目次
- 楽しく生きることができる施設づくりを目指す思いを法人名に込めている
- 六つの福祉施設が連携することで高齢者への総合的なケアを実現
- 地域との交流を促進するイベント、「Tsunaguマルシェ」を企画
- 2019年に訪問介護専用のクラウド型記録システムを導入 1時間程度かかっていた記録のための時間を10分以内に圧縮
- クラウド型の記録システムは、介護保険請求事務の支援システムと連動しているので、入力作業そのものの必要がなくなった
- テラビーチリゾート屋島の利用者が家族や知人と気軽にコミュニケーションを楽しめるようにオンライン面会を実施
- リゾートホテルのホームページを参考に2023年10月にホームページをリニューアル 施設の空き状況も常時更新
- 情報セキュリティ機能を備えたUTM機器で法人全体のシステムを守る
- 年に1回、研修旅行を行うなど福利厚生を充実 地元のプロバスケットボールチームのスポンサーも務める
- 介護DXについての情報を積極的に集め、更なるデジタル技術の活用を図る
香川県高松市の北東に位置する屋根の形をした標高約300メートルの溶岩台地、屋島。源平合戦の古戦場としても知られる高松市を代表する観光地の一つだ。社会福祉法人楽生会が運営するケアハウス屋島をはじめとする高齢者のための福祉施設は、屋島の西側に広がる住宅街の中で、瀬戸内海を間近に望む絶好のロケーションに立地している。楽生会は利用者に快適で安心・安全な生活環境を提供するために介護記録をはじめとする様々な分野で複数のICT、デジタル機器を効果的に活用している。(TOP写真:ケアハウス屋島は、瀬戸内海が一望できるロケーション)
楽しく生きることができる施設づくりを目指す思いを法人名に込めている
「美しい景色はリラックス感を高め、心に癒やしを与えてくれます。緑美しい屋島と青い瀬戸内海を同時に眺めることができる環境で、利用者様に心地よい毎日を過ごしていただき、最高の第二の家と思っていただけるように日々全力で業務に取り組んでいます」。ケアハウス屋島の施設長を務める社会福祉法人楽生会の木村太郎理事は、このように施設を運営する思いを語った。「利用者様は香川県出身が多いが、ロケーションの素晴らしさを知って県外から移住してくる人もいらっしゃいます」と話す。施設の周辺には遊歩道が設けられ、瀬戸内海の景色を楽しみながら散歩する人で日々にぎわっている。
社会福祉法人楽生会は、木村施設長の父親、敏夫氏が1999年に設立した。当時、敏夫氏は会社員だったが、2000年の介護保険制度の創設に合わせて、地域の高齢者福祉の充実に貢献したいと考え、先祖伝来の土地を活用して福祉施設の運営に乗り出したという。「利用者様と職員が、共に楽しく毎日を生きることができる施設づくりを目指したいとの思いを法人名に反映させています」と木村理事は話した。
六つの福祉施設が連携することで高齢者への総合的なケアを実現
楽生会は、2000年にケアハウス屋島(自立支援型)を設立した後、利用者が年齢を重ねても同じ環境で生活し続けられるように様々な機能を備えた施設を拡大していった。翌年に屋島デイサービスセンター、2007年に小規模多機能施設富士、2015年にサービス付き高齢者向け住宅テラビーチリゾート屋島を開設した。テラビーチリゾート屋島は中度・重度介護の高齢者を対象にしており、訪問介護ステーション、居宅介護支援事業所を併設している。それぞれの施設が連携することで高齢者への総合的なケアを実現している。
それぞれの福祉施設は、ホテルを思わせるような外観と内装で設計。定期的にリニューアルする近代的な設備とともに充実した食事、サービスの提供を重視している。5階建てで60室を擁するケアハウス屋島は5階に食堂と展望浴室(大浴、小浴)地域交流スペースを設け、瀬戸内海を眺めながら落ち着いた雰囲気でコミュニケーションを楽しめる環境を整えている。
地域との交流を促進するイベント、「Tsunaguマルシェ」を企画
楽生会は地域貢献を重視した様々な取り組みを行っている。2024年10月には、楽生会について地域の住民に詳しく知ってもらうと同時に利用者との交流を楽しんでもらうためのイベント、「Tsunaguマルシェ」を開催し、施設見学や災害時避難経路、備蓄品の紹介等を行った。また、施設の敷地内で来場者にカレーライスを無料で提供。地元のキッチンカーやケーキ店などが出店し、大いににぎわった。
また、ケアハウス屋島は津波避難ビルに指定されている。同年11月には県民一斉型の地震防災行動訓練(シェイクアウト)にも参加し、訓練の様子は地元テレビ局のニュースで報道された。利用者を対象にした文化祭やクリスマスパーティーといった季節ごとの行事の企画にも力を入れている。
2019年に訪問介護専用のクラウド型記録システムを導入 1時間程度かかっていた記録のための時間を10分以内に圧縮
今後、人口が減少していく中で、働き手の確保はあらゆる業界で共通の課題だ。楽生会は課題への対応として、働き手の負担軽減と利用者へのサービス向上を両立するためにICTとデジタル機器の活用に力を入れている。2019年に訪問介護専用のクラウド型記録システムを導入。訪問介護の職員が、タブレット端末を使って体温、脈拍、血圧、呼吸といったバイタル情報や実施したサービスの内容、利用者の様子といった記録を短時間で済ませることができるようにした。
訪問介護の職員は1日あたり10人程度の介護を行っている。以前は紙の記録用紙に手書きで記入していたため、記録のための業務に毎日1時間程度かかっていた。システムを導入してからは、端末のパネル上で、事前に設定されている項目にタッチするだけで記録できるようになったので10分以内で完了できるようになったという。
クラウド型の記録システムは、介護保険請求事務の支援システムと連動しているので、入力作業そのものの必要がなくなった
クラウド型記録システムは、介護保険請求事務の支援システムと連動しているので、国民健康保険団体連合会に送る請求書を作成する際に必要な利用実績などの入力作業も楽になった。以前は手作業で入力していたため、毎日、1時間程度かかっていたが、現在はタブレット端末に入力した情報が、ネットワークを介してリアルタイムで支援システムに送られるので、入力作業そのものの必要がなくなったという。
「記録を紙からデジタルに転換したことで手間がかからなくなったので、残業時間が大幅に減り、働き方改革につながっています。当初はベテランを中心に業務がデジタル化することを不安視する職員もいましたが、実際に使って便利なことがわかると逆に『以前のやり方にはもう戻れない』といった声が聞かれるようになった。クラウドは記録を保存するための物理的な場所も取りませんし、万が一災害に見舞われた時のバックアップもしっかりしているので非常に助かります」と木村理事。時間的余裕が生まれたことで利用者とのコミュニケーションがより一層充実するなど、様々な効果が生まれているという。
テラビーチリゾート屋島の利用者が家族や知人と気軽にコミュニケーションを楽しめるようにオンライン面会を実施
利用者向けのサービスでもデジタル技術を活用中だ。コロナ禍に見舞われた2020年12月に、感染防止のために面会が制限され、家族や知人と会えずに寂しい思いをしているテラビーチリゾート屋島の利用者のために、Web会議システムと専用のパソコンを導入。利用者が家族や知人の顔を見ながらコミュニケーションを取ることができるオンライン面会を開始した。コロナ禍が収束した現在もオンライン面会は、家族や知人とのコミュニケーションを活発にするサービスとして喜ばれている。
オンライン面会を実施する際は、利用者の家族に予約を取ってもらった上で、職員がその時間に合わせてパソコンをセッティングする。「コミュニケーションの機会が減少すると、認知症のリスクが高まります。コロナ禍において心の健康を維持する上でも、オンライン面会は非常に効果がありました。今でも、利用者様にいつでも家族や知人の顔を見ることができるという安心感の提供に貢献してくれています」と木村理事は話した。
リゾートホテルのホームページを参考に2023年10月にホームページをリニューアル 施設の空き状況も常時更新
楽生会はデジタル技術を使った情報発信にも力を入れている。2023年10月にホームページをリニューアルした。リゾートホテルのホームページを参考にデザインし、ロケーションの素晴らしさや各施設の外観や内装をアピールしている。ブログの運営にも積極的に取り組み、ハロウィーンや文化祭といった施設で実施したイベントの情報などを継続的に発信。施設の空き状況も常時更新している。ホームページのアドレスは「rakusei」ではなく、幸運を意味する英語「luck」に掛けて「lucksay」にしている。
情報セキュリティ機能を備えたUTM機器で法人全体のシステムを守る
2020年には様々な情報セキュリティ機能を備えたUTM(統合脅威管理)機器を導入した。UTM機器は、アンチウイルスをはじめ、第三者からの不正侵入を防ぐファイアウォール、不正侵入を検知して除去するIDS/IPS、危険性があるサイトへのアクセスを遮断するWebフィルタリングなどの機能を備えている。「以前はパソコン1台ごとにウイルス対応ソフトを入れていたのですが、利用者様の個人情報をより強固に守るには個別のパソコンだけでなく、法人全体のシステムを守らなければならないと認識を改め、セキュリティ対策を強化しました」と木村理事は振り返った。しっかりとしたセキュリティ対策を取ることで、安心して毎日の業務に専念できる効果が生まれている。
年に1回、研修旅行を行うなど福利厚生を充実 地元のプロバスケットボールチームのスポンサーも務める
楽生会は職員の定着率を高めるため、年に1回、ローテーションを組んで研修旅行を行うなど福利厚生を充実させている。「宿泊先で経験したサービスやホスピタリティを施設のサービスに反映してほしいとの思いで実施しています」と木村理事。為替相場が円安になる前は毎年海外を行き先に選んでいたという。また、地域貢献の一環として2024年から地元のプロバスケットボールチーム、香川ファイブアローズのゴールドパートナーを務めている。職員同士で応援に行って盛り上がることで職場の一体感を高めることにつながっている。
介護DXについての情報を積極的に集め、更なるデジタル技術の活用を図る
「職員の負担軽減と同時に利用者様へのサービス向上を実現できるICTとデジタル機器の必要性はこれからより一層高まるはず。介護DXについての情報を積極的に集めるようにしています」と木村理事は話す。利用者の安全を確保する見守りシステム、介護ロボット、情報共有を行えるグループウェアにも関心を持っているという。
整った設備と利用者一人ひとりを大切にしたサービスを大事にしている楽生会。利用者と職員に安心と心地よさを提供し、地域との交流を活発にする上で、デジタル技術はこれからも大きな役割を果たしていくに違いない。
企業概要
法人名 | 社会福祉法人楽生会 |
---|---|
本社 | 香川県高松市屋島西町2277-1 |
HP | https://www.lucksay.com |
電話 | 087-841-2220 |
設立 | 1999年9月 |
従業員数 | 50人 |
事業内容 | ケアハウス、デイサービス、小規模多機能型居宅介護、サービス付き高齢者向け住宅、訪問介護、居宅介護支援 |