損保代理店ながら中小企業の「よろず相談屋」として企業経営者に寄り添い事業の発展をサポート 「知恵の束」の活用を模索 ネクストコンサルティング(神奈川県)

目次

  1. 損保業界に入り厳しさとやりがいを実感 中小代理店の組織化など事業拡大を進める中、制度変更に対応した経営方針の違いで退社
  2. 「よろず相談屋」として初心に帰って本格活動 年商1億円越えの急成長 自分の経験と知恵そしてこれから大きく広がる可能性を、一緒に働く若者と共にチャレンジしたい
  3. 複合機とクラウド環境のストレージ管理システムで多様なデータを一元管理 外出先でも自宅でも必要データをすぐに確認可能に
  4. 「知っておきたい手書きの知恵の束」をデジタル化して再利用の幅を拡大 “財産価値”を向上して自分と業界の歴史をまとめる書籍にも活用 リクルート活動にも効果を期待
  5. 父の病を契機に大分県でみかん栽培事業に参入 毎月農作業で汗をかいて頭をリフレッシュ 保険事業にも予想外の好影響
  6. 除草剤を使わずに生産 土壌環境を守りSDGsを実践し、保存料未使用のジュースやジャムは副知事も太鼓判のふるさと納税人気返礼品に
中小企業応援サイト 編集部
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株式会社ネクストコンサルティングは、山本武正代表取締役が長年の損害保険業界の経験を生かして中小企業の事業成長と家族の幸せのサポートを目的に設立。企業経営者の様々な課題に二人三脚で取り組んできた。社内では、クラウドストレージの徹底活用による業務改善やホームページ刷新よる採用活動を強化し、10年間書き溜めてきた自筆メモ(保険・税金・経営・相続に関する「知っておきたい様々な知恵」)のデジタル保管・再利用に向けたシステム構築も検討するなどデジタル化を推進。一方で農業法人を設立し地域活性化にも取り組むなど、小規模損保代理店の枠に収まり切らない事業展開が持ち味だ。(TOP写真:損保代理店を営む一方、地域活性化事業の一環としてみかん栽培に取り組む)

損保業界に入り厳しさとやりがいを実感 中小代理店の組織化など事業拡大を進める中、制度変更に対応した経営方針の違いで退社

損保代理店ながら中小企業の「よろず相談屋」として企業経営者に寄り添い事業の発展をサポート 「知恵の束」の活用を模索 ネクストコンサルティング(神奈川県)
ネクストコンサルティングのオフィスがあるランドマークタワー(左から2番目のタワー)

大学卒業後、予備校経営やミュージカルを運営する会社に勤めた山本氏が「バリバリのビジネスマンにあこがれて」米国系保険会社に転職したのは、バブル経済崩壊後の本格的な不況が到来した1993年。保険自由化に向けた保険業法改正論議が始まり、翌1994年には日本損害保険協会が自動車保険の修理費統制で公正取引委員会から「独禁法違反の疑いあり」と警告を受けて業務運営の抜本見直しを行うなど、業界が揺れ動いた時期だった。

しかし、当時の厳しい新入社員研修を受けてやりがいを感じた山本氏は水を得た魚のように働き、すぐに同期トップの営業成績をあげた。1998年に独立して個人で損保代理店を創業。2004年には小規模代理店の組織化を目的に会社を設立するなど事業を拡大した。経営手腕に注目した大手損保会社の後押しで、後継者のいない個人代理店の受け皿となる中核代理店を仲間と設立して社長に就任。県内最大手の損保代理店に成長させた。

しかし、2014年に金融庁が、曖昧な雇用関係を是正するため、保険業界で一般化していた第三者委託(保険会社の子会社に当たる代理店が第三者に代理店業務を再委託する営業行為)の禁止を通達。同社の事業スキームが制限を受けることになったため、山本社長は事業の見直しを提案したが、全社員に反対され退任を余儀なくされた。

「よろず相談屋」として初心に帰って本格活動 年商1億円越えの急成長 自分の経験と知恵そしてこれから大きく広がる可能性を、一緒に働く若者と共にチャレンジしたい

損保代理店ながら中小企業の「よろず相談屋」として企業経営者に寄り添い事業の発展をサポート 「知恵の束」の活用を模索 ネクストコンサルティング(神奈川県)
明るさとフットワークの軽さで信頼を獲得。新たな起業を軌道に乗せた

30年かけて築き上げてきた実績を手放して、2014年に設立したのがネクストコンサルティングだ。「50歳を過ぎてゼロからのスタートだったが、メラメラとやる気が出てきた」と振り返るように、経営規模拡大とともに薄らいでいた中小企業経営者やその家族に寄り添う気持ちに立ち返って奮闘。「よろず相談屋」として中小企業の経営課題をサポートしながら信頼を積み上げてきた。収入保険料は当初の3000万円程度から小規模代理店の第一のハードルといわれる1億円を優に超える規模に成長した。

ただ、現在は山本社長のほか従業員は佐藤直美コンサルティング部部長だけ。個人代理店と変わらない陣容で数百社の顧客を抱えており繁忙を極めている。さらなる飛躍のためにはスタッフの増員が欠かせない。

「若者と一緒に仕事をするのが好きだ」という山本社長はこれまでも多くの若手スタッフを育成してきた。損保の実務には金銭が直結するため厳密な事務処理のルールを習得するために幅広い知識を覚え豊富な実務経験も不可欠になる。山本社長のきめ細かなコンサルティングの豊富な経験と知恵をベースに若手スタッフをサポートしてきた。ビジネス環境も大きく変わりつつある中、山本社長は「若者の主体性を生かしつつキャリアップを支援していきたい」と考えている。

山本社長の趣味は空手。「道場で子どもや孫のような年齢差の若者とスパークリングすると、こちらが1発打つうちに向こうは3、4発打ってきてさらに蹴りも飛んでくる。集中していないとKOされてしまう」。若者と対峙するときの緊張感とエネルギーを交換する楽しさが若者をビジネスパートナーとして育成してきた山本社長の原点といえそうだ。

いま取り組んでいるのは、人材採用に重点を置いたホームページのリニューアルプロジェクトだ。AI機能搭載のホームページ作成ツールを購入し、アバターを登場させる内容に刷新する予定だ。開発作業はシステム支援会社に依頼しており近いうちに納品される見通しで、保険代理店の仕事を身近に感じてもらえる内容にしようとしている。

複合機とクラウド環境のストレージ管理システムで多様なデータを一元管理 外出先でも自宅でも必要データをすぐに確認可能に

損保代理店ながら中小企業の「よろず相談屋」として企業経営者に寄り添い事業の発展をサポート 「知恵の束」の活用を模索 ネクストコンサルティング(神奈川県)
複合機とクラウド環境のストレージ管理システムによって業務データや紙の情報を一元管理。「自宅でもデータをすぐに確認できるようになった」と話す佐藤直美部長

同社のホームページは一風変わっている。「業務内容」には、「損保」「生保」「DX」などの項目が並ぶが、どこを開いても、山本社長の手書きメモのスキャン画像が表示されている。いつも持ち歩いているA4判用紙を四つに切ったメモ用紙に書き込まれた内容は、顧客先での話や出来事、仕事のヒントや感銘を受けた話など多種多様。保険・税金・経営・相続に関する様々な知恵であり、一つひとつ見ても思わずどんどん読みたくなる「知っておきたい知恵」が並んでいる。もちろん時代と共に変わった情報もあるとは思うが、同社設立以来10年間で1,000枚を超えるメモ用紙の束は「知恵の束」同社の財産だ。リニューアル版ホームページでも継承する考えだ。

メモやFAXなどの膨大な情報や顧客管理システムなどの業務データを、安全かつ効率的に一元管理して再利用しやすい環境を実現するために、クラウドによるストレージ活用システムを構築した。

従来、業務データはパソコンで共有ファイルを作成して必要に応じて利用していたが、オフィスでしか使えず、使い勝手はよくなかった。大容量クラウドストレージとFAXデータをデジタル保管できる複合機を連携させることで、紙文書や業務データの一元管理が可能になり、自宅や外出先でも必要なデータをクラウドからすぐに取り出すことができるようになった。

「ドラマチックな数字上の効果を表すことはできないが、業務負荷はかなり軽減できているはず」(山本社長)という。事務処理全般を担う佐藤部長は「事務所のパソコンを閉じていても、自宅で必要な業務データをすぐに確認できるのは非常に助かる。ストレージに読み込ませておけば大量の資料を持ち歩く必要もなくなった」と効率向上を実感しているようだ。

「知っておきたい手書きの知恵の束」をデジタル化して再利用の幅を拡大 “財産価値”を向上して自分と業界の歴史をまとめる書籍にも活用 リクルート活動にも効果を期待

損保代理店ながら中小企業の「よろず相談屋」として企業経営者に寄り添い事業の発展をサポート 「知恵の束」の活用を模索 ネクストコンサルティング(神奈川県)
メモの束をデジタル化して書籍出版にも活用したい考えだ

山本社長のメモの束もスキャンしたままの保管では検索用キーワードの設定など管理に手間がかかり、再利用や加工しにくいのが難点だった。近く、システム開発会社とメモのデジタルデータ化について検討を始める予定だ。分野ごとに分類されていたメモ情報をデジタルデータ化してクラウド上に保管しておくことで、必要に応じて柔軟な利用が可能になり、“財産価値”が向上することになる。

山本社長は、書き溜めたメモ情報を活用した書籍の出版も企画している。「自分がたどってきた40代から50代の中年の危機をテーマに書きたい」と構想を温めてきた。責任も重くなり数々の失敗もしながら再び起業した自分と保険業界の歴史を「ノンフィクションでは生々しすぎる」ため、小説風にまとめるという。デジタル化したメモの再利用という集大成の仕事でもあり、読者の中で共感して一緒に働きたいという人材が現れてほしいというリクルート効果も狙った一石二鳥のプロジェクトといえる。

父の病を契機に大分県でみかん栽培事業に参入 毎月農作業で汗をかいて頭をリフレッシュ 保険事業にも予想外の好影響

損保代理店ながら中小企業の「よろず相談屋」として企業経営者に寄り添い事業の発展をサポート 「知恵の束」の活用を模索 ネクストコンサルティング(神奈川県)
郷里の大分県津久見市に設立した元気ファーム津久見のミカン畑。本業にも好影響が出ている

同社設立の前年に父親が病で倒れたため、山本社長は郷里の大分県津久見市に一時帰った。そこで「親孝行にもなるかな」と考えて、みかん栽培を目的とした株式会社元気ファーム津久見を設立した。横浜市から津久見市に移住した若者に運営を任せているが、いまも毎月津久見市に滞在し、農作業に汗を流している。

「野良仕事をしたときはぐっすり眠れて頭がリフレッシュできる。本業がおろそかにならないよう気をつけていたが、元気ファーム津久見のおかげで逆に保険業務の生産性が向上した」と予想外の“相乗効果”に満足そうだ。

除草剤を使わずに生産 土壌環境を守りSDGsを実践し、保存料未使用のジュースやジャムは副知事も太鼓判のふるさと納税人気返礼品に

損保代理店ながら中小企業の「よろず相談屋」として企業経営者に寄り添い事業の発展をサポート 「知恵の束」の活用を模索 ネクストコンサルティング(神奈川県)
太田豊彦大分県副知事(当時・右)が「このジュースは甘味料を一切使用せず、みかんの素材だけを生かしてとても美味しい」と太鼓判を押した

元気ファーム津久見では除草剤を使わずにみかんを生産している。手作業で行う雑草の刈り取りに骨が折れる上、近隣の生産地に比べてカラスに食い荒らされることも多いという。山本社長は「近隣の農家には異端視されているけど、カラスも美味いみかんを知っている」と笑う。

SDGsの「持続可能な開発目標」に沿って土壌環境を守り、地域の雇用促進や環境へのインパクト軽減を実践している自負もある。開発したジュースやジャムは保存料不使用で評判が良く、ふるさと納税の返礼品にもなっている。商品化当時、津久見市長や大分県副知事にも「これは美味しい」と気に入ってもらったという。

山本社長は津久見市の元気ファームが軌道に乗れば、第二弾、第三弾の地域活性化事業にも乗り出したいと意気込む。書籍は元気ファームに創設する出版部から発行する予定だ。デジタル武装で飛躍を目指す損保代理業と地域活性化を見据えた元気ファーム津久見、両社をつなぐ執筆業と、“三足のわらじ”を軽快さで履きこなす。

企業概要

会社名株式会社ネクストコンサルティング
住所神奈川県横浜市西区みなとみらい2-2-1ランドマークプラザ5階
HPhttps://www.nconsul.com/
電話045-285-3626
設立2014年3月
従業員数1人
事業内容損害保険代理業、生命保険の募集に関する事業