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地元の中小企業向けにパソコンや周辺機器の販売・据付や修理、ソフトウェアの開発・販売、ホームページ制作など、有限会社サポートシステムは「パソコンのなんでも屋」としてどんな要望もこなしてきた。設立以来、人員不足がネックになっていたが、子息2人が入社して陣容も増強。新規事業も緒に就き、自社システムの見直しも進めるなど事業拡大へ態勢を整えつつある。一見、パソコン事業と無関係だが、大内克宏代表取締役は「バルーンアートは幸せを求める人が買うのでこちらも仕事が楽しくなる」と相乗効果を認めている。(TOP写真:様々なバルーンアート)
「安くて良いソフトウェアの提供」を目的に2005年に起業 当初は受注に四苦八苦 収益確保のためにパソコンや周辺機器販売に事業拡大
群馬県太田市郊外に本社を置くサポートシステムは、コンピューターメーカーやゼネコンでソフトウェア開発を担当していた大内克宏代表取締役が2005年に設立した。「ソフトを外注したら、ものすごく高くて驚いた。自分でやればもっと安くて良いソフトを提供できると思った」。ちょうど40歳の区切りを機に退職し、自宅の敷地にプレハブの事務所を設置して起業した。
「やや準備不足だったけれど、技術面では自信もあったし何とかなると思って1人でスタートした」が、仕事は来なかった。「以前の仕事の付き合いを頼ったり、いろいろ営業したが厳しかった」と当時の苦労を振り返る。
ようやく受注にこぎつけても受注から開発、納品、サポートまで1人でこなすため収益を得るまで時間がかかるのは当然で、「とても仕事としては成り立たなかった」。そこで、ソフトウェア開発の合間にパソコンや周辺機器の販売にも乗り出し、顧客に求められればどんなことにも対応した。パソコンや周辺機器は顧客企業の状況に合わせて、メーカーへ直接や大手システム開発会社など取引先を広げてビジネスの間口を拡大してきた。
「圧倒的なお客様ファースト」が強み 顧客の要望断らずに引き受けて信頼関係を築く
事業化の目的が「安くて良いソフトウェアの提供」なだけに、受注価格を低く抑えたこともあり、「3年間は収益的に厳しかった」と苦笑する。それでも、サポートシステムの経営理念は「人との出会い、つながりを大切にする企業」であり、その根底には「圧倒的にお客様ファースト」(大内社長)という信念がある。
それは大内社長が創業以来変わりなく大事にしてきたことだ。常に顧客サイドに立った姿勢を変えず、たまにはメーカーに意見を言うことも。そうやって信頼関係を築いていった。「お客さんに『見てくれ』とか『できるか』などと言われれば絶対に断らずに引き受けてきた。それが当社の存在意義だと思っている」。少人数ながら地元の企業から高く評価されている同社の強みは、大内社長の揺るぎない経営理念にあるといえそうだ。
子息2人が入社 長男は後継ぎ目指し事業承継の心配解消 結婚式や開店祝いなどにバルーンアートが人気 新事業への育成目指す
従業員は現在5人で、うち2人は長男と長女だ。長男はカスタマー事業部の晟弘(あきひろ)部長で営業やマーケティングを担当している。大内社長は「後を継ぐと言っているので責任のある仕事を任せつつある」と相好を崩す。50代で早くも事業承継の心配がなくなり一安心だ。長女の梨央さんは事務処理を担当しているが、バルーンフラワー認定士の資格を持っていて、「バルーンアート」と呼ばれる、透明な風船の中に造花を入れた装飾品の制作・販売を行っている。結婚式や開店祝いなどで生花に変わる祝い品として徐々に話題になり、地元のショッピングモールの催しでも人気商品となっているそうだ。
サポートシステムの本業とは全く異なる新規事業だが、大内社長は「このバルーンを求める方は幸せを求めるので売っていてこちらも楽しくなる」と話し、将来のビジネスとして育てたい考えだ。困っている人をサポートすることが多いパソコン関連事業とは異質の楽しさに期待している。
透明な風船を丸く膨らませるのも、中に花をきれいに咲かせるのも難易度の高いスキルが必要だが、生花と違い1~2年は同じ状態を維持できるのが特徴だ。梨央さんは「年間100個くらいのペースで制作できる」スキルがあり、知名度の向上とともに販売量も次第に増加。収益に貢献するのもそう遠くはなさそうだ。
仕事をこなしきれない深刻な人員不足解消へ 単純なサポート作業はリモートに転換し現場の負担軽減し業務効率向上
身内以外の従業員3人のうち1人は、地元の建築業の東京地域での仕事に関連した受注のため東京に常駐している。大内社長は「人員はぜんぜん足りない。パソコンのセットアップも20~30台残っていて『ごめんなさい』と言って待っていただいている」と仕事の依頼に応えきれない状況に危機感を抱いている。
採用には取り組んできたが「顧客からあらゆることを頼まれるので、オールマイティーなスキルを持つ人を採用したいと考えてきたが、技術があってもサービス精神がないとか、逆のケースとか、なかなか良い人が見つからない」と苦笑する。
仕事の依頼を断らなくても済む態勢のためにも「できれば10人規模に増やす」のは喫緊の課題でもある。課題解決のために新たに検討しているのが、「当社は顧客まで足を運んで会いに行くのが原則だが、今後は単純なサポート作業ならリモートでもきるようにしたい」。現場作業の負担軽減によって、作業効率を向上できる上、比較的経験の浅い従業員でも対応できるという判断だ。
業務システムを再構築し分業システムへの移行で生産性向上 20周年に向けて採用のハードル下げ人材採用を増員し経営計画も策定
販売管理システムなど社内の業務システムは大内社長が自前で開発してきたが、「自分以外はメンテンテナンスできなくなってきた」とブラックボックス化を懸念。晟弘部長が「誰でもメンテナンスできるように市販ソフトに変えてほしい」と要望していることを受けて、市販ソフトへの置き換えの検討を開始した。
市販ソフトによる業務システムの再構築により、業務の見える化を実現するとともに、分業化を進めることで生産性を向上。「業務の見える化」「生産性向上」「人材採用」の一石三鳥の業務改革に取り組む計画だ。またバルーンアートで体感した「顧客の幸せ感」が社内の大きなモチベーションになることも実感した。働き方改革や働きがい改革でデジタルの果たす役割は大きい。大内社長の計画の中には、顧客に対して働き方改革を支援するシステムを通してスタッフのモチべーションも大きなテーマにあるようだ。
サポートシステムは2025年に設立20周年を迎える。「日々の仕事に追われてなかなか具体化できなかったが、経営計画も策定したい」と話す大内社長。次の飛躍に向けて準備を着々と進めている。
企業概要
会社名 | 有限会社サポートシステム |
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住所 | 群馬県太田市鶴生田町756-3 |
HP | https://www.support-ss.com/ |
電話 | 0276-57-8128 |
設立 | 2005年 |
従業員数 | 5人 |
事業内容 | ソフトウェア開発、パソコン・周辺機器などの販売、修理・サポート、ホームページ制作など |