最も大事な資料である。主な記載内容は、以下のとおりである。

・発明の名称
自分が考えたアイデアの名称

・技術分野
特許を申請する発明の技術的な特徴を端的に記載

・背景技術
特許を申請する発明がどのような技術に基づいたものかを説明したもの

・先行技術文献
特許を申請する発明に関連する発明が記載された公報、刊行物の名称

・発明の概要
発明の内容について、以下のような項目に沿って作成する。

  • 発明が解決しようとする課題:今までの技術の問題点を明記する
  • 課題を解説するための手段:特許請求の範囲に記載した構成の説明と併せて、より好まし
  • いと判断される構成を説明する
  • 発明の効果:従来技術と比べて有利な箇所を説明する
  • 図面の簡単な説明:図面の内容を解説する
  • 発明を実施するための形態:発明を実施するための説明を記載する
  • 符号の説明:図面の主要な部分を表している符号を説明するなどを記載

特許を視覚化する図面の作成方法

四つ目は、「図面」の作成である。これは、特許権を得たい発明品を図で詳しく記載するもので、通常複数の図を作成して説明することになる。図の番号は、【図1】、【図2】…というように、連続した番号を図の上に記載する。また、番号を図に入れる場合には、アラビア文字を使用し、他の線と明確に区別できるように引出線を引く。

さらに、図の中のある箇所の切断面を作成する場合には、一点鎖線で切断面の箇所を示して、両端に番号を付け、矢印で切断面を描くべき方向を示す。切断面には斜線を引き、またそれとは異なる断面図には、異なった方向の斜線を引く。

要約書の作成方法

五つ目は、「要約書」の作成である。この要約書では、発明に関連する課題や、その課題の解決手段について、400字以内で記載する。図面が複数ある場合は、発明のポイントを表すために最も適当な図を選び、「図1」、「図2」といように図の番号を記載する。

特許申請から取得までの流れ

特許の申請から特許権の取得までの流れは、次のとおりである。

1.特許庁へ申請

まず、特許庁へ申請のために必要な書類を提出する。提出方法には、郵送、持参、インターネットでの提出の三つがある。このうち、郵送、持参によって提出した場合には、30日以内に磁気ディスクへの記録の求めがあり、この時に電子化料金を納付しなければならない。

もし納付しなかった場合には、補正命令があり、それに対しても応答しなかった時には、出願が却下される。インターネットで提出した場合、あるいは郵送、持参で提出して電子化料金を納付した場合、出願番号が付与される。

2.特許庁で二段階の審査

その後は、特許庁の方式審査官によって、提出された申請書類に誤りがないか、あるいは手続的、形式的に問題がないかについて審査が行われる。これを「方式審査」と言う。

この審査で不備があった場合には補正指令があり、申請者は指摘された箇所を修正、補正することになる。この補正指令に対して何も応答しない場合には、出願が却下される。審査で特に問題がない場合には、何も通知はない。

なお、申請の日から1年6ヵ月経過すると、特許庁から特許申請の内容が公開される。具体的には、特許庁から発行されている「公開特許公報」に掲載されることになる。この「公開特許公報」は、「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」などから閲覧することができる。

公開されると、出願者には補償金請求権が認められる。つまり、自分が出願した発明を使用した人に対して補償金を請求できるのである。

方式審査を通過した後は、発明の具体的な内容などについて特許庁の審査官が審査を行う。これを「実体審査」と言う。ただ、この審査を行うためには、申請者が「出願審査請求書」を提出する必要がある。

しかも、申請の日から3年以内という期限が設けてあるので、注意が必要だ。もし、期限内に「出願審査請求書」を提出しなかった場合には、申請を取り下げたものとみなされる。

ただ、出願審査請求を行っても全てが審査の対象となるわけではなく、特許庁の裁量で審査を拒絶される場合もある。この際には、申請者に「拒絶理由通知書」が送付される。この通知に応答がなかったり、特許申請者が提出した「意見書」や「手続補正書」の内容が認められなければ、拒絶査定が行われて出願は却下される。

実体審査では、主として「先行技術調査」の結果に基づき、提出された申請書類の「特許請求の範囲」に記載されている発明について、新規性や進歩性があるかどうかを審査する。なお、「先行技術調査」とは、申請された発明と関連する技術が、先に申請された特許公報などに掲載されていないかなどを調査するものである。

3.特許料を納付

その後、審査官により特許を認める「特許査定」が行われる。そして、特許査定の謄本が申請者に送付される。この送付から30日以内に、3年分の特許料を納付すれば、設定登録される。もし期限までに納付しなければ、出願は却下される。

設定登録とは、特許庁に備え付けられた特許原簿に設定の登録がなされることで、特許権を得たことを意味する。また、この設定登録から2週間程度で、特許庁から申請者に特許証が送られてくる。そして、特許掲載公報に特許権を取得した発明の内容等が掲載される。なお、特許権は、出願日から20年で消滅することになる。

特許を個人で取る?弁理士に頼む?

特許を取るための申請に必要な書類や、特許申請の流れを見て、かなり煩雑だと感じた人が多いと思う。特に、明細書や図面の作成については、専門的知識や高いスキルが必要である。

そこで、特許取得の専門家である「弁理士」への依頼を考える人も少なくないはずだ。特許申請を行うときに、個人で行う場合と弁理士を利用する場合では、それぞれにメリットデメリットがある。

まず個人で申請するメリットであるが、何と言っても費用が安く済むという点である。特許申請に最低限必要な手数料は3万円程度だが、それ以外は基本的に不要である。

しかし、特許申請の素人が手続きを行うわけであるので、申請書類に不備があったり作成や手続きに時間がかかったりするというデメリットもある。その結果、せっかく思い浮かんだアイデアの特許取得を逃すという事態になりかねないのである。

弁理士に依頼するメリットは、特許取得の専門家であるため申請に必要な適切な書類を作成してくれる点である。また、申請前の調査や面倒な手続きも代行してやってくれるので、特許申請の煩わしさから解放される点はかなりのメリットだと言える。

特に、申請前の調査によって、自分が発案したアイデアが既に申請されていることがわかれば、無駄な時間や費用を費やすこともなくなる。ただデメリットとしては、弁理士への報酬を負担しなければならないことである。

他の士業(弁護士、司法書士、行政書士など)と違って弁理士は絶対数が少なく、扱っている分野はかなり専門的であるので、他の士業の報酬に比べて割高になる。

特許権を取るためには、専門的な知識が必要となり、手続きもかなり煩雑である。ただ、自分が考案したアイデアを特許として権利化することのメリットは大きい。個人での特許取得を目指すか、費用を掛けてでも弁理士に依頼するか、それぞれのメリット、デメリットを見極めた上で、決めることをお勧めする。

文・井上通夫(行政書士・行政書士井上法務事務所代表)