トラック運送事業で100億円企業目指し本社を移転 請求書の受領・管理・保存のクラウドシステム推進、成長への原動力に! 小野寺商事(埼玉県)

目次

  1. 創業時に営業に奔走、「愛嬌に負けたよ」と取引先から仕事を受注 以来、「人間、愛嬌だべっ!! 」が社是に
  2. トラックとドライバーの拠点となる営業所を先行投資し、営業力で仕事を獲得。関東圏中心に8県16ヶ所に営業所を展開
  3. 自社トラックは定期便運送に使い、スポット配送は協力事業者に回すことで運行管理を効率化
  4. 2017年に倉庫レンタル事業にも参入、関東5県に13ヶ所展開
  5. 茨城県境町からさいたま市の新築ビルに移転。一段と営業力強化へ
  6. 運行管理システムによる安全運転採点結果を毎月の手当に反映。安全運転意識向上へ
  7. 経理・会計業務のクラウドシステム化とペーパーレス化を進める 仕組みをシンプルに見える化することで、あっさり黒字化を実現
  8. 帳票類作成システムの導入と請求書の作成と照合・受領業務のシステム化 協力事業者の負担軽減と自社業務の大幅なスピード化と正確さを実現
中小企業応援サイト 編集部
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関東圏を中心にトラック運送事業を展開する株式会社小野寺商事は2024年7月、本社を茨城県境町から埼玉県さいたま市に移転した。創業20周年を迎えたことを機に、営業力を一段と強化し、さらなる発展を目指すためだ。目標は売上高が現在の2.5倍となる100億円企業。売上を伸ばす一方で業務改善とスピードアップにも力を入れており、最近は請求書の受領・管理・保存業務をデジタル化した。(TOP写真: マルチディスプレイのパソコンで常に状況を把握する小野寺良司代表取締役 上記の表示ディスプレイはダミーです)

創業時に営業に奔走、「愛嬌に負けたよ」と取引先から仕事を受注 以来、「人間、愛嬌だべっ!! 」が社是に

トラック運送事業で100億円企業目指し本社を移転 請求書の受領・管理・保存のクラウドシステム推進、成長への原動力に! 小野寺商事(埼玉県)
創業当時を振り返る小野寺社長

小野寺商事は、現在代表取締役を務める小野寺良司氏が32歳だった2004年7月に境町で創業した。その5年前の27歳の時に自前のトラックを持つドライバーの個人事業主として独立。「『自分もドライバーをやりたい』と言って知り合いが2人、3人と集まってきたので会社組織にした」(小野寺社長)のが始まりだ。

創業時にトラックリース会社の営業担当者に勧められるまま、いきなりトラック5台を新規導入してしまったという逸話がある。小野寺社長は自分の調子の良さを嘆きつつ、その5台分のドライバーと仕事を探すために奔走した。「来る日も来る日も工場・倉庫・運送会社に飛び込み営業しました」(小野寺社長)。ある日、足しげく通った工場の責任者が「君の愛嬌(あいきょう)に負けたよ」とスポットの仕事を回してくれ、やがて定期便の仕事も契約してくれた。その日から、「人間、愛嬌だべっ!!」が小野寺社長の信条になり、小野寺商事の社是になった。

何事も「ノリですから」が口癖の小野寺社長は、「自分にプレッシャーを与えないと動かないタイプですから」と自己分析してみせるが、実は緻密(ちみつ)な計算をしているように思える。トラック5台を一挙に導入したのは、慢性的な人手不足の中、せっかくドライバーを新規採用しても、その時点でトラックがなければ他社に逃げられてしまうからだ。トラックとドライバー、それにその両方の拠点である営業所に先行投資して、仕事は営業力で取ってくるのが創業以来の小野寺商事のスタイルなのだ。

トラックとドライバーの拠点となる営業所を先行投資し、営業力で仕事を獲得。関東圏中心に8県16ヶ所に営業所を展開

現在、営業所は茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、神奈川県の関東6県に福島県と愛知県を加えた8県16ヶ所ある。関東からはずれて愛知県にも営業所を設置した狙いを小野寺社長に聞くと、「ノリですよ。あの辺(春日井市)は物流の拠点なので、(営業所を)出しておけば何かあるだろうという読みですね」との答え。

2018、2019年頃に一気に営業所とトラックを増設し、関西にも営業所を置いた。「それがうまくいって、売上が急激に伸びました」(小野寺社長)。2020年に新型コロナウイルス感染症が発生し、物流が停滞すると見るや、関西の営業所はすぐに閉鎖した。その後、同感染症の法律上の位置づけが2類から5類に移行したのを機に、佐野市や横浜市に相次ぎ営業所を新設するなど、先行投資で成長をけん引してきただけに機を見るに敏である。

自社トラックは定期便運送に使い、スポット配送は協力事業者に回すことで運行管理を効率化

各営業所は冷凍車やトレーラーも含めて4~25台のトラックを保有しており、小野寺商事全体では保有台数が二百数十台にのぼる。これらのトラックの99%は定期便運送に使用している。同社のホームページで盛んに注文を募っているスポット配送は営業担当者にとっての新規契約の糸口になる。定期便運送とスポット配送の売上構成比はおよそ7対3だが、同社のトラックは定期便だけなので、配車計画は遅くとも2週間前には決定しているなど、運行管理の手間もコストも低く抑えられる仕組みだ。長距離輸送もないので、ドライバーの時間外労働規制強化に伴う「2024年問題」の影響もほぼなかったという。売り上げの3分の1を占めるスポット配送は協力事業者に回している。

2017年に倉庫レンタル事業にも参入、関東5県に13ヶ所展開

トラック運送事業の付帯事業として、2017年からは倉庫をレンタルする倉庫サービス事業にも乗り出している。トラックで荷物を運ぶだけでなく、荷物を預かるニーズにも応えようというわけだ。2023年5月に使用開始した最新の伊勢崎倉庫(群馬県伊勢崎市)を含めて関東5県に13ヶ所展開している。

トラック運送事業で100億円企業目指し本社を移転 請求書の受領・管理・保存のクラウドシステム推進、成長への原動力に! 小野寺商事(埼玉県)
2023年5月にオープンした伊勢崎倉庫

これら営業所や車庫、倉庫を新設するには広い土地を探す必要があるというわけで、グループ傘下に不動産子会社を抱えるほか、トラックを中心とする中古車販売・修理会社と人材派遣会社も運営している。

小野寺商事単体の売上高は現在約40億円。当面の目標は「とりあえず小野寺商事だけで売上高100億円。3~4年後には達成したい」(小野寺社長)と明確だ。目標達成のためには「営業力の強化です。とにかく会社は営業が命なので、そこを強化しています」(同)と話す。今後も関東圏を中心に営業所を増設していく方針だ。

茨城県境町からさいたま市の新築ビルに移転。一段と営業力強化へ

トラック運送事業で100億円企業目指し本社を移転 請求書の受領・管理・保存のクラウドシステム推進、成長への原動力に! 小野寺商事(埼玉県)
本社が入居するアドグレイス大宮(ホームページより)

さいたま市のJR大宮駅から徒歩6分の新築ビルに移転したのも営業力強化の一環だ。小野寺社長は「田舎だと賃金が安くても暮らせるので、営業スタッフを採用しようとしてものんびりした人が多いけど、大宮のような都会に来ると営業スタッフは頑張らないと生活できませんからね」と話す。ビルの1階ロビーにある各フロアの案内パネルには一流企業の名前がズラリと並ぶ。入居ビルの印象がもたらす信用力アップも期待できそうだ。

トラック運送事業で100億円企業目指し本社を移転 請求書の受領・管理・保存のクラウドシステム推進、成長への原動力に! 小野寺商事(埼玉県)
本社入口では謎めいた笑顔が人気のオブジェクト「ウェルカムゲストレッドビッグデコフィギア」が迎えてくれる

ただし、「営業力強化」といっても、創業間もない頃に小野寺社長が試みたような足で稼ぐやり方は現在の同社の営業スタッフは行っていないという。飛び込み営業については「基本的には1回だけ、名刺交換を目的に行うだけです」(小野寺社長)。あとは「電話で仲良くなり、何か困っていることがあれば相談に乗ってあげることです」(小野寺社長)。

運行管理システムによる安全運転採点結果を毎月の手当に反映。安全運転意識向上へ

早くからデジタルタコメーターと連動した運行管理システムを導入するなど、業務改善にも積極的。ドライバーは乗務前後に義務づけられている運行管理者による点呼とアルコールチェックを、パソコンを通じてIT点呼システムで行う。同社の営業所には「所長」という役職はなく、女性事務員が運行管理者の資格を取得して事務作業の傍ら点呼も行っている。

運行管理システムの安全運転診断機能による採点結果をドライバーの毎月の安全手当と無事故手当に反映させることで安全運転意識の向上をもたらし、自動車損害保険料の低減にもつなげている。また、各営業所は基準の開業3年を経過した時点でGマーク(全日本トラック協会による安全性優良事業所認定)を取得している。

経理・会計業務のクラウドシステム化とペーパーレス化を進める 仕組みをシンプルに見える化することで、あっさり黒字化を実現

バックオフィスのデジタル化に取り組み始めたのは2020年頃のことだ。売上が急激に伸びたことで、経理処理が追いつかず経理担当の責任者が辞めてしまったためだ。「経理のやり方がアナログだったので、パンクしてしまったんですね。全然管理できていない状態だった。それで私が全部整理整頓しました。無駄な仕事をカットして、シンプルな形にしたら、すぐに黒字になりました」(小野寺社長)

小野寺社長は「エクセルだとその人しかわからなくなってしまいますから」と属人化しやすいエクセルによる経理業務の欠点を指摘。経理・会計業務のクラウドサービスを活用したシステム化を進めた。同時に、社内のパソコンをマルチディスプレイにした。「ペーパーレスを徹底できるし、紙の資料を見ながら入力するよりも間違いが少なく、証拠も残ります」と小野寺社長。

帳票類作成システムの導入と請求書の作成と照合・受領業務のシステム化 協力事業者の負担軽減と自社業務の大幅なスピード化と正確さを実現

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「作業がスムーズになった」と話す手塚清美さん

その一環として、2022年9月頃に帳票類作成・管理システムと、電子帳簿保存法に対応した帳票類の電子保存クラウドサービスを導入。主にスポット配送を委託する協力事業者との間で請求書のデータを送受信し、受領した請求書データをクラウドに保存するようにした。現在、約400社ある協力事業者のうち約350社との間で請求書をデータでやり取りしている。

まず、小野寺商事が、スポット配送を委託している協力事業者をはじめとする取引先にメールで同システムの登録用URLを送り、取引先が登録すると取引先のパソコンで請求書作成用のサイトにアクセスできる仕組みだ。その後は、小野寺商事が発注し納品した月々の物・サービスの明細を取引先に送り、その内容に間違いがなければ、取引先がそのデータを請求書に変換して小野寺商事に送り返してくる。取引先がスポット配送を委託した協力事業者の場合には、運行地域や運賃単価などのデータを送ってチェックしてもらうことになる。そうした手続きを経て小野寺商事に返信してくる請求書の数は毎月約200件に上るという。このことによって協力会社の負担軽減とミスを減らすことが可能になった。

「取引先との間で請求書データを照合する作業は、かつては月1回だったので、ボリュームもあって大変でした。さらに、その時点で委託案件等の漏れが発見されても、すぐには変更をかけられず修正するまでにタイムラグが生じてしまっていました。システム導入後は月に2回とか3回とか、必要に応じてお互いに細かく確認し合えるので、作業的にはずいぶんスムーズになりました」

こう語るのは、従来は請求書の照合から振込、保存などの業務を一手に引き受けていたという経理部の手塚清美さんだ。「今は営業担当者にも作業が分散化されましたし、膨大な枚数に上った請求書もペーパーレス化できました」とも。郵便料金が値上げされた中、紙の請求書を郵送していた取引先にとっては、発送の手間と郵送料の節約にもつながっている。手塚さんは「いろんな帳票作成に使えるシステムなので、今後、少しずつなのですが、請求書以外のものにも展開していければと考えています」と締めくくった。

小野寺商事の成長を支えるのは、小野寺社長の類まれな決断力とデジタルを駆使したシステム化、そして常に新規事業への布石を欠かさない先見力。これからも時代の山や谷が訪れるが、小野寺社長の先見力と決断力で乗り切り、成長していくことを期待したい。

トラック運送事業で100億円企業目指し本社を移転 請求書の受領・管理・保存のクラウドシステム推進、成長への原動力に! 小野寺商事(埼玉県)
小野寺商事の境営業所車庫に並ぶトラック

企業概要

会社名株式会社小野寺商事
本社埼玉県さいたま市大宮区桜木町1丁目398番1 アドグレイス大宮9階
HPhttps://onodera-shoji.com/
電話048-782-9758
設立2004年7月
従業員数約300人(グループ会社含む)
事業内容トラック運送、倉庫サービス