経済産業省が毎年実施している「電子商取引に関する市場調査」の2024年版報告書によると、2023年のBtoC-EC市場(一般消費者向けのEC市場)は24兆8435億円でした。市場規模は前年比2兆986億円増加し、成長率は9.23%となっています。
旅行やチケット予約といった「サービス系」のEC市場が前年比22.27%増と大きく伸びたほか、物販やデジタルコンテンツのEC市場も堅調に推移し、2023年も国内EC市場は拡大基調を維持しました。
本稿では物販系・サービス系・デジタル系の市場規模を解説するとともに、商品カテゴリごとのEC市場規模やスマホEC、BtoB-EC、CtoC-EC、越境ECなど報告書に掲載されているデータを紹介します。EC市場のトレンドを把握し、EC戦略を策定する際の参考にしてください。
目次
物販系EC・サービス系EC・デジタル系ECの内訳と成長率
EC市場規模を分野別に見ると、「物販系分野」は前年比4.83%増の14兆6760億円、旅行やチケット販売など「サービス系分野」は前年比22.27%増の7兆5160億円、オンラインゲームや音楽配信など「デジタル系分野」は前年比2.05%増の2兆6506億円でした。
【BtoC-EC市場 物販・サービス・デジタルの内訳】
・物販系分野・・・14兆6760億円(前年比4.83%増) ・サービス系分野・・・7兆5169億円(前年比22.27%増) ・デジタル系分野・・・2兆6506億円(前年比2.05%増) |
物販系ECの成長率が初の5%割れ
「物販系分野」の市場規模は右肩上がりで伸びており、過去10年で約2.1倍に増えました。小売市場全体に占めるECの割合を意味する「EC化率」は9.38%(前年比0.25ポイント増)で、こちらも10年で約2.1倍に拡大しています。
物販系分野の市場規模は拡大を続けていますが、近年は成長率にやや鈍化傾向も見られます。2023年の成長率は前年比4.8%で、現在のように「物販系」「サービス系」「デジタル系」の市場規模を公表するようになった2014年版の報告書以降では、初めて成長率が5%を下回りました。
すべての商品カテゴリがプラス成長
物販系分野における商品カテゴリごとの市場規模は、すべてのカテゴリがプラス成長でした。カテゴリごとの成長率は前年比1.26〜6.52%と幅があります。「食品・飲料・酒類」「化粧品・医薬品」「生活家電・AV機器・PC・周辺機器等」「生活雑貨・家具・インテリア」の成長率は、物販系全体の成長率を上回りました。
スマホ比率は58.7%に上昇
物販系分野におけるスマートフォン経由の市場規模は、前年比10.0%増の8兆6181億円でした。スマホ比率は58.7%で、前年比2.7ポイント上昇しています。
報告書ではスマホ比率が上昇している背景として、EC事業者がアプリでサービスを提供している事例があることを挙げ、「スマホアプリは利用者にとって利便性が高く、事業者にとっても消費者とより強いリレーションを構築するチャネルとして期待されている」と説明。そして、「ライフスタイルが多様化する中でBtoC事業を拡大するためには、事業者が消費者とより強いリレーションを構築することが重要な要素の一つとされ、存在感を増すスマートフォン経由の動線を確立することが欠かせない」と指摘しています。
引用:経済産業省「令和5年度 電子商取引に関する市場調査 報告書」P43 2024年9月25日公表
なお、パソコン経由のEC市場規模*の成長率は前年比1.7%のマイナスでした。近年の物販系分野はスマホECがけん引しており、ECサイトのスマホ最適化が必須と言えるでしょう。
*物販系分野の市場規模からスマートフォン経由の市場規模を引いた数字
サービス系ECの市場規模は7.5兆円でコロナ禍前を上回る
旅行サイトや飲食店予約サイト、チケット販売、金融サービスといった「サービス系分野」のEC市場規模は、前年比22.27%増の7兆5169億円でした。カテゴリ別では市場規模が大きい順に「旅行サービス」が前年比35.87%増の3兆1953億円、「金融サービス」が前年比12.25%増の8483億円、「飲食サービス」が前年比23.68%増の8165億円、「チケット販売」が前年比19.30%増の6658億円と、いずれも大きく伸びています。
サービス系分野の市場規模は2020年から2021年にかけて、コロナ禍における外出自粛の影響で大幅に落ち込みましたが、2022年以降は再び成長軌道に乗り、2023年はコロナ禍前(2019年)の市場規模を上回りました。旅行やイベントといった「コト消費」が盛り上がるなか、コロナ禍で落ち込んでいたサービス系のECは踊り場を抜けたと言えるでしょう。
デジタル系ECはプラス成長に転換
電子書籍や音楽配信、動画配信、オンラインゲームといった「デジタル系分野」のEC市場規模は前年比2.05%増の2兆6506億円でした。デジタル系分野はコロナ禍における巣ごもり消費の反動もあり、2022年にマイナス成長となりましたが、2023年は再びプラス成長に転じています。
カテゴリ別では最大市場の「オンラインゲーム」が前年比3.60%減の1兆2626億円となり、2年連続のマイナス成長となっています。その要因について報告書では「2022年以降は、外出機会の増加や余暇の選択肢が増えたことから、長時間ゲームをプレーする課金ユーザーの減少やインフレによる可処分所得の減少等が影響し、市場規模縮小につながっていると推察される」と説明しています。
「電子出版(電子書籍・電子雑誌)」は前年比6.87%増の6683億円でした。市場規模は前年に続き過去最高を更新しています。電子コミックが市場をけん引しており、報告書では「電子書籍市場のうち電子コミックのシェアは9割に達した」としています。
「有料音楽配信」や「有料動画配信」は、サブスクリプション型の配信サービスの広がりもあり、市場規模は前年比プラス成長でした。
BtoB-EC・CtoC-EC・越境ECの市場規模
BtoB-ECやCtoC-EC、越境ECなど、報告書に掲載されている各種市場データを紹介します。
BtoB-ECは10.7%成長でEC化率は40%
法人間でのオンライン取引を意味する「BtoB-EC」の2023年の市場規模は、前年比10.7%増の465兆2372億円でした。EC化率は40.0%(前年比2.5ポイント増)です。なお、市場規模にはEDIの受発注も含まれます。EDIとは、Electronic Data Interchange(電子データ交換)の略称で、企業同士がコンピュータをネットワークでつなぎ、発注書や伝票などを電子データで交換することです。
業種別に見ると「卸売」「輸送用機械」「繊維・日用品・化学」「電気・情報関連機器」の順に市場規模が大きく、特に「輸送用機械」はEC化率が80.6%に達しています。
市場規模が121兆円ともっとも大きい「卸売」は成長率が前年比7.4%増と堅調に拡大しました。「卸売」はEC化率が37.5%でBtoB-EC全体のEC化率を下回っていることから、伸び代がある分野と見ることもできるでしょう。
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CtoC-ECは5%増の2.4兆円
フリアマプリやオークションサイトなどCtoC-ECの2023年における市場規模は、前年比5.0%増の2兆4817億円でした。市場拡大の要因について報告書では「主にフリマアプリ市場の成長が貢献している」と説明しています。なお、報告書では注意点として、フリマアプリやオークションサイトの流通額には企業が売り手となっているケースが含まれることに留意が必要であり、この市場規模も企業が売り手となっているケースが含まれた数値であるとしています。
中国・米国向けの越境ECが拡大
日本国内から米国と中国に向けて販売した「越境EC」の市場規模は、米国向けが前年比13.3%増の1兆4798億円、中国向けが前年比7.7%増の2兆4301億円でした。日本から海外への越境ECの市場規模が拡大している背景には、訪日外国人旅行者によるインバウンド消費が盛り上がるなか、海外ユーザーの視線が日本に向いていることなどが影響していると考えられます。
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まとめ
本稿で解説した「令和5年度 電子商取引に関する市場調査 報告書」の各種数字を踏まえると、2023年の国内EC市場では、物販系分野におけるスマホECの比率が58.7%に拡大したことや、サービス系分野の市場規模がコロナ禍前の水準を上回ったこと、BtoB-ECのEC化率が40%に達したことなど、注目すべきトピックスがたくさんありました。
これからのEC市場を勝ち抜くには、こうしたトレンドにしっかり対応し、時代に即した施策を打っていくことが重要でしょう。
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