「その人を知り望む生活を」を理念に、地域密着型の介護施設を運営 ICT化で職員負担軽減とサービス向上に取り組む 久建産業 グループホーム・アリス(群馬県)

目次

  1. 認知症対応型共同生活介護「グループホーム・アリス」で介護事業を開始 小規模多機能型居宅介護「小規模多機能ホーム・アリス」も併設し、地域密着の介護サービスを提供
  2. 介護ソフトと訪問系サービス向けアプリとの連係で、介護報酬の請求と介護記録の大幅改善に取り組む
  3. 介護施設向けカラオケ機器で利用者の運動を支援、口腔体操で誤嚥防止も
  4. 職員数の関係で利用者調整も デジタル活用の加速で一段の業務改善を進め、職員の負担軽減とサービスの向上へ
中小企業応援サイト 編集部
全国の経営者の方々に向けて、経営のお役立ち情報を発信するメディアサイト。ICT導入事例やコラム、お役立ち資料など「明日から実践できる経営に役立つヒント」をお届けします。新着情報は中小企業応援サイトてお知らせいたします。

久建産業株式会社は、群馬県館林市で利用者の「その人を知り望む生活を提供する」を理念に、高齢者介護事業を手掛けている。認知症対応型共同生活介護「グループホーム・アリス」と併設する小規模多機能型居宅介護「小規模多機能ホーム・アリス」の二つの施設を運営し、利用者が在宅介護からグループホームの入居への移行も可能な地域密着型の介護サービスを提供している。一方、介護報酬の請求や介護記録などの事務業務については介護ソフトと訪問系サービス向けアプリを連携し、効率化を図っている。(TOP写真:「小規模多機能ホーム・アリス」のリビングルームで介護施設向けカラオケ機器を利用して体操する利用者)

認知症対応型共同生活介護「グループホーム・アリス」で介護事業を開始 小規模多機能型居宅介護「小規模多機能ホーム・アリス」も併設し、地域密着の介護サービスを提供

「その人を知り望む生活を」を理念に、地域密着型の介護施設を運営 ICT化で職員負担軽減とサービス向上に取り組む 久建産業 グループホーム・アリス(群馬県)
久建産業が運営する「グループホーム・アリス」

久建産業は館林市で総合建設業を営む小曽根建設株式会社の系列企業で、2006年に「グループホーム・アリス」(以下グループホーム)を開設し、高齢者介護事業に進出した。定員は9人で、入居者は館林市在住で介護認定を利用条件としている。「ようこそ、安らぎの空間へ…」をコンセプトに、入居者の個性と尊厳を大切に住みやすい環境の提供に努めている。

これに加えて、2012年には新たに「小規模多機能ホーム・アリス」(以下小規模多機能ホーム)を、グループホームに隣接する形で設けた。小規模多機能型居宅介護の事業は、言わばショートステイとデイサービス、訪問ヘルパーの機能を備えた介護サービスだ。

小規模多機能ホームは、その介護サービス内容から「介護が必要になっても利用者が住み慣れた自宅や地域で自分らしく長く過ごせるような支援を重視している」と小野田睦施設長は話す。登録定員は29人で、宿泊は1日最大9人。宿泊は基本的に予約制で居室に空きがあれば利用できる。

利用者は自宅で過ごしているように自分のペースで利用でき、デイサービスのようなかっちりとしたタイムスケジュールは設けておらず、午前は入浴と体操、午後はお昼寝とちょっとしたレクリエーションなどざっくりとしたスケジュールがあるだけで、利用者が思い思いに過ごしてもらえる環境を整えている。

両施設が併設していることで小規模多機能ホームの利用者がグループホームに入所するケースも多い。小規模多機能ホームの利用で長く親しんだ職員らとの関係性が保たれたままグループホーム・アリスに入所することができるため、利用者の家族にも安心感を提供している。

職員数は両施設合わせて22人で、ほぼ3分の2はパート職員が占める。両施設それぞれに固定した担当2人を設けている以外は、職員は両施設の介護業務を掛け持ちで担っている。

久建産業が手掛ける介護事業の特徴は、基本的に利用者が困難事例であっても断ることはなく、「登録された方にはサービスを提供し、なるべく在宅生活を継続できるように考えて、頑張っている」(小野田施設長)ことにあり、介護サービスが必要などんな人にも分け隔てなく手を差し伸べる姿勢を貫いている。

介護ソフトと訪問系サービス向けアプリとの連係で、介護報酬の請求と介護記録の大幅改善に取り組む

「その人を知り望む生活を」を理念に、地域密着型の介護施設を運営 ICT化で職員負担軽減とサービス向上に取り組む 久建産業 グループホーム・アリス(群馬県)
タブレット端末に介護記録を入力する職員

介護事業の事務業務にとって介護報酬の請求や利用者の介護記録、ケアプランの作成は必須であると同時に、書類の多さなどから介護業務をこなしながら対応しなければならず、職員の事務負担は大きい。この点、久建産業はグループホーム単独だった時から介護報酬の請求作業は介護ソフトを活用している。介護ソフトは5年ごとに契約を更新しており、その都度バージョンアップされ、現在のバージョンでは「口腔ケアの加算など新しい加算の様式を取るのに役立っている」とその効果を小野田施設長は話す。

一方、介護記録の効率化を狙いに2023年には介護ソフトと連携するタブレット端末で利用できる訪問系サービス向けアプリをIT補助金の活用で導入した。職員ごとの申し送り事項や指示内容などの確認がすぐでき、時系列で利用者の記録を一覧表示できるほか、一括登録もでき、記録時間の削減につながる。また、過去の記録を見ることもできる。

外国人の介護職員もいることから音声入力が可能なほか、介護記録の項目が理解しやすくなるように、画面項目をひらがなで表示することもできる。タブレット端末はグループホームに1台、小規模多機能ホームに2台導入している。導入当時はインターネットの通信環境が悪かったが、2024年4月にネットワークの導入・運用・保守をパッケージしたサービスを導入し、通信環境の改善につなげた。

介護施設向けカラオケ機器で利用者の運動を支援、口腔体操で誤嚥防止も

施設の設備については介護向けカラオケ機器も2024年で導入後10年目に入り、更新期を迎えている。カラオケ機器は単に利用者が歌うばかりでなく、さまざまなコンテンツが用意されている。特に利用者が体を動かすコンテンツとしてはラジオ体操だけでなく、体を動かしにくい利用者の運動を支援する体操などもある。口腔体操は誤嚥の防止に食事の前に実施している。

職員数の関係で利用者調整も デジタル活用の加速で一段の業務改善を進め、職員の負担軽減とサービスの向上へ

「その人を知り望む生活を」を理念に、地域密着型の介護施設を運営 ICT化で職員負担軽減とサービス向上に取り組む 久建産業 グループホーム・アリス(群馬県)
併設する「小規模多機能ホーム・アリス」。現在、職員不足で通所利用者数を調整している

現状の施設運営で深刻な問題は職員が足りない点だ。小野田施設長によると「これまでは職員が辞めることは少なかった。ただ、結婚で退職する事例もあり、現状不足している」と語る。介護施設には人員基準があり、グループホームは入所者3人に対して職員は1人、小規模多機能ホームについては同じく利用者3人に職員1人に加えて訪問職員を置かなければならず、一般的な介護施設に比べてより多くの職員を配置しなければならない。

求人活動を進めているものの、介護業界全体が深刻な人手不足の現状ではなかなか採用につながっていない。特に職員不足が深刻なのは小規模多機能ホームの方で、「通常は在宅の利用者が急な発熱などで体調を崩して泊まりとなると、急きょパート職員に夜勤を担当させることは難しい」(小野田施設長)。

そうした状況で職員全体でのデジタル活用を待ったなしで進め、業務改善による職員の負担軽減とサービスの向上に取り組んでいる。そうすれば採用活動にもプラスになってくるとみている。デジタルでの職員負担軽減の取り組みが急速に進んでいる。

企業概要

施設名久建産業株式会社 「グループホーム・アリス」「小規模多機能ホーム・アリス」
住所群馬県館林市羽附町字本宿699
電話0276-72-8685
設立2006年9月
従業員数22人
事業内容高齢者介護施設の運営